複雑・ファジー小説

(原作)三匹のこぶた。(アレンジ少々アリ) ( No.40 )
日時: 2017/09/03 08:52
名前: 雪姫 (ID: hmF5PELO)

【三匹のこぶた。】はイギリスの昔話で、日本でもよく知られているお話ですよね。
NHKの子供劇【ブー・フー・ウー。】のもとになったお話らしいのですが、日本で紹介されているものは、本編の後半がばっさり切られているそうなのです。
では本当どんな、お話だったのでしょう—?
***





むかし、むかし、豚のおばあさんが三匹のこぶたと暮らしていました。


『お前達、世の中へ出て、自分たちの幸せを探しておいで』


おばあさんはこぶた達に言いました。


こぶた達は「おそとに怖いものはないの?」と聞きました。


『怖いものには気をつけるんだよ』


おばあさんがそう言うと、こぶた達は「は〜い」と元気に家から出ていきました。


一番年上のこぶたは、「さぁ、ボクの幸せを会いに行こう」と、ズンズン歩いていきました。


こぶたは途中で、ワラをたくさん持った農夫に出会いました。
「農夫さん、お願いです。 家をつくるのにそのワラをください」
こぶたはワラをもらうと、それで家をつくりました。
「どんなもんだい、ボクの家」
一番年上のこぶたは胸を張りました。

そこへ狼が通りかかりました。


こぶたは驚いてワラの家に入り、中から鍵をかけました。


『こぶたくん、俺を中に入れてくれないか?』


狼は戸口に立ってこぶたに言いました。


「イヤだよ。 そんな事したら食べられちゃうじゃないか」


こぶたはちっちゃなヒゲをピンとのばして答えました。


『じゃあ、こんな家は、俺の息で吹き飛ばしちゃうぞ』


狼はそう言うと、息をすぅぅぅぅぅぅぅぅっと吸い込みました。


『フーのプーのブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』


狼は凄い勢いで息を吹き出すとワラの家は吹き飛び、こぶたはコロコロ転がりました。
狼はこぶたをつかまえると、ぺろりと食べてしまいました。



二番目のこぶたも、「さぁ、ボクの幸せは探しに行こう。」と、ズンズンズンズン歩いていきました。



こぶたは途中で、トゲがたくさんついたハリエニシダを荷車一杯につんだ男にあいました。
「農夫さん、お願いです。 家をつくるのにそのワラをください。」
こぶたはハリエニシダをもらうと、それで家をつくりました。
「どんなもんだい、ボクの家。」
二番目のこぶたは胸を張りました。


そこへ狼が通りかかりました。


こぶたは驚いてハリエニシダの家に入り、中から鍵をかけました。


『こぶたくん、俺を中に入れてくれないか?』


狼は戸口に立ってこぶたに言いました。


「イヤだよ。 そんな事したら食べられちゃうじゃないか」


こぶたはちっちゃなヒゲをピピーンとのばして答えました。


『じゃあ、この家も、俺の息で吹き飛ばしちゃうぞ』


狼はそう言うと、息をすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと吸い込みました。


『フーのプーのブブブブブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』


狼は凄い勢いで息を吹き出すとハリエニシダの家は吹き飛ばされ、こぶたはコロコロコロコロ転がりました。
狼はこぶたをつかまえると、ぺろりと食べてしまいました。



一番年下のこぶたは、「さぁボクの幸せをつくりに行こう」と、ズンズン歩いていきました。



こぶたは途中でレンガをたくさん運んでいる男に会いました。
「農夫さん、お願いです。 家をつくるのにそのワラをください。」
こぶたはレンガをもらうと、それで家をつくりました。
「どんなもんだい、ボクの家。」
一番年下のこぶたは胸を張りました。



