複雑・ファジー小説
- Re: エデン ( No.2 )
- 日時: 2018/01/05 23:06
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: Uj9lR0Ik)
1 TOKYO BLACK HOLE
朝から釈然としない天気が続いていたが、とうとう雨が降り出したようだ。外から聞こえるぱらぱら、という音で、私は我に返る。まとわりつくような線香の匂いが、悪夢みたいな現実を嫌というほど突きつけてくるようで、黒い縁取り写真の中で笑っている彼女から目をそらした。
仕事仲間が自殺した。仕事仲間と言うととても他人のようだけれど、いちおう、同じアイドルグループのメンバーとして活動してきた間柄だった。彼女、園宮アリサはグループでも中心的な人物で、仲間内でも外でも明るく社交的な性格であったので、いきなり命を絶ってしまったことについて、私も他のメンバーも、おそらくはこの会場にいる彼女を知るすべての人間が、知らせを聞いて悲しみより先に疑問がこみ上げてきたことだろうと思う。もっとも、直後見つかったアリサの遺書に全ての事情が記してあり、生まれた疑問はすぐに怒りや救ってやれなかった虚無感に変わったのだけれども、そこに書いてあった出来事は同じ仕事に従じていた私ですら知らなかったことが多く、またマスコミにも大きく報道され、たやすく言及することは、今の段階ではできずにいる。まあ、簡単に言ってしまえばアリサは枕営業をして仕事を得ていて、最初は沢山メディアに出れることを喜んでいたが、いつしか夢見ていたアイドルと自分にはっきりとした断絶を感じるようになり、挫折し、死んでしまったわけだった。
遺書を見たとき、妙に納得してしまった。最近やたらと仕事が流れ込んでくると思ったらこれだ。残されたほかの三人のメンバーも、なにかを察していたような顔でうつむいていた。
アイドルなんて命を投げ捨ててまでやるものではないだろう、死んだら元も子もないだろう、と直後は思っていたが、アリサにとってこの仕事が生き甲斐であることは、一緒に活動をしてきた私もわかっていた。そして、彼女のような一流のアイドルは、自分自身に価値を見出せなくなった瞬間に、終わる。比喩ではなく、自分の魅力もわからないやつが客に己を売りこめるわけがないのだ。今となっては遅いが、せめてメンバーに相談してくれればなんとかなったかもしれないとも思う。しかし私たちのグループは間違っても仲が良いとは言えなかったし、プライベートで連絡を取り合うということもほとんどなかったので、こんな事実を招いたのも仕方がなかったのだろう。遺族には冷たい目で見られ、私たちは一年半も共に苦楽を共にしたメンバーだというのに、会場の隅に座らせられてしまい、今も居場所のなさをひしひしと感じている。なんでメンバーのお前たちが助けてやらなかったんだとでも言いたげに、アリサの親族や友達が通りすがりにこっちを見てくる。知らなかったからどうしようもなかったです、私たちはテレビや週刊誌で報道されている通りの汚いアイドルグループで、それに加えて不仲なんです、と言ってしまえば、どうなるんだろう。遺影の前で泣き崩れる、アリサが通っていた高校の制服を着た女子を見て、さすがにそんな馬鹿げたことを言う気にはなかったけれど、線香の香りで思考がふらふらしてきた。変なことを言いださないように、唇を結んで悲しい顔を作った。そんな演技をする自分が嫌だった。享年十七歳、アイドルであり、一人の女の子である彼女は、その生涯を自分で終わらせてしまった。
「これから私たち、どうなるんだろうね」
タクシーに乗り込み、会場を出てしばらく住宅街を走っていた。澱んだ不透明の空から降る雨が窓を叩く。鞄ひとつ挟んで隣に座っている、喪服姿の星野純華が、何気なくその言葉を放った。それは本当に昨日見たテレビの話でも切り出すような口ぶりで、私は、まったくこいつは、少しは悲しいふりをしろよ等と思うのだが、大して仲良くもない、同じステージで歌って踊っていただけの人間がいなくなったところで、星野はあまり気にしていないようだった。私もうまく悲しみに浸れずにいた。先週まで共に打ち合わせをしたりレッスンを受けたりした人間が、急にもういませんよ、と言われても現実味が無いし、しかもそのきっかけを、同じ分仕事をこなしていた私たちですら知らなかったのだ。ちょうど最近、アリサのおかげか私たちはメディア露出が増え、歌番組やバラエティ番組に出始めた頃だったため、売り出し中のアイドルが枕営業を苦に自殺という情報にマスコミは水を得た魚のように食いついてきた。この会場を出るときにも何台ものカメラに囲まれた。枕営業があったのは本当でしょうかと群がる人間たちをかわして、やっとタクシーに乗りこんだ時には、私たちは肉体的にも精神的にも疲れ果てていた。
