複雑・ファジー小説
- Re: 【参加型】神世ノ描画≪参加神募集中≫ ( No.2 )
- 日時: 2017/11/30 15:00
- 名前: 雲梯 ◆3M7/fLURow (ID: quLGBrBH)
やぁ、この度は僕の稚拙な文章を読んでいただき……って言ってもしょうがないか。
とにかく、このコーナーは僕が世界のいろんなところを回っては僕なりにまとめ、僕の勝手な主観のもとに送る旅レポなんだ。
旅がネタのすべてだから不定期になっちゃうし、そんなこともう知ってるよっていうこともあるかもね。
まあ、よろしくね?
vol.1『猫獣人の町と魔法授業』-1
初めまして、僕はベル。エルフの旅人をやって、今はコラムライターをさせてもらってるよ。
これは僕が雑誌のコラムを任され、軍資金だと少し不安なほどの前金をもらいちょっと舞い上がっていたころの話。
エルフは子供のころから自給自足な生活だからあまり金銭に執着しないんだけど、僕は少し違って森から出て生活してたんだ。そのせいか多くないとはいえ、まとまったお金があるとウキウキしてしまう、子供っぽいかもね。
だから、普段使わないような薬だったり道具を買い揃えて、折角もらった軍資金はすっかり消えちゃって、財布が軽くなった時ようやく冷静になってね。これはまずい、はやく旅をしてコラムに書けるようなことを探さないと、そんな気持ちで僕は町を飛び出したんだ。
さてどうしたものか、とまだ整備された道路を歩きながらそれからのことをいくつか考えていたんだ。今回編集の人からは「いろんな種族のこととか知りたい人が多いんですよ」と言われていたから、いざとなれば一番よく知っている、僕たちエルフのことを書けば一回はしのげる。
けど、いきなりそんなことしたらいざって時に困る。出来ればそれは最終手段として取っておきたかった。それに、態々僕の種族について書くのもなんだか恥ずかしかったからね。
つまり僕がエルフについて書き出したら、それはネタが無くなったんだなコイツって思ってもらえれば幸いかな。
「もし、そこのエルフさん」
うだうだ悩んでいると、ふと後ろから声をかけられていることに気が付いたんだ。振り返ってみればそこには何とも可愛らしい獣人が一人、少し息を切らして立っていた。
——さて、一般常識レベルになっちゃうけど獣人について少し僕の知識を書かせてもらう。
獣人とは、代表的なのでいえば犬や猫、それに鳥なんかの特徴を体に持つ種族のことを指す。だから牙だったり鋭い爪だったり獣毛、色々と生まれつき持っている。他にも鳥獣人だっら翼があったりね。その割合も人それぞれらしくほぼ人間と変わりないような見た目だったり、あるいはその逆だったり。
彼らは脚力や顎のチカラ、五感の一部に特化したりと優れている。仲間に一人いれば、とても頼りになること間違いなしだ。けれど……ああいやそれについては少し後で語ることにする。とにかく羨ましい種族だ。
という訳で、この猫獣人さんも身体能力的にとても優れているはずで、そんな彼女が息を切らすとはどれだけ急いでいたか、察することができる。
話を聞いてみればどうやら僕を探していたらしく、こんな何も持っていないエルフに何の用か、と思って少し話を聞いてみることにしたんだ。
「——という訳で、もしお暇ならと思い……」
「わかりました」
猫の獣人、本名は伏せるためにケシー(仮)さんと書くことにするけど彼女曰く、魔法の教師として僕に村へ来て欲しいということだった。
なんでも彼女の村は多くの猫獣人が住んでいるらしいんだけど、今年は試しとして子供たちに魔法を教えてみようという話が出たそうだ。獣人は魔法が苦手とされているから、子供のころから鍛えてみればあるいは? っていう発想らしい。
———そう、獣人が苦手とするのは魔法。大人になった彼らに尋ねてみても決して扱えるものは多くない。種族間で比べてみても、獣人が魔法を使える割合はかなり低いだろう。それについて僕は少々疑問を抱いているのだけど……、少し話が逸れてしまった。
