複雑・ファジー小説
- 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】 ( No.407 )
- 日時: 2021/02/07 18:31
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r9bFnsPr)
~あとがき~②
恒例のあとがき解説、他編での伏線などを含めた補足説明のパートになります!
とりあえず思い付いたことを書いていますが、あくまで作者目線の説明になりますので、もし他にも分からないこと、知りたいことがありましたら質問して頂ければと思います!
ミストリア編からサーフェリア編の下巻までの内容全てを含みますので、ネタバレが嫌って方は、あとがきは見ない方が良いかと思います。
よろしくお願いしますー!
†第三章†──人と獣の少女
第一話『籠鳥』
下巻はアーベリトに遷都した後からスタートです。
ヒロインのトワリスが出てくるところですね!
強風で倒壊した建物の下から見つかった半獣人の少女、トワリス。
彼女は残酷絵師であるオルタ・クレバスに使役されていた奴隷でした。
この残酷絵師という職業、実は日本の江戸時代後期に実際にあったものです。
痛め付けた人間の様子(囚人がモデルの場合が多かったようですが)や、戦場の様子を絵に描く絵師ですが、刺激的な作品を描くというので、結構人気があったみたいですね。
私、歴史は全然詳しくないので、専門的なことは何も語れないのですが、闇の系譜を書くにあたり、ちょいちょい国内外の史実を参考にさせて頂くことがあります。
で、トワリスの話を描く時は、奴隷の歴史に関して色々調べたんですけど、年頃の女の子の奴隷の扱いってまぁー……ひどいもんなんですよね(^-^;
リアリティは大事にしたいんですけど、ちょっとこれ描写すんのはな……って思う史実が多かったので、最終的に、トワリスは残酷絵のモデルにされてた、くらいで留めました。
割と認知されている文化だった、という意味では、別にオルタがやってたことは、犯罪ではなかったんですね。
奴隷制が廃止されているシュベルテとアーベリトでやらかしたので、連行されましたが、ハーフェルンで残酷絵を描き続けていれば、処罰されることなんてありませんでした。
さて、本編に戻りまして、逃げたトワリスを捕まえるとき、ルーフェンは悪魔フォルネウスを召喚しています。
フォルネウスの能力は、強制催眠、強制暗示ってところなのですが、ルーフェンは、トワリスの他にも、上巻にてノーラデュースでリオット族やオーラントさんにもこの術をかけています。
この設定も裏設定に過ぎないので、ちゃんと決めているわけではありませんが、一度強い暗示を受けると、その他の意識介入は受けづらくなります。
だから、サーフェリア編上巻の二章四話で、オーラントさんにはシルヴィアさんからの術が効きづらかったし、下巻にて、トワリスとハインツも、アーベリトをシルヴィアさんに襲われたとき、なんだかんだで逃れられたのかもしれません。
残酷絵師オルタ・クレバスの支配下から脱し、ルーフェン十五歳に助けられたトワリス十二歳。
うまく新しい環境に踏み出せないトワリスに対し、ルーフェンは「俺はこの国の、召喚師様だからね」と声をかけ安心させようとします。
この言葉、上巻であれだけ召喚師への就任を嫌がっていたルーフェンが言ったのかと思うと、感慨深いものがありますね(笑)
この言葉は、別に本心ではなく、あくまでトワリスを元気付けるためのものでしたが、全くの嘘というわけではありませんでした。
アーベリトの遷都を実現させ、サミルと一緒に過ごせたことは、ルーフェンにとって「召喚師の立場だったからこそできたこと」です。