そこへ狼が通りかかりました。


こぶたは驚いてレンガの家に入り、中から鍵をかけました。


『こぶたくん、俺を中に入れてくれないか?』

狼は戸口に立ってこぶたに言いました。

「イヤだよ。 そんな事したら食べられちゃうじゃないか」

こぶたはちっちゃなヒゲをピピピピピーンとのばして答えました。

『じゃあ、この家も、俺の息で吹き飛ばしちゃうぞ』

狼はそう言うと、息をすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと吸い込みました。

『フーのプーのブボボボボォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』

狼は凄い勢いで息を吹き出しましたが、レンガの家はびくともしません。
狼はもう一度、息を思いっきり吸い込みました。

『ブーのブブブーのブゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

狼は凄い勢いで息を吹き出しましたが、反対に狼の体は空高く飛んで、そして地面に落ちてしまいました。いくら息を吹いてもレンガの家は壊れません。

狼は家を吹き飛ばすのをあきらめて、腰をさすりながら戸口に立って言いました。

『こぶたくん、俺はうまいカブのあるところを知ってるんだ』

「それは、どこ?」こぶたは狼に聞きました。

『西の畑だよ。 明日の朝、俺が連れてってやるよ』

「いいよ、何時ごろがいい?」

『じゃぁ、六時にしよう』

狼はそう言って帰って行きました。

こぶたは翌朝五時に起きると、西の畑に行ってカブを取ると、狼がやって来る前に家に帰って鍵をかけました。

狼は六時ごろやって来ると、愛想よく聞きました。

『こぶたくん、カブを取りにいこう。 したくは出来たかい?」

「出来たよ。さっき畑で取ってきたカブのスープが出来たよ」

狼はこぶたが先に一人でカブを取ってきたと知り腹が立って仕方ありませんでした。
何とかして仕返ししてやろうと考えました。

『こぶたくん、俺はうまいリンゴのある所を知ってるんだ』

「それは、どこ?」こぶたは狼に聞きました。

『南の畑だよ。 明日の朝、俺が連れてってやるよ』

「いいよ、何時ごろがいい?」

『じゃぁ、今日と同じ六時にしよう』


狼はそう言って帰って行きました。

翌朝、こぶたは五時に起きると、南の畑に行ってリンゴを取りに行きました。
しかしリンゴを取るには木に登らなければならず、西の畑より遠く、昨日より時間がかかってしまいました。

こぶたはリンゴを取ると大急ぎでレンガの家に走りました。
しかしこぶたが家の前まで来ると、そこには狼が待っていたのです。
こぶたは怖くて恐ろしくて体がガタガタ震えました。


『こぶたくん、また俺より先に行ったんだな。良いリンゴが取れたかい?』


狼はこぶたをいたぶるように言いました。
こぶたはぐっと歯を食いしばりました


「うん、おいしいリンゴが取れたよ。 一つ投げてあげるね」


こぶたはポーンとリンゴを投げました。
狼は手をのばしましたがリンゴはその向こうへ飛んでいきました。
狼はついそのリンゴを追いかけていき、帰った時にはこぶたは家の中に入って鍵をかけていました。
狼は、こぶたを捕まえそこねて腹が立って腹が立って、持っていたリンゴを握りつぶしてしまいました。

それから、こんどこそこぶたを捕まえてやろうと、またこぶたを誘いました。


『こぶたくん、明日東の町で市があるんだ。 一緒にいかないかい?」

「うん、いいよ。 いつ行くの?」

『じゃあ、今日と同じ六時にしよう』


狼はそう言うと帰って行きました。

翌朝、こぶたはまた早く起きると一人で市に行き、バターをかきまわして作る桶を買いました。
そして、桶をもって帰るとちょうど丘の上にきた時、狼が向こうからやって来るのが見えました。
こぶたは今度は怖がりませんでした。
買ってきた桶の中に入ると、狼めがけて丘を転がって行きました。

狼は丘の上から桶が自分めがけて転がってくるのを見てびっくりしました。
そして慌てて逃げ出しましたが、桶は勢い良く狼にぶつかって、はね飛ばしてしまいました。
こぶたは、そのまま自分の家まで転がって行き、レンガの家に入るとまた鍵をかけてしまいました。

それを見た狼は、かんかんに怒り、煙突から入ってこぶたを捕まえてやると走り出しました。
こぶたは、暖炉に大きな鍋をかけ、がんがん火を焚いて熱く煮立ったお湯を沸かしました。
そして煙突から飛び込んだ狼が鍋に落ちると、ぱっとふたをして、ぐらぐら煮てしまいました。

こぶたは狼のスープを飲み、夕食にしました。
もう怖いものも、ひと呑みにして、恐れる事も平気になりました。
そして、こぶたはまた、幸せを作りに外へ飛び出しました。




                                【三匹のこぶた。】














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【三匹のこぶた】の本編中、日本で一般的に語られている部分は、最初から家を吹き飛ばすまでの部分と、狼が煙突から鍋に落ちるラストの部分で、後半の部分がカットされています。
切られてる部分にそれほど問題もありませんし、カットしなければならないほど、お話の分量も長いわけでもありません。
なぜ後半が切られたのか、理由がはっきりしていないのです。

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こぶたのヒゲ。
ぶたにヒゲはありませんが、もとの昔話には『ボクのちっちゃなヒゲにかけて』という一文があります。
そのため【三匹のこぶた。】は、もともとはヤギだったのではないか?という説もあるそうです。

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