複雑・ファジー小説

Re: 強欲の右腕 ( No.1 )
日時: 2017/06/14 21:50
名前: うたかた ◆wr23E0BYk6 (ID: memccPfd)

 突然だが、君は転生を信じるだろうか?

 別に怪しい布教活動がしたい訳ではない。ただふと、思っただけだ。まぁ、この考えは宗教的なものだがな。
 転生とは。。。って説明するまでもないよな。昔は異世界転生だとかそんな類いのものが流行っていた時期があったからどんなものか知っているはずだ。
 そんなの知らないって人は、簡単に無双してハーレム作るもんだと思っておいてくれ。
 俺も小さいときは憧れてたな。無双してみたりとか女の子からモテモテになったりとか男なら一度はやってみたいものであろう。

 おっと話が逸れてしまったな。
 結論から言うと、あるみたいだな。転生とやらは。
 しっかし生憎俺には、俺ツエーとかハーレムとかは無理そうだ。
 転生先がブサイクだとかチートスキルを貰い損ねたとかそういう次元の話じゃない。
 じゃあなんだよって話になるが、あれなんだよ転生先が。

 転生先が右腕なんだよ。
 別に、寄生した獣って訳でもない。

 この話が伝わる人がこの世界にいるといいなぁ。

               ■ □ ■ □ ■

 こうなった経緯を簡単に書き出してみる。

 俺の名前は、犀川 幸太。今年で24。軍人だった。
 俺の居た世界には皆が異能【ギフト】を多少の優劣はあるが生まれ持っており、俺が持っていた異能は能力の解析というか使われたの仕組みを読み取ることが出来るものだった。
ただそれだけのことなのだが【能力簒奪】だとか【万物を奪う強欲】だとか中2な奴がいたな。どうでもいいか。
 因みに、異能【ギフト】とは、魂由来のもので人類の新たな進化の形である
、とどこかのご高名な教授が言っていたが、あんまり覚えていない。
 別に詳しい説明も要らんだろ。

 そんな世界で夏季休暇で同期と遊んでいた最中。俺は死んでしまった。
 原因は轢かれかけていた幼女を助けたはいいが、代わりに俺がトラックの下敷きなったからだ。
 人としては格好いい死に様だし後悔はないが、もう少し生きていたかったと思う気持ちは正直なところある。
 まぁ、身体が動いてしまったものは仕方ないよな。
 幼女だったし。

 本来なら俺の人生はここで閉じるはずだった。

 で、気付いたら右腕になっていたのだ。うん、気付いたら、なのだ。
 これ以上の説明も何もない。


 こうして俺の人生(腕生?)が始まったのであった。

 だが、これだけじゃ異世界に転生したと確信出来る根拠は無いし、そもそも自分の姿を見てるんだって話になるよな。
 そこのところをゆっくり説明させて貰いたいのだが、今は少々時間が無い。

 俺は意識を左上の方に集中させ、残り時間を確認する。

 『【■■■■■の右腕】(呪、腐食)
   HP 1/150(低下中、減少中)
        MP 0/0(剥奪中)』

 時間切れみたいだな。

 そう思った瞬間、俺の命を示す値は0になる。
 こうして俺の第2の腕生というものは、何をする訳でもなく、呆気なく閉じたのであった。

_______________
名〈(未決定)〉は死亡しました。
■■■■■の固有スキル〈■■蘇生〉により〈未決定〉は、蘇生します。

■■■■■の固有スキル〈■■■■〉により、今回の死因を考察。



。 。

。 。 。 

結果が出ました。
腐食、呪い、エネルギー不足の三つです。
これにより〈未決定〉はスキル〈腐食耐性(Lv1)〉〈呪耐性(Lv1)〉〈省エネ〉を得ました。

スキル〈■■■■〉により〈(未決定)〉は。。。呪〈■■■■〉により阻害。



。 。 

。 。 。

次の種族になることが出来ます。
【小鬼(ゴブリン)】、【ワーフォックス】、【カラス】、【人間(ヒューマン)】。

どれを選択しますか。
_______________


 突如意識の中にそんなアナウンスが響いた。
 どうやら俺の腕生は終わってはいなかったようだ。

 しかしいきなりの選択ときたか。
 ここでの選択を失敗すると、後々人生(になるのか分からんが)大きく支障を来すことが容易く想像出来る。

 取り敢えず【カラス】はないな。
 前世は人なのにいきなり鳥になるのはリスクがある。
 【人間(ヒューマン)】は・・・、折角の異世界なんだからパス。
 残すは【小鬼(ゴブリン)】、【ワーフォックス】だが・・・、ここは成り上がりの定番、ゴブリンにするか。

_______________

【小鬼(ゴブリン)】でよろしいでしょうか。
〈YES〉〈NO〉

※一度決定しますと、変更は出来ません。
_______________


 俺は、二度目の問いに迷わず〈YES〉を選択する。
 その途端、途轍もない睡魔に襲われ、意識が混濁する。

 あぁ、目覚めたら夢であって欲しい。