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　「はぁーっリン今日掃除なんて聞いてないよ」
　めずらしくガックリ落ち込む私は生徒会室へとぼとぼ歩く。せっかくリンと一緒に行きたかったのに......。本人は面倒見がいいから一緒に行ってくれそうだけどね。
　そうして生徒会に入ってからまだ1回しか入ったことのない生徒会室へ入る。
　ガチャ、とドアを開くと目の前のパイプ椅子に男子生徒が座っていた。手には本を持ち、机には大量の雑誌が置かれている。
　この人生徒会だっけ？ 実際生徒会のメンバーが全員集まったこと無いんだよね。
　「やっべぇ見つかった」
　「もしかしてそれ、世に言う"エロ本"ってものじゃない？」
　「......話の通じる生徒会が居るとは」
　 「私その雑誌興味あったの！」
　「会長だよね？ お願いします、力を貸して下さい！」
　 「力......？」


　「俺は城宮しろみや黒木くろきです。赤木と同じクラス、副会長をやっています！」
　 彼の話を詳しく聞くと、どうやらエロ本の隠し場所をこの生徒会室にしたいらしい。そんなことリンが許すはずがない......。
　「お願いします、もう隠す場所がここしかないんです！」
　 「当たり前じゃない、もちろん協力するわ！」
　 なーんて、私が許すに決まってるじゃない、こんなに面白そうなことないもの！
　 リンにバレないように隠してやり過ごせばいいだけよ。バレたら絶対承知しなさそうだし。

　 「んで、どのぐらい持ってきたの？」
　「40冊です」
　 「よ、ん？」
　「40冊です」
　 「......男子ってそんなにエロ本見るものなの？」
　「今はスマホで見れちゃいますけどねぇ。多分興味本位で見るものじゃないですよ」
　 「......とりあえず早く隠すわよ！」

　　　　　　　　　　＊＊＊＊＊

　「はぁーっ担任話長すぎるんだろ」
　掃除が終わってからも話の長い担任に呆れる。そうして俺は生徒会室のドアを開いた。中には紫野と同じクラスの城宮が座っていた。
　ゆったりお茶を飲みながら団らんしていたようだ。
　「そう言えば城宮も生徒会に入ったんだよな。これからよろしくな」
　「あっああ、よろしく」
　どこか落ち着きのない彼に違和感を覚える。すぐさま紫野に問いかけた。
　 「お前、生徒会室の掃除したのか？」
　「まぁ......ね」
彼女がそう言うので、棚に目を向ける。明らかに棚の隅に残るホコリ、そのわりに妙に整理された本棚。
　「これ、妙に膨らんでいないか？」
　 「ちょ、ダメ！」
　 バサッと本と本の間に挟まれたものが落ちる。表紙には美しいお姉さんが水着姿で写っている。
　「......は......？」
いわゆるエロ本というものが挟まれていたのだ。思わず本棚に身体をぶつけてしまう。
　 バサッ、エロ本。
　 バサッ、エロ本。
　 バサッ、エロ本......。
　1冊1冊よく見ると全てにエロ本が挟まっていた。俺はそのまま立ち尽くす。
　「いやぁ......その、ね？」
　 「赤木、これから副会長としてよろしくな！」
　 彼の言葉は俺の怒りを沈めるためのフォローをしようとしたのだろう。
　 「......」
　 エロ本読んでる副会長とエロティックな生徒会長をどうやってまとめればいいんだ......？
　 面倒くさいの言葉しか見当たらなかった。