これからどうなるんだろうねと、星野の言葉を頭の中で反芻して考えてみる。詳しくは今後話し合うのだろうけれど、もう答えは出ているようなものだ。どうあがいたところで、私たち、Mysherryは解散だ。上の人間に体を差し出して仕事を得ていた上に、死人が出たアイドルグループが、これから活動ができるわけがない。
思い返せば、初期のころはアリサやマネージャーに唆されて、五人でご飯を食べに行ったりカラオケをしたりしてお互いに歩み寄ろうとしていたが、一年半経った今となっては、メンバーの自殺を止められなかったほどに私たちの結束力は低かった。人前に出たりSNSを発信したりするときこそ仲良さげに振舞うものの、ひとたび楽屋に戻れば会話はないし、所詮私たちは仕事仲間なのだから、仲良くする必要性を感じないとすら思っていた。もともと人と話すのが得意で友達も沢山いたアリサだけは最後まで私たちを仲良くさせようと奮闘していたが、今となっては後の祭りである。
しかし、アイドルを精一杯やりたいという気持ちは全員に共通していた。互いに関心がないようなグループにもかかわらず、アリサが死んでしまうまでは特に大きな事件もなくやってこれたのはたぶん、そのおかげだ。私だって私なりに頑張ってやってきたし、こんなところで終わるのは嫌だ。これから沢山、ステージに立っていくつもりだったのに、こんな終わりなんて締まらない。隣の星野が何を思っているかは、わからないけれど、少なくとも私はここでおしまいにしたくはなかった。今となってはもう居ないアリサのためにできることがまだある気がした。仲の良い友達としてではなく、仕事仲間と言う意味での話だけれど、自分が成し遂げるはずであった仕事をせめて全うしてやるのが、Mysherryのメンバーとしての償いなのかもしれないと、ここ三日ほど考えて思った。
「解散、なんだろうけどさあー、あっけないよね、もう歌番組とか出れないんだろうねー」
間延びした声で星野は言う。私は変わらず、窓の向こうを見つめている。
星野純華はもともと、アイドル活動に対して真摯ではなかった。私たちが拠点とする恵比寿の劇場の支配人の姪で、その整ったルックスを見かねてもともと四人だったMysherryのメンバーとして加入させたのだ。一応、オーディションを勝ち抜いて、歌やダンスのレッスンに取り組んでいた私たちは、初めて新メンバーとして紹介された星野純華の外見の整いように、軽い絶望感さえ覚えた。けれどこの星野という女は歌も歌えなければダンスもできず、さらには毎日打ち合わせやレッスンに三時間以上の遅刻をしてくるというダメっぷりを発揮してきたので、私たちはいつしか星野がとても形の綺麗な女の子ということも忘れていたし、良くも悪くも一メンバーとして扱うようになった。
当初はアイドルというそのものを「馬鹿な大人から金を搾取するくだらない商売」と切り捨てた星野が、今やこんな惜しむようなことを言うのだから、私たちの一年半は、少なくとも無駄ではなかった。それなのに、これからの未来を、当事者の私たちが知らないところでぱったりと絶たれてしまった。タクシーから流れる景色を見ていた。雨に濡れる窓越しに反射して写る星野は、ただ無表情だった。
- Re: エデン ( No.3 )
- 日時: 2018/01/05 23:12
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: Uj9lR0Ik)
タクシーは右折し、入り組んだ路地を淡々と進んでいく。
いつも私たちは移動中は音楽を聴いたりスマホを見たりしながら過ごしているが、今日だけは私も星野も、何もせず窓の向こうを眺めていた。私と星野以外のメンバー、静穂とひなせを乗せたタクシーでも、きっと同じ空気が漂っているのだろう。
悪い夢なら覚めてくれと思っている。残された、Mysherryに命を懸けていた四人はどうなるんだ。身勝手すぎないかと、自棄になりそうになっている。何度も言う通り私たちはメンバー間で友情を共有することはなかったが、それでもいきなり訪れた、身近な人間の死だ。
とつぜん、星野は私にこう切り出した。
「天瀬はこのまま解散でいいと思う?」
「あたしに決められることじゃあないでしょ」
「私は絶対嫌。こんなダサい終わり方、絶対したくない……」
雨はとうとう土砂降りになり、星野の声は微かにしか聞こえない。叩きつけられた雨粒でどろどろになった窓に反射して写る、薄い唇を思い切り噛んで悔しそうにしているその姿に驚く。
