複雑・ファジー小説

スターティング・チェンジ ( No.1 )
日時: 2017/11/17 20:11
名前: 春夏 (ID: KE0ZVzN7)

──何が起こったんや。
エセ関西弁なのは気にしないでほしい。唐突に訪れた急展開に思わずエセ関西弁が溢れてしまっただけだ。
決して関西弁をディスっているわけではない。むしろ尊敬してる。マジリスペクト、カンサイベン。
そんな事よりも、なぜ俺がエセ関西弁を発動してしまうくらいに驚いたのか、その理由を明かそう。
目の前に広がる、自然豊かな大草原ッ!
いやいや、俺今まで自分の部屋にいたから。白い壁と汚い床と天井に囲まれてたから。
空を見渡せば、飛行機ほどある大きさの鳥が舞いッ!
いやいや、鳥ってあんなにデカいもんじゃないから。恐竜時代にトリップしたわけじゃないんだから。
前を向けば、現実世界では絶対ありえないような赤髪の美少女がこちらを向いておりッ!
いやいや、自慢じゃないが俺は恋愛経験ゼロだから。なんだよ、悪いかよ。普通だろ、良いだろ。
まあ結局何が言いたいかというと、それは全て一言で収まる。そう、すなわちーー


──何が起こったんや。
改めて状況を確認してみると、案外恐竜時代にトリップした説は間違いじゃなさそうだ。
こんな自然豊かな世界、俺が住んでいた東京には存在しなかった。
決して東京をディスっているわけではない。ただついつい本音が出てしまっただけだ。ノープロブレム。
そんな事よりも、なぜ俺がこんなにも困惑しているか、その理由を明かそう。
もう一度見てみよう、目の前の美少女をッ!
やばい、可愛すぎるではないか。その赤髪、美しい、パーフェクト。
もう一度だけ見てみよう、目の前の美少女をッ!
うん、神に匹敵する可愛さではないか。いや、神を超えている。シーイズゴッド。
懲りずにまた見てみよう、目の前の美少女をッ!
はあ、なんて可愛いんだ。今なら俺、犯罪犯しても後悔無い。レッツゴートゥーヘル。
まあ結局何が言いたいかというと、無論全て一言で収まる。そう、すなわちーー


──何が起こったんや。
無限ループって怖いよね、と感想を抱いたそこのあなた。学校は無限ループの象徴なんだぞ。
毎日毎日同じ事の繰り返し。あ、俺は不登校だったから学校は行って無いけど。
決して学校をディスっているわけではない。だが尊敬もしていない。スクールナンテイラナイ。
そんな事よりも、なぜ俺が無限ループに陥っているのか、その理由を明かそう。
もう一度周りを見渡してみようッ!
そこは、ゲームやアニメで見慣れたありきたりなファンタジー世界だった。
もう一度美少女を見てみようッ!
彼女は、俺にとってはあまりにも見慣れた存在だった。
最後に、もう一度だけ世界を見渡そう。
何度見ても、何度現実逃避を繰り返しても、その世界は変わらなかった。
どれだけ思考をループさせようが、目の前の景色、目の前の彼女は変わらない。
もうそろそろ認めざるを得ない。信じられないが。まさにここは──


「俺の書いた──小説の世界だ」


さて、自己紹介が遅れてしまったようだ。
俺の名は楠新多。ラノベ作家をやってた十九歳だ。
そんな俺は今どうやら、自分の書いた小説の世界の中に迷い込んでしまったようだ。
小説の名は、GALAXY。俺が最も愛していた、もう一つの世界だ。


* * * * * * * *


【GALAXY】
売れ出し中作家、楠新多と人気イラストレーターまなりんのタッグによる最新作。最新刊は先日発売の七巻。
一向に平和にならない大戦続きの世界で、ひょんな事から世界を救う勇者に選ばれてしまったベガとアルタイルがそれぞれの思惑を胸に戦うファンタジー。王道を進みながらも独創性に富んだ人気作品。七巻発売時点で五十万部を突破した。
設定が非常に多く覚えることが難しいが、その分読み応えもあり読者を増やしている。