上巻の二章三話、リオット族の話の時に、「いつか召喚師で良かったと思うことが来るんだろうか」とルーフェンがぼやいていたシーンがありますが、それは強いて言うならこの時期だったのかなと思います。
本来であれば、拾った奴隷を国王や召喚師が面倒見るなんてあり得ませんが
・トワリスが見つかったのが慈善活動に力を入れているアーベリトだった。
・トワリスはオルタに買い取られていたので、世間に見世物にされて話題になっているような状態ではなく、存在を隠しやすかった。
・見つけたのがルーフェン(権力者)だった。
・何より、半獣人。
以上のような理由から、トワリスはサミルさんとルーフェンの元でしばらく厄介になります。
流石ヒロイン、色々と運が良かったですね。
ちなみにトワリスのお母さんである獣人女性は、ミストリア編にてロージアン鉱山(ハイドットの廃液流してたとこ)で働いていたスレインという獣人です。
南大陸の獣人なので、原始的というか、都市部には進出していない貧しい獣人だったんだと思います。
彼女は鉱山で働いている内に、ハイドットの廃液が公害蔓延の原因であると知り、武具精錬の廃止を訴えますが、当時の宰相キリスの妨害によって、その訴えは召喚師(国王)リークスに届きません。
精錬継続(廃液流出続行)の命令が下り、身の危険を感じたスレインたちは、仲間の鉱夫たちと共に国外へ逃亡。命がけで海を渡り、サーフェリアに到着します。
(★この辺の前後関係、詳しい年表はサーフェリア編上巻に載せてます。更に詳細を知りたい方はミストリア編を読んでね)
サーフェリアの港湾都市、ハーフェルンに漂着したスレインらは、人間に見つかり捕獲され、奴隷として売り飛ばされます。
(★ハーフェルンでは奴隷産業が盛んで、その他違法な密売など色々横行してます。サーフェリア編上巻での王都争奪戦の際に、ハーフェルンの領主クラーク・マルカンは、その点をサミルさんに指摘されてますね)
過酷な環境で、運良く生き残ったのはスレインのみ。
女性だったのと、獣人が珍しかったので見世物にするために生かされていたのだと思いますが、その過程で彼女が人間との間に身籠ったのが、トワリスです。
ミストリア編の四章三話にて、トワリスは、このことに気づいてますね。
サーフェリア編の段階では、調べても母親の情報が集められず、悶々としていたトワリスですが、運命とは不思議なもので、売国奴扱いされてミストリアに単身乗り込んだ際に、ロージアン鉱山で母親の真実にたどり着きました。
第二話『憧憬』
トワリスのアーベリトでの生活が始まりました。
この時のトワリスにとって、ルーフェンは助けてくれた不思議なお兄ちゃん的存在です。
周囲から、召喚師であるルーフェンを持ち上げる言葉を聞いて(当時のアーベリト自体が王都になったことでテンションアゲアゲだった)、なんとなく「そんなすごい人なんだなぁ」くらいの認識をしていたんだと思います。
この時に、一通りの生活の仕方を家政婦のミュゼから、文字の書き方なんかをルーフェンに教えてもらって、トワリスは脱野生児を目指します(笑)
前回の一話でルーフェンに魔術を教えてもらうシーン、そして今回の二話で文字を教えてもらうシーンは、書きたかった場面の一つです。
ルーフェンからすると、トワリスは自分だけに懐いてるペットとか、妹みたいな存在でしたが、トワリスは色々教えてもらって、ルーフェンのことを意識するようなこともあったんじゃないかなと思います。
女の子は、年上のお兄さんに憧れちゃう時期ありますよね。そういう、人間らしさっていうんですかね……トワリスの年頃の女の子感を出したかった話でした!