感情をむき出しにした表情をする女の子は素敵だと思う。素直に笑ったり泣いたりする少女たちを、私は沢山見てきた。私も同業者の少女たちもみな、完璧な女の子になる、もしくはそれを演じることが仕事であり宿命。前髪をミリ単位で整えたり、まつげを上げたり、ピンクのグロスを塗ったり、少し高いヒールを履いたりして、私たちは理想の少女になってステージに上がるけれど、その袖でスポットライトを浴びることができず、泣いている女子も数えきれないほど見てきた。
星野は本当に綺麗だ。何をしても様になる。いつもは緩く巻いている長い黒髪も今日は伸ばしっぱなしで、化粧もしていなくて、その簡素さが彼女が今は表舞台に立つアイドルではないことを証明しているのだけれど、それでも見とれてしまうほど綺麗だった。
私はやっぱりアイドルが好きだ。辞めたくない。星野やほかのメンバーの終わりも見たくはない。ただ、それを口にすることはできなかった。私たち二人がアイドルを続けたいと泣きついたところで、判断を下すのは上の人間だし、そいつらが出した結論はもう決まっているようなものだ。年齢的な意味では私は星野の先輩にあたる。星野は確か十六歳だから三つも年上だ。だから、私が大人になるしかない。
諦めたくないと喚く子供に、諦めなければいけないと告げるのは辛い。こっちだってこうなりたくてこうなったんじゃないし、アイドル活動に対して不真面目であった星野がこんなことを言ってくれるのは、単純にうれしいことだ。どんな言葉を発するか迷った末、タイミングを完全に逃し、私はとうとうなんにも言えなかった。つくづく、弱い人間だなぁと思う。タクシーは恵比寿の事務所に到着し、刺すような雨が降る中、私は憂鬱な気持ちで傘を手にした。
お疲れさまと挨拶をして、喪服姿のマネージャーとメンバーと別れた。疲れ果てて、事務所の階段を上ることもできなかったので、タクシーを降りてすぐ解散した。星野はさっきまでとは打って変わって完全な無表情で、静穂とひなせは泣いていたのか、目が腫れていた。私がどんな顔をしていたかはわからない。マネージャーは明らかに私たちにかける言葉に迷っており、ざあざあと雨の降る音だけが耳に残っている。
静穂とひなせは家の人が車で迎えに来ており、すぐに帰ることができたみたいで、星野も早々に別のタクシーを呼び駅のほうへ向かってしまったから、私はひとり取り残された。Mysherryの人間は良くも悪くも好き勝手に生きているため、私がひとりでいても、マネージャーは気にも留めなかったし、忙しそうに電話をかけたり折り返したりしているのを見る限り、私にかまっている暇などないようであった。
しばらく私はその場にいたが、雨が止むまでは近くのカフェにいることにした。Mysherryが変に有名になってしまったさなか、喪服姿の天瀬乙葉を目撃されようものならマスコミが飛びついてきそうなものだが、たいていそういうものは星野へ行く。私は少し変装していればまったく気づかれないほどオーラもないし、顔を覚えられてもいない。選んだ場所は、雨をしのぐ人たちで込み合っている大衆チェーン店。どうせ私だなんてばれやしないだろう、という気持ちで、私のためにわざわざ開いてくれる自動ドアを通り抜けた。
- Re: もうきっと、世界の誰もが夢中だ ( No.4 )
- 日時: 2018/01/15 18:44
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: uDks5pC4)
ホットコーヒーだけを注文し、それなりに混んでいる店の一角に座っている。すぐそこに事務所があるというのに、誰も私には気づかない。グループ一番人気である星野純華との格の違いを感じながら、私は、幸か不幸か、ここで一利用客として溶け込むことが出来ていた。
ベージュ色のジャケットのボタンを閉めてしまえば喪服を着ていることなどわからず、周りが気づく気配は今のところまったくない。ハエのように集ってくるマスコミを恐れ、なんとか帰宅手段を得た他のメンバーとは違って、天瀬乙葉は、恵比寿の駅前にある大衆チェーン店でコーヒーを飲んでいても、バレない。悲しきかな、私はグループ内で一番地味なんだ。アリサみたいに歌が上手いでもないし、ひなせみたいに難しいダンスができるわけでもないし、頭の良い静穂みたいにクイズ番組に呼ばれることもないし、星野のような整ったルックスは持っていない。私はいつでもなんでも五人中三番目。器用貧乏と言えばまだマシで、はっきり言って私は、何も魅力のないつまらない人間だ。そのつまらない人間をここまで引っ張りあげてくれたメンバーやスタッフには感謝しなければならないのだが、それも今となっては本末転倒だろう。