さて教師役を探さねば、と別の町に来てみた所、なんと魔法に長けているとされるエルフの目撃情報があるではないか。しかし先ほど出発してしまった、という話を聞いて慌てて追いかけてきたそうだ。
それに対して僕は、旅の身なのでそう長くはいられない、教えるのは初歩ぐらいまでしかできない、と最初は断ろうかと思っていた。
けれど彼女はその初歩まででいいから、というのでそれならばと魔法教師の役を受けることにしたんだ。
そのまま彼女の案内に従い猫獣人の村に招かれた。
まだ日が高かったから、夕方前には着くことができた。すると僕はあっという間に子供たちに囲まれてしまった。僕の腰の高さぐらいまでしかない子ばかりで何とも可愛らしいが、数がいると少しびっくりしてしまう。あと地味に僕の足を蹴っていた子が何人かいたが、猫獣人なりの挨拶なのだろうか。
「ねえねえどこからきたの?」
「ほんとにえるふ?」
「まほうつかってー」
って感じでそりゃもうもみくちゃにされたよ。エルフは別名森の引きこもり、物珍しいというのは分かるけど流石獣人、子供でも結構苦戦するパワーだった。
少しするとケシーさんが散らしてくれたけど、それでも目を離した隙に近寄ってくる子が多かった印象。とりあえず水魔法で少し曲芸じみたことをして期待には答えておく。
が、魔法を出すとみんな怖がって少し距離を取られるのが何気にショックだった。
「それでは明日」
ケシーさんはそう言って宿の一室を貸してくれた。旅の間は野宿が基本なのでとてもありがたいことだ。荷物をほどいて木の床に身を預けると、ほのかに香る材木の香りが癒してくれた。
村に来た時軽く見まわしたが、どうやらこの村の主流は木造建築のようだ。木に囲まれているのもあり、材料の調達が容易なのだろう。
しかし、ところどころ爪を研いだ後があるのはいいのだろうか。それとも風習なのか。なにはともあれ、迂闊に柱へ寄りかかるのは駄目そうだった。
窓を開ければ、背の高い木で囲まれた集落が一望でき、町行く人たちを観察できた。二階建てということもあり、物音でも立てなければ態々こちらを見てくる者もいない。
あちらこちらに猫獣人たちの暮らしが見え、私は飽きることなくそれを見ていた。その中でも特に見ていたのは彼らの耳。
僕のようなエルフと違い、より高い位置から耳を生やす彼ら。獣人としては珍しくないが、やはり気になる者も多いのではないだろうか。人間の中にはその耳が好きだ、なんて思考を持った人もいるそうだ。
つまりは、あの耳は彼らを語るうえで欠かせないチャームポイントの一つと言える。
ピンと立っていたり、縦半分ぐらいで折れて伏せられているもの、はたまた装飾品がつけられていたり。それらが肌触りのよさそうな毛で覆われているのだから、なんとなく触りたい気分に駆られる、そんな衝動もしょうがないかもしれない。
もし、その耳をコンプレックスとする獣人がいたら申し訳ない、だが怒らないでいてくれると嬉しい。もしくは罪滅ぼしとして僕の耳ならいくらでも触っていいし、好きなことを言ってくれて構わない。
そうやってじっと町を日が沈むまで眺めて、夕食が運ばれてくるまで窓際に立っていた。
メニューは、鳥にチーズをのせて焼いたもの。料理名は特に言われなかった気がするが、もしかしたら聞き逃したのかもしれない。ちなみにフォークのみだったので少々食いちぎるのが大変だった。
柔らかい鳥肉に濃厚なチーズが絡まり、ボリューミーであったがぺろりと平らげてしまった。大変美味しかったので、もしまたこの町を訪れることがあれば是非食べておきたい料理になった。魔法を教える対価に、とはいえこんなにいい待遇を受けていいのか少し不安になってしまうほどの味である。
これは失敗できないな、そう思いイメージトレーニングをしながら一日を終えた。
……ちなみに猫獣人の町に行こうと考えている人がいるならば、耳栓を持ってくることをお勧めする。彼らは暗くなってきてからが本番らしい。