複雑・ファジー小説

Re: シークレットガーデン-殺戮人形と呼ばれた少女の物語- ( No.1 )
日時: 2017/11/17 10:32
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: lEZDMB7y)

——ポタンッ、と雫の落ちる音がした。
ポタンッ、ポタンッ、ポタンッ、一滴ずつ落ちる雫。

誰かが水道の蛇口を閉め忘れたのかな。
いいえ、違う、それはありえない。

近く深くに掘られた洞窟に水道なんてないもの。
蝋燭(ろうそく)一本分くらいの灯りしかない薄暗い洞窟。

孤児が集められた牢獄。
とある実験を行うための施設。

冷たい土壁の道を歩いて洞窟の奥深くへ進めば見えてくるのは実験室書かれた扉。
ポタンッ、ポタンッ、と雫が落ちる音が聞こえる。

背筋がゾワリと震える。
この先で何が行われているのか知っているから。
何の為に孤児達が集めらたのか知っているから。

指紋認証を済ませ 扉を開けは 臭う 死臭の香り。
目の前にいるのは堆く積まれた 子供達の肢体の上に腰をかける童女。

身体を赤黒い血で染め抜いて 童女は不機嫌そうに呟やく。

「あぁ——お腹が減った」

ここはとある実験を行うために作られた実験施設。
ここはとある目的の為に孤児を集めた牢獄の洞窟。
ここは捉えたある童女のお腹を満たす為の食事場。

孤児として生まれた童女は 自我を持つよりも早くにナイフを手に取った
孤児として生まれた童女は 母乳を口にする前に生き血を飲み喉を潤した
孤児として生まれた童女は 子供らしい遊びを覚えるより前に人を殺した

とある組織に拾われ育てられた童女は 今日も人を殺す。
雇い主の命令に従い 見ず知らずの物の首を刎ねる。

手に持った刀は赤黒い血で汚れている。
握る手は赤黒い血で汚れている。
血飛沫を浴びた体は赤黒い血で汚れている。

着々と命令をこなす童女の心は——死んでいる。
心の無いただの人形——殺戮人形として今日も童女は死んでいる。