外はまだ雨が降り続けている。
コーヒーには砂糖とミルクを入れないと飲めない。まだ大人にはなりたくないからだ。テーブルの上に転がっている容器たちを冷めた目で見下ろして、なんだか、今の私たちみたいだと思う。甘い部分だけ搾り取るだけ取って、役目を終えてゴミになる。バカみたいだな、何やってたんだろうな、私たちは。やるせない。やってられない。気づかないうちに私は泣いていたらしく、ぽたぽたと雫が落ちていく。いや、私が泣いてどうすんだ、本当に泣きたいのはアリサとその身内だろうに。なんの相談もしてくれなかったということは、アリサは、私たちのことなんか、諦めていたのだろうな。もう少しお互いに歩み寄るべきだったな。「もしあの時ああしていたら」を考えると、きりがなくて、こんなに泣いたら周りに怪しまれるのに、視界はずっと歪みっぱなしだ。友達ではないから、と突き放してきたメンバーを、せめて仕事仲間としてもっと思いやるべきだった。私はなんにもできないのだから、せめて、グループがもっと活動しやすいように仲を取り持ったり、するべきだったのだ。もう遅いか、もう駄目なのか。涙は止まらず、未だ俯いたまま、テーブルに落ちる水滴を見ていた。直後、上から声が降ってきた。
「天瀬乙葉さんですか?」
やばい、見つかった。
何とかして、逃げないといけない。ていうかまず、この泣いてボロボロになった顔をなんとかしないといけない。慌てて鞄からティッシュを取り出す間際、テーブルの横に立っていた声の主と目が合った。
「あっ、桐山さん……」
席を立とうとした手を止める。何度か現場で会った事のある人だった。大きな帽子を被って、全身を黒に包んだ彼は、明らかに変装をしている芸能人って感じで、周りの人間とは、纏っているオーラさえ違うように感じた。なんで彼がこんなところに、とは今更言えないだろう、天瀬乙葉だってここに居るのだから。
桐山さんは、今流行っているtoxicというロックバンドの、確かベースを弾いている人だ。基本的に情報が回るのが遅い私でさえも名前を知っているし、星野純華も好んで彼らの音楽を聴いている。toxicのラジオにMysherryが呼ばれた時、星野は今までで一番というほど喜んでいた。なんでもメンバーが全員私たちとあまり歳が変わらないほど若くてかっこいいらしくて、また星野は異性関連のスキャンダルを起こす気かと思ったものだ。桐山さんは、特にビジュアル面での人気が高くて、高身長に、黒髪に、憂いを帯びたような、とても整った顔立ちと、まあ最近の若者がこぞって好みそうなルックスを持つ人で、星野も桐山さんと一緒に仕事が出来ることを何よりも喜んでいた。
これだけ見た目にも恵まれていてバンドも軌道に乗ってきているのに、天瀬乙葉を覚えていてくれるなんて、いい人なんだな。
この場から逃げなくてよくなったのは幸いだけれど、私はまったくいい人ではないので、いい人という生き物は苦手である。作り笑いを浮かべて、お疲れ様です、と言った。さっきまで泣いていたから、たぶん私は今相当ひどい顔をしているのだけれど、桐山さんは柔らかく笑って、お疲れ様、と返してくれた。やっぱりすごくいい人だ。
「大変だったね、Mysherry」
「たぶん、辛いのはこれからですよ。
どうなるのか、まだ全然わからないけど……」
だめだ、全然笑えない。事務会話くらい、できるようになるべきなのに、次何を言っていいのか分からないし、なんだか頭が回らなくて、ふらふらする。言葉を探そうとして考え込んでしまう私に、桐山さんは優しく笑いかける。
「まあ、天瀬さんたちは、今はゆっくり休んだ方が良いよ」
私は、アイドル辞めたくない。そう言おうとしたけれど、言えなかった。素っ頓狂なことを言うんだな、と思われたくないからだ。死人まで出しておいて、まだ活動を続けたいなどと思っていいはずがない。桐山さんの言うとおり、私たちは今、休むべきなのだ。
だけれども、休んでいる間にも、私達は年を重ねていく。だんだん、少女ではなくなっていく。アイドルでいれる期間なんてほんの刹那だ、一秒も無駄にしたくはない。まだ表彰台に立ちたい。ステージいっぱいの光を浴びて、誰かの完璧な偶像でいたい。
「もう遅いよなぁ……」
なんだかとても、具合が悪い。私は疲れていたのだろうか。疲れているんだろうな。ここ三日くらい、アリサが首を吊って、マスコミが押しかけてきて、大変だったから。桐山さんの声が、遠くで聞こえる。大丈夫かと、私に問うている。ほっといてくれ、もう遅いんだから。
ふわふわと視界が曇っていき、そして真っ白になる。最後に掠めたのは飲みかけのコーヒーの香りと、周りの喧騒の声で、そしてそのまま、私は意識を手放してしまった。