文字を覚える過程で、サミルさんを訪ねてセントランスの人間がアーベリトにくる描写があります。
こちら後で関わってきますが、この頃からセントランスはアーベリトを敵認定してますね。
また、ダナおじいちゃんがトワリスにおすすめしていた絵本『創世伝記』、こちらも後々関わってくるものです。覚えておかなくても大丈夫ですが、このあとがき読んでくださった方はなんとなーく頭の隅に置いておいてください(笑)
この話では、サミルさんとルーフェンの間にある、ちょっとした溝が垣間見える場面もあります。
レーシアス邸に入り込んだ刺客をルーフェンがあっさり殺して、サミルさんとその他がびっくらポンするシーンですね。
サミルさんは、ルーフェンを少しでも召喚師という立場から解放してあげられるようにと、アーベリトを王都にして彼を引き取りました。
しかし、ルーフェンからすれば、居心地の良い場所を与えてくれたサミルたちのことは、どんな手段をとっても守りたいと考えていました。
実際、当時のアーベリトは王都として機能していくには不十分なところばかりで、サミルの考えでは甘いというルーフェンの危機感の高さは、正しかったように思います。
ただ、ルーフェンはルーフェンで、自分だけが頑張らなければという極端な思考に偏っていったので、そのあたりがまだ視野の狭い子供っぽかったのかなぁと。
まだ距離感が掴みきれていない、親子初心者同士のぶつかり合いだったんですね。
そんな二人をみて、トワリスは彼らの力になりたいと思うようになりますが、その頃に彼女の孤児院行きが決まってしまいました。
納得いかないトワリスですが、今度は情けではなく実力でレーシアス邸に置いてもらえるようにと、魔導師になることを決意します。
ここからトワリスの新たな人生がスタートする感じですね。
第三話『進展』
トワリスの孤児院生活が始まりました。
コミュ障&獣女ということで、全然馴染めてないですね(笑)
それでもいいやと吹っ切れて、魔導師になるために一人で黙々と勉強しているトワリスですが、なんやかんやあってリリアナという友達ができました。
リリアナは今後も出てきて、ミストリア編ではユーリッドとファフリを助けてくれる重要人物ですね。
いつも笑っているリリアナですが、本当は弟の前では明るく振る舞っていなければと空元気を見せがちな女の子でした。
そんな彼女の歩けない脚が治せないかと悩んでいる内に、トワリスは自分に合った魔術の使い方を編み出しますし、最終的にトワリスはリリアナの親族に引き取られて里親までゲットすることになります(笑)
彼女との出会いは、トワリスにとっても非常に大きなものでした。
ちなみに、リリアナの叔母のロクベルさんは、結構裕福な家の人です。
旦那さんが成功した商家の人間で、亡くなってからもロクベルさんに遺産を遺したので(ロクベルさんめちゃめちゃ性格良いから、夫婦仲も良かったに違いない)、余生は趣味程度にお店開いて過ごそうかなーって考えてました。
そこでリリアナとカイルが孤児になっていることを知り、引き取ることを決意。ついでにリリアナと仲良かったトワリスも貰い受けました。金持ちにしかできないことですね!
ロクベルを後見人としてマルシェの姓を借りたトワリスは、ダメ元で魔導師団の入団試験を受けてみます。
そこで待ち受けていたのは、上巻でも出てきたジークハルト・バーンズ十五歳。
新人魔導師代表で試験官として出てきたジークハルトですが、彼は当時から飛び抜けた秀才として注目を集めていました。
次話から、トワリスの魔導師としての生活が始まります!
- Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】 ( No.408 )
- 日時: 2021/02/08 21:53
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r9bFnsPr)
〜あとがき〜③
†第四章†──理に触れる者
第一話『禁忌』
獣人混じり故の身体能力の高さが奏功し、なんと実技試験で首席合格しら魔導師団に入団できたトワリス。
魔術に関しては独学なので、筆記試験の成績はギリギリだったものの、持ち前の直向きさで努力して五年。
そこそこの成績上位の訓練生として、トワリスはいよいよ正規の魔導師になるため、卒業試験を受けることになります。
彼女が試験のために組むことになったのが、入団試験の筆記首席合格者サイ・ロザリエスと、トワリスともう一人だけの女魔導師アレクシア・ファオール。
どちらも今後出てくる重要人物です。
些細な伏線なんですが、トワリスとサイが初めて出会った時のシーンで、サイは、やたらとアーベリトのこととかトワリスの出自とかに詳しいんですよね。
トワリスは半獣人ということもあって有名人なので、調べれば分かることではあるんですが、それにしたって、トワリスは何も言っていないのにサイくん語りすぎ。
後にサイの話が出てきますが、この時から彼は、意識的にトワリスに近づいたと思われます。
さて、始まった卒業試験、魔導人形ラフェリオンの破壊。
超絶性格の悪いアレクシアに、不信感を抱きながらもついて行くサイとトワリス。
散々振り回される二人ですが、最終的には、アレクシアの目的がラフェリオンに使われていた自分の姉の目だったのだと分かります。
アレクシアは、特別な透視能力を持った一族の生き残りだったんですね(その能力を使って、トワリスをはじめ多くの人を脅してきました)。
そんでもって、本当のラフェリオンの正体は、人形でありながら人間の心を持つ依頼人、ケフィ・ハルゴンだったわけですが、実は、彼は最初から、トワリスたちに紅茶を出しても自分は一杯も飲んでません。
しかも、淹れたての紅茶なのにぬるいと描写してあります。
ここで彼がラフェリオンだと気づいた方はいらっしゃらないかと思いますが、紅茶を飲めない、おいしさが分からない、といった描写は、彼が実は人形であるからでした。
読者さんには、屋敷で暴れまくってた人形の方をラフェリオンと信じて頂きたかったので、討伐するまでのサイとトワリスの作戦立てのシーンは、結構力を入れて書きました(笑)
上半身の動きと車輪の回転が連動してるんじゃないか、とか、術式が身体のどこにあるか、とか、どこまで追跡能力があるか……などなど。
でも、本物のラフェリオンはその人形じゃないので、あのシーンは本来いらないっていうか、ただのフェイクなんですよね(笑)
頑張って読み込んで下さった方がいたら申し訳ないなぁと思いつつ、騙されて下さってたら嬉しいですb
ラフェリオン事件が無事に解決し、サイとトワリスは、正規の魔導師に昇格。
アレクシアは、勝手放題やった責任をとって留年になりました。
最後、アレクシアとトワリスが話すシーンで、またジークハルトも出てきます。
この時のジークハルトは、史上最年少の20歳で宮廷魔導師になったスーパーエリートですね(今までの最年少記録はジークハルトパパのオーラントさんでした、バーンズ遺伝子すごい)。
ただ、まだ若いので、魔導師団上層部の腐敗に直接的に手を出せるわけでもなく、悶々としている様子です。
トワリスとジークハルトは、結構気が合いそうというか、ストイックな努力家タイプなので、良い上司と部下になりそうですよね。
そんな二人のことを、アレクシアは割と気に入ってます。
散々暴言を吐きまくってトワリスをいじめたアレクシアですが、彼女はその目の能力故か、裏表のない人間が好きです。なので、ジークハルトとトワリスにはとっても懐いているほうだと思われます(笑)
好きな相手ほどいじめたくなる……なんて表現では収まらないレベルで性格悪いですが、トワリスに対して言っていた「異端」だの「気持ち悪い」だのという言葉も、アレクシアの生い立ちを考えると、全部本人にブーメランなんです。
そう考えると、魔導師団に同期で入団した女二人同士、しかもちょっと特殊な身の上同士というので、アレクシアは最初から、トワリスと友達になりたくて声をかけたのかもしれません。
……いや、そんなことないか。
前話で出てきたリリアナは普通に良い友達なので、アレクシアには、またちょっと違った関係になる相手として登場してもらいました。
作者的には、アレクシアを書くのはとっても楽しかったです(笑)
小説でこんなに悪口書きまくることあるか?ってくらい悪口を書きました。
闇の系譜はそんなにぶっとんだキャラがいないので(ぶっとびすぎてると作者が好きになれないので)、その中で比較するとアレクシアはインパクト強めだよなと思います。
強烈すぎて、好き嫌いは分かれると思いますが、彼女の狙いとか、最後の回想を見てアレクシアに対する印象が変わったら良いなと思います!
