複雑・ファジー小説
- Re: 昔話を旅するお話〜其ノ壱〜 ( No.4 )
- 日時: 2017/08/22 22:06
- 名前: 狐音 (ID: .1MHnYLr)
〜3話目〜
「桃太郎さん働いて下さい!」
「え、、ここ、どこ?」
目を覚めた先は気が茂っている、、、つまり森の中だ。
辺りを見渡せば森ばっかりでこんな所に人が居るのかと疑いたくなるほどだった。
だが、ここは嫌いじゃない。耳を澄ませば鳥や風の音がしてとても心地いい。
「いい場所でしょ?」
首を傾げながらね?ね?とまるで返事を急かすような言い方をして来た。
「うん。いい場所だね。こういう所好きだな。」
「ふふっ、絵夢喜ぶと思ったわ!」
ニコニコと無邪気な笑顔を僕に見せながら『あっちから水の音がするよ!』とひとりで飛んで行ってしまった。
ん......?行って、しまっ...た?
「ちょっ?!ま、待ってよ!」
なんで運動音痴の僕がこんなに走らなきゃいけないの?!
も...体力の、限界だよ......
ぜぇぜぇと息を切らしながら相手を追いかけたどり着いた場所は川だった。
「か、川だァ......」
「ここに川があるってことは...こっちよ!絵夢!」
「え?!ちょっ...!エルル!」
相手に指をぐいぐいと引っ張られついた場所は広い場所で近くには橋みたいな、、、なんだろう、中途半端だけど。
ってか、おばあさん居ない?
川...お婆さん...。
「も、桃太郎?!」
「よくお分かりで!」
パチパチと拍手をすれば。
絵夢は僕の肩に座って『1話目は桃太郎よ!でも、ここの桃太郎は少し変わっててね』と呆れ顔で言った。
そんなに飽きれるほどの人なの?本とかでは鬼退治してかっこいいところ見せてるのに?
ん?と首を傾げながら頭に「?」を浮かばせてんー...と悩みこんだ。
「ま、まぁ!そんな深く考えないで!」
焦りながら考えるのをやめさせた。
そんなに酷い人なのか?とますます気になるばかりだが『おばあさんに早く話しかけましょう?』とぐいぐいと引っ張るので考えるのを一旦やめにして洗濯ものを洗っているおばあさんの元へ近づいた。
「あ、あの.........すみません」
「...?はい?どうしました?」
「あ、えと......桃太郎さんのお婆さんですよね?」
「あら、貴方お桃太郎のお友達かしら?」
「へ?!」
お、おおっ、お友達?!べ、別にそんなことはないんだけど、、、
でも何か嬉しいような。。。
「え、えと〜」
「ここはお友達って言っときなさい」
小さな声でエルルが耳元で囁き渋々『はい、友達っていうほど親しくはありませんけど...』と返事をした。
「あらあら、桃太郎なら家にいるわ。案内してあげる。」
「ありがとうございます。」
ペコッと一礼をすればお婆さんはうんうんと、優しい笑顔でこちらを見てははぐれないようにね、と前をゆっくりゆっくり歩き始めた。
その姿は猫背で、足取りもとても遅い。でも、おばあさんの姿を見てるとどこか懐かしいような感じがして、、、ってそんなくらい事考えない!
ぶんぶんと首を思いっきり振ればパンっ!と両手で頬を叩いた。
「え?!どうしたの?絵夢」
「え...や、なんでもないよ」
と、相手に優しく微笑み返せば『そう?』と、少し心配そうな顔をしたが『大丈夫!大丈夫!』と笑顔でいえば『ならいいんだけど』と僕の肩に座った。
「着いたわ、ここよ」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、じゃあ、私はまだ洗濯物の途中だから。桃太郎はとゆっくりお話して下さいな」
優しく微笑めばさっき来た道を戻って行った。
「えと...お邪魔しま......え?」
「やっぱり。そうと思ったわ。」
エルルは何か知っているようで深く思いため息をついた。
その桃太郎の姿は僕の知っている姿ではなかった。