- Re: もうきっと、世界の誰もが夢中だ ( No.5 )
- 日時: 2018/01/17 23:55
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: uDks5pC4)
「天瀬さん、天瀬さんってば」
肩をゆすられて、目を覚ました。椅子の背もたれに寄りかかったまま、私は気を失っていたらしい。心配そうな顔をした桐山さんが、目の前にいる。
意識が急激に浮上し、すぐに桐山さんに謝ろうとして、周りの異変に気がついた。
あれって天瀬乙葉じゃないか、と声が聞こえてくる。マイシェリー、園宮アリサは気の毒だったよなあ。ざわつく店内で、店員すらこっちを好奇の目で見て、何かを話している。背筋が一瞬で凍るのを感じた。やっぱり、駅前のチェーン店なんか利用しなきゃよかった。
「天瀬さん、立てる? すぐ近くに、僕の車あるからさ。とにかくここから出よう」
桐山さんは目深に被っていた、大きめの帽子を外し、私の頭にぽんと乗せる。そんな事をしたら桐山さんが危ないじゃないかと思ったが、どちらかというと天瀬乙葉の方が、この時期に見つかるとまずい。桐山さんの手を借りて立ち上がり、テーブルにコーヒーを残したまま、出入口の方へ歩いていく。帽子のサイズが大きいせいか、周りの声は、もうほとんどなにも聞こえなかった。ちらりと見えたガラス張りの窓に映る私は、泣いていたせいか、酷い顔をしていた。こんな顔をしてたって、周りは私だってわかっちゃうのか。
店の外に出て、裏路地に入ると、桐山さんは私の腕を引いてくれた。いくら私がさっき倒れかけたとはいえ、アイドルという職業の女が男子に引っ張られて歩いているという状況は良くないのだが、周りには誰もいなかったし、やめてくれとも言えなかった。仕事以外でこういうことをするのも初めてだったし、疲れているから、今は、私に優しくしてくれるんならなんだって、誰だって許してしまいそうだ。
「桐山さん、ごめんなさい、迷惑かけて」
「いや、僕の方こそ、疲れてる時にごめんね」
でも、知り合いの女の子が泣いてたら、誰だって放っておけないと思うんだよね、と桐山さんは笑って言った。
知り合いっていうか、仕事仲間なんだけどな。私にとって彼は、星野やアリサと同じくくりの人間だ。もしプライベートの時偶然見つけても、見て見ぬふりをするかもしれない。私はそれが当たり前と思っていたが、桐山さんは、きちんと知り合いの女の子として、私のことを見てくれているらしい。
きっと、Toxicは、私たちの何倍もメンバー仲がいいんだろうな。
「ほんと、いきなり声かけたりしてごめんね。せっかくのプライベートなのに」
「いえいえ、これからもう、帰るだけなんで」
またいつ降り出すかわかりませんしね、と私は言う。自分で言って気がついたのだが、すっかり雨が止んでいた。さっきまであんなに降っていたのが、すっかりと止んでいる。相変わらず空は鈍色のまんまだったが、向こう側からは光が差し込んでいた。
「帰るだけなんだ、それなら送っていこうか? 車もあるし、体調も悪そうだし」
「悪いですよ、うち、横須賀だし」
「いいよいいよ、どうせ、川崎までは行かなくちゃダメなんだよね。天瀬さんがあれなら、せめて川崎まででも送らせてよ」
「川崎? お仕事ですか?」
「いや、うちのお子様の送り届けがあるからね」
桐山さんはなんだか楽しそうに言いながら、車のキーを指で回して遊び、駐車場へ向かう角を曲がる。角に停めてあった黒い車、車について何も詳しくない私は、これはきっと軽自動車ではないだろう、と簡単な仮説を立てるが、どうやらこれが桐山さんのものらしい。誰かが乗っているのか、中からは大きめの音量で八十年代くらいのハードロックが流れており、当然私は男の人の所有している車に乗るのは初めてなので、少し身構えてしまうな、と思った瞬間、後部座席の窓がゆっくり開く。
「だれがお子様だよ」
開いた窓の向こう、居た彼は、その大きな瞳を光らせて、桐山さんと、そのついでに隣の私を見る。
日頃からぼーっとしていると言われることが多い私が、やっと我に返った時には、桐山さんが手に取っていた私の左手をすとんと放し、
「ほんとうに、耳がいいんだね」
と感心していた。
窓の向こうの彼の名を私は知っている。まあ、一緒にお仕事をした経験があるというのもあるけれど、Toxicの、ギターボーカルの折原さんである。
苦手な人にばかり会ってしまっているなと思っていた。いい人である桐山さんが苦手だ、ギターボーカルなんかやって、ステージの一番目立つ位置にいる折原さんや、似た立場の星野が苦手だ。いつからか、私は好きなものより嫌いなものの方が多い気がして、劣等感ばかり募っていたのだけれども、この彼との出会いも、私のそれを更に強くするだけであるんだろうな、と思った。
