複雑・ファジー小説

Re: 紫陽花手帖 ( No.11 )
日時: 2017/09/02 17:05
名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
参照: 迷いそうなあなたの道しるべとなれるように


 
 

 迷いそうなあなたの道しるべとなれるように。私はいつも、赤い傘を差している。
 水たまりに飛び込む無邪気なあなたを泥から守れるように。私はいつも、青いレインブーツを履いている。
 雨の中に飛び出す奔放なあなたの身体が冷えきってしまわぬように。私はいつも、黄色いレインコートを羽織っている。
 突然に降り出した雨は大地を濡らし、柔らかくしていく。人の心も、天の神様の心も、川の心も。
 アスファルトの隙間に溜まったちっぽけな雨水は、踏みつければどこかへ消えてゆく。
 黒猫は雨に打たれて、もう動かない。
 街に雨が、降り注ぐ。いつまでも、いつまでも。
 この雨が止むまで、私はあなたと共にいよう。いつかこの罪が、赦される日まで。

 迷いそうな私の道しるべとなれるように。どうかいつまでも、赤い傘を差していて。