複雑・ファジー小説
- Re: 右腕へ転生、背負うは大罪 ( No.2 )
- 日時: 2017/06/14 21:48
- 名前: うたかた ◆wr23E0BYk6 (ID: memccPfd)
意識が覚醒する。
どうやら現実には戻れなかったようだ。
それは、今この俺の姿が物語っている。
明らかに人のものとは思えない緑色の肌。
平べったい顔に無理矢理付けたような曲がった鉤鼻、大きく裂けた口に鋭い牙。
湖畔には、おおよそゴブリンと呼べる姿が映っていた。
一応、自分で決めたことなので驚かなかった、というのは嘘になるが、ある程度は構えられていた。
しかしあれだな。この右腕じゃなぁ。。。
もう一度、湖畔を覗いても映る肩からかけての部位はゴブリンのそれではなく、線の細い少女のものであり、しかもそこには巻き憑くように黒い蛇の紋様が描かれていた。
特段違和感があるわけでもなく、思い通り動かせるのだが、これは目立つ。
何かで隠さないとな。
俺は最優先事項として心にそう書き留める。
が、それよりも先にやるべきことがあるだろうと腹が、ぐぅぅと抗議した。
やっぱ、この空腹を満たすことが最初にすべきことだな。
■ □ ■ □ ■
早くもこの身体になってから七日ほど過ぎた。
こないだし忘れた異世界だと言う説明とこの一週間のdieジェスト、もといダイジェストと行こうと思う。
まず、この世界が異世界だと確信したのは、ゴブリンになっている時点でもう説明しなくてもいいと思うのだが、右腕の時点では分かったのは意識を右上の辺りに集中させると浮かび上がる『ステータス』が理由だった。
勿論、俺のもと居た世界ではこんなもの確認出来なかった。
それに【■■■■■の右腕】の項目に更に意識を集中させると
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【■■■■■の右腕】
■■■■■から切り離された右腕。ランク■。
通常、■■■種は一部が欠損したときその部位は灰となるが、《■■■■》により消失せず、残った。
また、《■■■■》により■■■■■■■■■■■■■■、自我を持っている。
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と、なんとも伏せ字の多い説明をされた。
また、ゴブリンの説明だが
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【ゴブリン】
一番多い鬼種であり最弱の鬼種。ランクF。
見た目は醜悪で、知能はあまり高くないがずる賢い。個の力はそれほど強くないが、群れを成すためその大きさによってランクが変動する。
【詳細を見ることも出来ます▼】
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あとその間の出来事だが、
一日目。
気が付いたの日暮れ寸前だったし、無策では何も取れないと思い、取り敢えず寝床を探すことにした。
良さげな洞穴を見つけたので、途中で採った適当な草を食って死んだ。
二日目。
武器を作ることにした。打製石器を使った槍を作成。
昨日と同じ草をもう一度食べてみた。
今度は死ななかった。恐らくスキルのお陰。
三日目。
作った槍で角の生えた兎【ホーンラビット】を狩る。兎肉ウマウマでした。
味としては、さっぱりした鳥みたいだった。
四日目。
調子に乗って兎を狩りまくっていたところを灰色の熊【グレイベア】に後ろからザクリ。
以後周りに気を張るようにした。
五日目。
特にない。兎を適度に狩って大人しくしてた。
が、茸を食ってしまって死んだ。
六日目。
甲羅を背負った狸【コウラダヌキ】を見つける。
この甲羅が欲しいので住処まで引き摺って行き、どう剥ぐか兎肉を齧りながら悩んでた。
七日目。
狸を水責めにしてみた。
すこし暴れたが、しっかりと仕留められてたし、甲羅も剥げた。
テンションが上がってたら足を滑らし、川へどぼん。
流されたのは少しでよかったが、甲羅は見つからなかった。
と、たった七日間で四回も死んでいるが、無駄死にだった訳じゃない。
しっかりとした意味があった。
この死のおかげで、一日目にスキル〈麻痺耐性(Lv1)〉、〈山菜の見極め〉、四日目に〈物理耐性(Lv1)〉、〈気配察知〉、五日目に〈毒耐性(Lv1)〉、六日目に〈水遊〉、〈死地把握〉を得ることが出来た。
そして死因に直接関係ないことでもスキルを得られることが分かった。
例を出すと、四日目の死因。
それは熊の爪で刺されたり、殴られたりしたことだ。
これにより〈物理耐性〉を得られたのは納得だろう。
が、〈気配察知〉を得られた理由と繋がらない。憶測の域を出ないが、そもそも死んだ理由は奴の気配を感じ取れなかったことだ。
これを無くすために得られたと言えると思う。
つまり、こう言った予防となるスキルも得られることが分かった。
それにしてもまともな刃物が欲しい。
生前どんなに楽してたのか、ゴブリンになってから色々まざまざと実感出来た、植物もまともに切れず、兎ですら一撃じゃ仕留められないそんな石器はいい加減卒業したい。
何処かに武器落ちてないかなと思う、今日この頃。
八日目にして獣以外の生き物に会うことが出来た。
人間様です。