「ったく、ふりっちゃんはいつも寄り道ばっかして来るのが遅いんだよ。おかげで二曲か三曲書きあがりそうだったよ」
「はいはい、目的の品は買っておいたから、窓しめて、あとゴミも捨てて」
ふりっちゃん、と呼ばれた桐山さんが、慣れた手つきでドアの鍵を開ける。今のやりとりで、折原さんがわがままを言って、桐山さんがそれを受け流しつつもスマートに対応する、という構図が、このバンドの関係についてなんにも知らない素人の私にも見えた。桐山さんは、とても常識のある人だけれども、折原さんはなんだか、周りから天才だとか呼ばれているだけあって、変わっているというか、自分が決めたことはどんな手段でも通してしまうような、生まれた時から人生うまくいっているんだろうなっていう、月並みな感想を私に持たせるのであった。
「となり、席空けといてね。今日は、この方も一緒に乗るから」
「どうも、お疲れ様です」
「あぁ、久しぶり、マイシェリーの、えっと……」
折原さんは、桐山さんの横におまけのように立っていた私を見る。茶色がかった、とても綺麗な目の色だ。最近のアイドルはみんなカラコンなどを入れたがるから、仕事柄、こんな人を見るのは逆に珍しい。なんだか私が必死で色々取り繕っているのを見透かされているようで、ついに目をそらそうとしたとき、彼は私にこう言った。
「……誰だっけ?」
□
あんな言い方をしなくてもいいのに、と思った。私はとても不機嫌なまま、桐山さんの運転する車の後部座席に乗っている。天瀬乙葉の知名度なんて、星野やアリサに比べたらまあ当たり前に劣るが、なにも、一緒に仕事をした人間を、目の前で覚えていないと一蹴する必要なんてないではないか。社交辞令というものを、全く知らないままで、よくここまでやってこれたなぁと、心底思っている。
さっきあんな言い方をされたので、私はMysherryの天瀬乙葉です、とわざと丁寧に挨拶をした。しかし、この折原という男は、ああ、天瀬さんね、っていかにも知らない人のように受け止めるので、これは一生、特に、女の気持ちなどわからない生き物なんだなと悟る。彼はこれが平常運転のようで、桐山さんも、特に何にも突っ込みを入れることなく、車に乗りこんでしまった。
「最近アイドルの勢いがすごいからさぁ、特に目立つMysherryのことは顔と名前くらいは一致させるようにはしてたんだけど、一昨日園宮さんが亡くなってからは、世間はすっかり彼女だけ見てるよね」
車は恵比寿を抜けて、23区外方面に走り出す。高速道路に乗ると、一気にスピードも外観も変わって、高いところからのぞむ東京の景色が綺麗に写っている。もう雨など、どこにも降っていないようだった。
「人の死って、エンターテインメントじゃあないんですけどね」
「そういう職業だろ、俺達だって天瀬さん達だって、傍目の一般人からしたらエンターテインメントでしかないんだからさぁ」
一緒に仕事をしたことは覚えていてくれたらしい、折原さんは、Mysherryの仲があまり良くないことを知っているのか、それともただの無神経か、平気でアリサの話を振ってくる。私は私なりに、傷ついたり悲しんだりはしているので、そんな言い方をされたことに腹は立ったが、それよりも桐山さんの運転が意外に荒いことが、今は気になって仕方ない。高速に入ってからは気持ちよさそうに走っているものの、さっきまでは対向車を煽ったり、マナーの悪い車に舌打ちをしたりと、桐山さんのいい人というイメージを若干崩しつつある場面がいくつか見受けられた。
折原さんは、この運転には慣れているのか、私の不安や怒りをよそに、楽しそうにスマホのゲームアプリをいじっている。男の子の部屋とはこういうものなのだろうか、座席に散らかる無数のメモと開けたままのお菓子の袋、さらに助手席に積もる漫画本なんかをまじまじと見ていると、桐山さんは、僕は綺麗好きなんだけどね、カナタが持ち込むんだ、人の車だから好きにしていいと思ってさ、と笑った。
桐山さんは、折原さんのことを下の名前で、カナタと呼んでいるらしい。散らかった車内を見ながら、私はさっきまで乗っていたタクシーのことを思い出していた。重苦しい雰囲気、喪服、鉛色の空、土砂降りの雨、悔しそうな星野。今はもうその全てが無くて、未だにハードロックが流れている車内と、たぶん仲がいいんであろう、Toxicのふたり。私は星野を星野と呼ぶし、星野は私を天瀬と呼ぶ。
Mysherryって、本当に全然、仲良くないんだな。
今日、いや、最近は反省することがあまりにも多い。アリサを救えなかったのも、仕方ないなんて諦めているんじゃ、現状はなにもよくならない。
