複雑・ファジー小説
- Re: 表裏一体(オリキャラ募集中) ( No.11 )
- 日時: 2018/01/10 17:14
- 名前: 麗楓(のんたん) (ID: cetVlQWk)
今回はちょっと長めです。でも少しリンのプライベートの事情が分かるので、そこは見てほしいですね。
表裏一体って
「ねぇこれどういう意味?」
静かに本を読んでいるかと思いきや、いきなり質問をされて俺は椅子から滑り落ちた。うわぁ、と思わず声を出す。彼女の艶々とした爪の先には『表裏一体』と書かれていた。表裏一体の意味も知らないのか......。
「何よ、表裏一体も知らないの〜?なんて心の中でバカにしてるでしょ。知識には個人差があるんだから別にどうだっていいでしょ!」
図星、そう思い俺はぎょっと目を見開く。次の瞬間ムスっと頬を膨らます彼女に対し、俺はクスクスと笑ってしまった。今までこんな彼女は見たことないからだ。
「表裏一体は文字通り、表と裏のように密接で切り離せないことだよ」
「ふーん」
ふと俺の顔をじっと見つめる彼女。そしてふっと笑みを彼女はこぼした。な、何だ、俺の顔に何か付いているか?
「じゃあ私たち、表裏一体の関係だよね?」
「......はい?」
椅子から転げ落ちそうになる。表裏一体とは密接で切り離せない関係。俺と彼女はただの生徒会仲間だろ。クラスも違うのに、俺と彼女が表裏一体の関係って一体どういう意味だ?
「だってぇ下着も見たし、チューだって済ませたのよ。あとは二人で一夜を明かせば......」
「はぁ!?」
「ご予定はいつ空いてますの?」
「急にかしこまるな、てかまだ一夜明かすとは決まってないだろ!?」
あはは、と笑う彼女は面白すぎて涙を浮かべている。今度は俺がムスっと頬を膨らます。彼女はそれを見て更に高らかな声で笑った。
「結局城宮は来ないし」
「クロキなら部活で来ないって前々から私に伝えていたわよ?」
「お前それ早く言えよ......」
帰り道、俺達を真っ赤に染める夕陽は今にも水平線に沈んで、真っ暗な夜へと導きそうだった。建物の影は俺を家まで案内し、後ろへと伸びる影がただただ俺の気持ちを沈ませるだけだ。
一歩一歩、足を前に進ませるとおいで、おいでと言わんばかりに影が俺を誘う。
「鈴ちゃん」
その声を聞き、俺は足を止めた。ピタッと止まった足は硬直したかのように動かない。まるでただの置物のようだった。
「リン、この人は......?」
「俺の......姉貴」
「彼女さんかな? 初めまして、鈴がいつもお世話になっております。姉の赤木 真鈴まりんです」
「......紫野巨峰です」
彼女じゃないよ、と俺が弁解すると姉はそう、じゃあ早く帰りましょ、と言った。茶髪が風に靡いたとき、俺は悟った。ああ、もう逃げられないって。ピンク色に染まった頬から滲み出る殺気を感じた。
「リン、気を付けてね」
紫野は下を向いて呟いた。了解、と言うと彼女は走り去った。そう、それでいい。そうじゃないと......。
君が被害に逢ってしまうから。これは紫野も城宮にも絶対避けてほしいから。きっと彼女は何か気づいただろう。
「ねぇリンちゃん」
いきなり俺の腹を蹴飛ばし、地面に強く突き飛ばす。俺が言葉を発する間もなく、頭を地面に彼女の足で押しつけられた。
「ねぇリンちゃん、どうしてお友達の前で『お姉様』って言えないの、私のことはお姉様と呼びなさいって家でも学校でも外でも! 何度言ったら分かるの?」
地面にズリズリと頭を擦り付けられる。額からは血が滲み出てきた。
「......ご.......めんな......」
「あら、目上の方に謝るときは『ごめんなさい』で良いの。敬語はどうしたのかしら、敬語はぁ!?」
更に強く頭を地面に擦り付けられ、痛いと思う前にすぐ腹を蹴られる。
「どうして分からないの、どうしたら分かってくれるの。ねぇリンちゃん、ねぇねぇねぇ!!?」
人には表と裏の顔がある。この世界は表の顔で溢れかえっているんだ......。