複雑・ファジー小説
- Re: もしも願いが叶うのなら。 ( No.2 )
- 日時: 2017/03/25 11:14
- 名前: 夜花詩 (ID: MHTXF2/b)
【第一話 もしも願いが叶う世界があったら、どうする?】
"ねえ、少年"
誰かが僕に問い掛けてくる。
ねえ、ねえ、と詰め寄ってくる。
相手の顔は見えない。
表情も見えない。
声も、聞こえない。
でも、分かる。
相手が女性で、何を言っているのかが。
___何故かは、分からないけれど。
でも、何となく、分かるのであった。
相手は僕に詰め寄り、胸元の方までよじのぼって来る。
"ねえ"
と、僕に向かって声を掛けながら。
でも僕はそれに答えることは無く。
ただただ赤面し、俯きながらに「離れてよ」と呟いた。
でも、相手はやめない。
変わらず、僕の体によじのぼって来る。
そして、顔までよじのぼって来たその時。
一言、こう言うのだ。
「またダメだったよ」
そう、たった一言。
そこから意識が薄れて行き。
走馬灯を見ているような、そんな感覚に囚われてしまう。
そして僕は、そんな感覚の中で、とあるものを見るのだ。
とあるもの。
それは____記憶、であった。
大切な人ができ。
恋をし。
学び、遊び、ぶつかり合い。
そして____
___『死』に至るまでの、記憶。
そんな、悲しく切なく、もどかしい。
出来ればもう二度と目にしたくないような。
____そんな記憶であった。
記憶の中で。
大切な人が『死』に至り、少年は泣く。
誰も少年に構いやしない。
ただ一人、少年は、雨風の中も関係無しに泣いた。
そして、嘆いた。
この国に、この世界に。
『大切な人』の人生を閉じてしまった、全てのもの達に向かって。
悲痛を。
嫌味を。
皮肉を。
『大切な人』の、大切な"願い"を。
『大切な人』が死の直前まで願った、大切で儚く最も大切な"願い"を。
少年は、嘆いた。
___と、そこで記憶は途切れてしまい。
僕はふと、意識を戻した。
____この、クソッタレで愛すものなんて何も無い、居るだけで苦痛な世界に。
- Re: もしも願いが叶うのなら。 ( No.3 )
- 日時: 2017/03/25 11:55
- 名前: 夜花詩 (ID: MHTXF2/b)
「あ、兄ちゃん起きた?今朝、暁美が迎え来てたけど兄ちゃん起きるの遅いからって先行っちゃったよ」
先程まで目を閉じ意識を体を預けていたベッドから身を起こしながらに聞いたのは、そんな弟の声であった。
弟の言葉に、僕は軽く「そうか」と返事を返し。
「ところで。お前は、学校に行かなくても良いのか?勇喜」
僕のベッドの真っ正面にあるパイプ椅子に腰を掛け、呑気に片手に本を持ち読書をしている弟、勇喜にそう問いかけた。
僕の兄弟の一人であり、3つ違いの小学5年生である弟、山田勇喜。
かなりの読書家____と言うわけでもなく。
ゲーム好きな、小学生らしい趣味を持った、極々普通の少年である。
___ただ、少しだけ、人よりも少しだけ皮肉たらしい性格である。
___と、そんな弟、勇喜に問いかけた僕に対して。
勇喜は、軽く流すかのようにして「今日創立記念日」と短く言い切った。
「ふーん、そうなのか。小学生はお気楽だなー」
僕が、少しの皮肉と不満を込めそう言うと、勇喜は頬を膨らませて。
「兄ちゃん今日の朝飯抜きね」
言って、パイプ椅子から腰をあげた。
「ちょっ、何でだよ急に」
俺は言って、ベッドから降り勇喜の服の裾を引っ張った。
勇喜は一言「うぜぇ」と呟き。
「何ででも。__さっきの言い方、ムカついたからさ」
言って、ゴミでも見るかのような目で僕のことを見て「邪魔」と呟きながら僕の手を払い除けた。
そして。
「じゃ、俺、朝飯食べるから」
言って、部屋から出て行く。
「待てよ、僕も行くから」
僕もそう言って、勇喜の跡を追って自室を後にした。
- Re: もしも願いが叶うのなら。 ( No.4 )
- 日時: 2017/03/25 22:47
- 名前: 夜花詩 (ID: OypUyKao)
「おっ、おはよー。一喜、勇喜ー」
「おはよ、兄貴」
「おはよー、兄さん」
リビングにて。
僕と勇喜は、大学生の兄に挨拶を交わし、食卓の席に着いた。
「勇喜ー、どうだった?一喜、なかなか起きなかっただろ?」
と、兄が、僕と勇喜の分の朝食____食パンにハムエッグのセットを二皿乗せた御盆を食卓の上に置きながら、勇喜に向かってそう言った。
兄さんは御盆を僕と勇喜の前に置くと、自分もそのまま食卓の席に着く。
と、兄さんは勇喜の皿に手を伸ばし。
「いっただきー」
言って、パンを一摘まみし、口の方に運ぶ。
汚いなー………。
主に食べ方が。
まあ、そんなこと言うのは可哀想だし、言わないけれど。