- Re: もうきっと、世界の誰もが夢中だ ( No.6 )
- 日時: 2018/02/23 01:23
- 名前: 三森電池 ◆IvIoGk3xD6 (ID: QxkFlg5H)
桐山さんは時々私の体調を確認しながら、車を飛ばしていく。私はそのすべてに、大丈夫です、と答える。このやり取りが、まるで機械的に感じられた。車に乗って三十分も経つとすやすやと寝息をたて始めた折原さんをよそに、私はそんな種類のよくない居心地の悪さを感じはじめていた。
仕事で知り合っただけの、知らない人の車になんて乗るべきではなかったと今更思い知る。桐山さんは、社会的な面でとても接しやすく楽な人であるからこそ、こうやってプライベートの領域にやすやすと入り込むのは避けたかった。誰だって、一定の距離を置くから付き合いやすいし、それを無視して踏み込んだり踏み込まれたりすると、面倒だと思うのだ。
私はテリトリーを荒らされることが嫌いだ。同時に、誰のテリトリーも一切荒らしたくはない。つまり、人間と、深く付き合うという行為が、とてつもなく苦手なのだ。こうやって桐山さんの車に乗っているのが、私じゃなくて星野とかアリサとかだったりしたら、もっと楽しい時間を提供できたのではないか。つまらない人間だと思われることに対して、恐怖心は少しはあるが、だからと言って自分から話題をぽんぽん出せるほど頭も良くない。へらへらと笑っているのは、カメラの前だけでいいとさえ思う。
折原さんが眠っているのを確認すると、桐山さんは流れていた音楽の音量を小さくした。ごめんね、うるさくして、と言う桐山さんに、私は今日十度目くらいの大丈夫です、を返した。
「暖房、これくらいでいい?」
「はい、大丈夫です」
「川崎まで結構かかりそうだけど、いい?」
「大丈夫です」
「うちの折原が無神経な事言ってごめんね」
「……大丈夫です」
困ったな、本当に私、機械じゃないか。
高校に通っていた頃、やたらと私のことを気にかけてくる教師と、こんなやりとりを何度もしたことを思い出す。横浜の女子校に通っていた私は、最終的には卒業したものの、仕事の関係で遅刻早退を繰り返し、友達も一人もいなかった。そんな私に、若い世界史担当の円谷という男が、最後まで良くしてくれた。ろくに出ていなかった授業の単位を、なんとか願い入れて仕立ててもらい、ちゃんと三年で高校を卒業できたのだ。
懐かしいな、一年前か。私は高校生の時から、何も変わっていないんだな。当時から私は変にプライドが高くて、誰も寄り付いてこないのは私がアイドルだから、なんて勝手な決め付けをしていたけれど、クラスの女子たちが、なんであれが、星野純華の方が、と陰で話しているのを、何度か聞いてしまったことがある。
「あぁ、嫌なこと思い出したなぁ」
私ではなく折原さんが、隣で背伸びをする。まさかと思い横を見る。今無意識に言葉を発してしまったのは、私じゃなくて折原さんだ。
「ふりっちゃん、そういや明日朝早いじゃん、嫌だなぁ」
あだ名を呼ばれて桐山さんは、少し振り返って、ああ、起きたんだ、と返した。
ちょうど私も嫌なことを思い出していたところだが、この男と、こんなくだらない事で共鳴したくはなかった。明日の朝が早いという話と、私の暗い青春時代の話では重みというものが全く違うのだ。
「早いって言ったって、十時じゃん」
「十時なんて、なんならあたし達はお昼ご飯食べはじめますよ、スケジュールによっては」
「十時は早朝だよ。俺は夜中、勝手に寝落ちるまで起きてるから、睡眠は時に夕方まで必要なんだよ」
折原さんに音楽の才能があってよかったなあ、多分この人普通に社会に出てたら生きていけないよなあ。心の中で悪態をつきながら、桐山さんも同じようなことを口にした。彼に対する客観的な意見は、大方どこでも一緒らしいことが伺えた。
トンネルを抜けると、高い道路から多摩川が一望できた。さっきまであんなに降っていたのにもう、ため息が出るほど晴れている。アリサのことも、今の私の気持ちも、もう忘れて元気になれという暗示のようで、なんだか嫌になって目を逸らした。私たちを置いて勝手に天国に行ってしまったアリサに、猜疑心さえ覚えてしまうのは、よくないことであると知っていながらも、まだそれをやめることはできずにいる。葬式が終わって解散するまでのの暗い雰囲気を思い出しながら、ゆううつになって、今度こそ本気でため息が出そうになった時、折原さんがこう切り出した。
「Mysherryってさ」
「はい」
「仲悪いでしょ」
「えっ?」
素っ頓狂な私の声の後、何秒か沈黙が続く。よくもまあ歯に着せない物言いをする人だなあ、と逆に感心してしまう。
