複雑・ファジー小説
- Re: 右腕へ転生、背負うは大罪 ( No.3 )
- 日時: 2017/06/14 21:41
- 名前: うたかた ◆wr23E0BYk6 (ID: memccPfd)
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プロムーグ魔森林。
そこは非常に雄大な森林と豊かな資源が眠っている場所である。
それ故にいくつかの大国が狙っているが、その大きさと様々なモンスターや亜人が生息しているため現在、ここは地図上で空白であった。
平時、ここでは冒険者が多く見られる。
しかし最近、様々な国からの迫害などから逃げてきた亜人が村を作って暮らしていると実しやかに噂され、その所為で立ち入る者は少なくなっていた。
また、日も暮れ、魔物が活発になる時間であることも一因だろう。
そんな森の中を細身と小柄の男二人組とそれに引き摺られるように狐の尾と耳を生やした少女が歩いていた。
男達の格好は、中央に胸当てとグローブ、短剣という簡素な装備であるが、それだけでもこの森の浅いところでは十分であった。
一方、少女の方は薄く粗悪な布を一枚巻いただけのような恰好であり、防具と呼ぶ以前に服としての役割を果たしているかも怪しいものである。
「もうここらで良いだろう」
「そうだな」
細身は周りを見渡すと、誰もいないことを確認し、思い切り少女を蹴り飛ばした。
少女の腹部と強く打ち付けた腰に鈍痛が走る。一瞬顔を歪めたが涙を堪え、細身を睨んだ。
男達はそんなことは気にもせず、装備を全て解き、ひげた笑みを浮かべ少女に少しずつ近付いていく。
これから何が起こるかは、男達の顔といきり立った一物を見れば、全て分かるだろう。
少女はそれでも彼らを睨み続けた。しかし彼女の身体は小刻みに震えており、恐怖していることは目に見える。
その行為は男達を興奮させるスパイスになっていた。
我慢仕切れなくなったのか細身が少女に手を掛けようとした。
その瞬間!
ビュンと、後方から石が飛んで来てもう片方の小柄の頬に掠め、赤い一線を引く。
「ッ!」
思わず小柄が悲鳴を上げる。
それに驚いた細身が振り返ると、後方に奇妙な入れ墨を持つ小鬼が立っていた。
「んだよ。雑魚じゃねぇか」
小鬼は、恐れられているモンスターの一つだ。しかし、それは飽く迄群れたとき。
一匹では、ただの農夫でも勝てると言う弱さだ。
細身は、思わず吹いてしまった。
この構図は、まるで不良からお姫様を助けようとする勇者様の様ではないか。
しかし相手が悪い。
亜竜に駆け出し冒険者が挑むようなものではないか。
馬鹿な小鬼も居るもんだと考えながら、細身は詠唱を始める。
されど小鬼は何もしてこず、呆けたように細身を見ていた。
直に詠唱も終わり、男の手に火が灯る。
「《ファイアボール》!」
細身の手に灯る火球は、小鬼に向かい真っ直ぐとした軌道を描く。
小鬼はその球を寸での所で避けるが、しかしそれ以上のことはしない。
それが細身の神経を逆撫でしたのか、顔を真っ赤に染める。
「チッ!雑魚が避けてんじゃねぇよ!」
細身は、先程置いた短剣を拾い、小鬼の方に駆け寄る。
小鬼は何かを思い出したように持っていた【粗悪級】とすら呼べない槍をかまえる。
が、細身は構わず突っ込んだ。
大したダメージにならないだろうと踏んだんだろう。
それ故に、切っ先が細身の腕に掠る。普通なら気にも掛けない傷だ。
しかし細身は、バランスを崩し倒れこむ。
その顔は、先程とは対照に真っ青であった。
「お、おいっ!リト!?」
細身は、助けを呼ぶように吠えるが小柄の方も蹲り、口から泡を吹いていた。
細身は先程の少女のように震えて小鬼を睨むが、小鬼は何も反応もせず、細身が落とした短剣を徐に拾い上げる。
少しだけ重さを確かめるように2、3度振ると満足したのか持ち主に近付き、ザクリ。細身の首筋から血が噴水のように吹き出す。
同じように口から泡を吹いていた小柄の命も消された。
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「はぁ...」
思わず、俺の口から安堵の溜息が漏れる。
一度落ち着きたいところだが、狐娘のケアを優先しないとな。
「大丈夫だ。もう心配ないからな」
俺は、彼女に優しく微笑み、猿轡や縄などの諸々の拘束具を取ろうと近付いた。
が、彼女はさっきよりより激しく暴れ、目尻に浮かべ、瞳は恐怖に染まっている。
これってまさか、
そんな俺の考えを肯定するように
「ーん!ん、ん!」と叫び声を上げる。
そして何かを念じるように瞳を閉じると、周りに冷気を放つ青い炎が浮かび上がる。
言葉が通じないんじゃ...。
そう思った瞬間。
俺の身体は、極寒に包まれた。