ぶっちゃけ、噂好きな別グループのメンバーにも、ここまで切り込まれたことはない。番組で共演した時、やたらとメンバー内の距離感があるMysherryを、やんわりと指摘する声は何度か聞いたことはあるが、マスコミ以外に、Mysherryの仲を明確に指摘されるのは、たぶんこれが最初で最後だ。
「まあ、仕事仲間だし」
「随分と他人行儀だね」
「所詮こんなものですよ、アイドルなんて」
アリサがやってるんなら、きっと別のグループの女の子も枕営業してるだろうし、私達は自殺を止めてやれなかったほど結束は薄いし。そこまで呟くように言うと、折原さんは、なぜか嬉しげな声のトーンで、アイドルって全然、夢とか希望とかないんだね、と返した。今話題の売れっ子バンドToxicと、あとは堕ちるのみの私たちじゃあ、まったく違うのだ。
「へえ、天瀬さんってさ、アイドルなのに馬鹿真面目に現実見てるよね。前から思ってたんだ、舞台に五人で立ってても、一人だけつまんなそうな顔して、振られた仕事だけこなしてるって感じがして」
「それはどうも。あたしの顔も名前も、覚えてなかったのに」
「違うんだよ、その逆。他の四人は顔と名前が一致してるのに、天瀬さんだけ最後までわかんなかったんだ」
「それは、あたしが……」
「天瀬さんが一番、その辺にいそうな女の子だから」
馬鹿にするのも大概にしてよね、あたしはアイドルで、天瀬乙葉だから、なんて痛いセリフを、気づいた時には口走っていた。
あまり人前で怒ったことはない。直後冷静な自分が戻ってきて、何恥ずかしい事言ってるんだ、と自責の念がこみ上げ、頭の奥が冷や冷やしてきた。それでも、私は、その辺にいる、ただの女の子ではいたくなかったのだ。この無神経極まりない男の前でも、私はアイドルでいたい。つまんないプライドだ。わかっている、舞台の上で私がつまらなそうな顔をしていたのではなく、周りの女の子たちが輝きすぎているということも。私がただの女の子であるということは、私が一番知っている。
高校の同級生が、星野純華の方が、園宮アリサの方が、と私に聞こえるように、わざと言ってきたことを思い出す。ああ、もうだめだ、泣きそうだ。ふいに、今日のこととか、これからのこととか、考えて勝手に辛くなっている。折原さんはきっと私のことも、Mysherryのことも考えていなくて、私は今弱っているから、そんなこと、どうでもいいと分かっていても辛いのだ。
「天瀬さん、俺に曲書かせてよ」
「え……?」
「俺らも人間相手にやってるから、かっこいい曲を日々作り続けなくちゃいけない。俺ら、いつの間にかかなり有名になっちゃってね、だんだん擦れてきてるような気がして、だから、天瀬さんをモデルにして、曲を作りたいんだ」
要するに、私の素人っぽいオーラや、纏った負の感情を買って、こんなことを言っているのだろう。やっぱりこの人は滅茶苦茶だ。
「そういうのは事務所を通してから……」
「もちろん天瀬さんって事は公表しないよ。バンドマンなんて、駅前の通行人でさえ曲にするからね。一々モデルを明かしてらんないよ」
手をひらひらと振りながら、折原さんは言う。
私にとって利益のある話ではない。しかし、ここで断っても、彼は食い下がらないだろうと予想した。というか、この人が私に何か言われて従う図がまるで見えなかった。仕方なしに私は言う。
「それで、あたしは何をすればいいんですか」
「簡単だよ。日々思ったこととか、愚痴とか、俺に逐一報告してくれたらいい。もちろん、メールとかラインで送ってくれるだけでいいよ」
「なにそれ、あたし、日記とか続かない人間なんで。それに、アイドルが異性と親密にするのは良くないし」
「なにも親密にしようとなんかしてないよ。これはそれこそ仕事。心配しなくていい、俺は君の顔を覚えてなかった男だぞ」
「それはそうだけど」
そんな事で胸を張られても、と思ったし、実際に口に出した。なんだかこの人と居ると無神経が移る。元々私はとても大人しい人間なのに、誤解されてしまいそうで嫌だ。折原さんはそんな私を他所に、スマホの連絡先を差し出す。口角をあげて、にっこりと笑う。
「ここに送ってくれたらいいよ。よろしく、天瀬さん」
渋々、私もスマホを取り出した。
丁度、車は川崎駅に到着し、面白そうだから黙ってやりとりを見ていたと言う桐山さんに、やっぱりこの人も少しおかしいのではと思いながらも、お礼を言って、私は車を降りた。黒い車が、西口の方へ走っていく。一礼して、見えなくなるまで見送ると、どっと疲れが押し寄せて来た。なんだ、あの人たちは。今はとにかく家に帰って休みたい、鞄から変装用の帽子を取り出し身につける。
まあ、私が天瀬乙葉であることなんて、やっぱり誰にも気付かれないんだけど。