第二話『蹉跌』
唐突にサイコパス感を出してきたサイくんについては、ひとまず置いておいて。
無事に正規の魔導師になれたトワリス。
残念ながら、希望のアーベリトには配属されず、港湾都市ハーフェルンの領家令嬢、ロゼッタ・マルカンに専属護衛として仕えることになりました。
ハーフェルンの領主クラーク・マルカンは、サーフェリア編上巻の王位争奪戦の時にも出ています。
ハーフェルンは、サーフェリアではシュベルテに次ぐ大都市で、物流の要となっている港町です。
シュベルテとは三街の協定を結ぶ前から友好関係にあり、特に召喚師一族に対してはかなり好意的ですね。
好意的というか、ハーフェルン自体がシュベルテの軍事力に依存している節があるので、その総括者である召喚師には媚び媚びなのです。
交易が盛んな分、人や物の出入りが激しい都市でもあるので、非合法な商売やら違法市場やらが黙認されている犯罪の温床でもあります。
上巻では、そこをサミルさんに指摘されたりもしていますし、トワリスが最初に奴隷として暮らしていたのもハーフェルンですね。
クラークさんはやり手の商売人ですが、仄暗い部分からは目を逸らしがちのちょっと腹黒い人です。
さて、そんなクラークさんが溺愛している娘ロゼッタですが、裏で煙草を吸ってるようなとんでもない不良娘でした。
彼女はすごく頭の切れる人間だと思っていて、クラークさんの狡猾さをちゃんと受け継いでいる&視野が広いので、将来は一層街を盛り上げていける人間になるんじゃないかと思います。
が、トワリスみたいな社会人一年目のぺーぺーには、ちょっとキツい雇用主ですよね。
よく言えば真面目、裏を返せば愚直すぎるトワリスなので、良かれと思ってしたことが空振りまくり、五月病(?)にかかります。
更にトワリス的にショッキングだったのが、偶然再会したルーフェンの不貞(笑)が発覚したことです。
ルーフェンが女とイチャコラしてたことに深い意味はないんですが、ロゼッタという婚約者がいながら、そういうだらしないことを平然とやってたっていう事実が、潔癖なトワリスからすると一番衝撃かなと思って、書きました。
トワリスって、明らかにルーフェンに夢見てたんですよね……。
憧れのお兄ちゃんフィルターがかかったまま成長して、再会しちゃったので、今回の件でルーフェンの株は大暴落しました。
上巻では主人公だったルーフェンですが、下巻の前半では、腹の底の読めないキャラポジションでいてほしかったので、掴みどころのない描写を増やしました。
まあ実際ルーフェンって、元々こういう感じでしたけどね……上巻でも侍女のアンナちゃん唆したりしてましたし(笑)
ルーフェンは、なかなか人に心を開かない野生動物みたいなところがあるので、慣れるまでは人に執着しないし、割と誰にでも愛想が良いです。
ちなみにロゼッタも、ルーフェンのことはなんとも思ってません。
ただ前述の通り、ハーフェルンは召喚師と仲良くしておきたいので、ロゼッタがルーフェンとラブラブだとクラークさん的に都合が良いんですよね。
ルーフェンも、婚約者くらいいておかしくない立場なので、別に誰でもいいけど、どうせなら頭良くて割り切った関係で付き合える人が楽だなってことで、ロゼッタと婚約関係を結びました。
まあビジネスパートナーみたいな感じですね。
しかし、トワリスはそんなこと全く知らない上、潔癖なところがあるので、ルーフェンを完全に女の敵認定します。
憧れのお兄ちゃん→不潔変態野郎→何考えてるか分からない人……てな具合で、だんだんトワリスのルーフェンに対する認識が変わっていく様子を、最後まで見守って頂ければと思います。
第三話『結実』
今までの頑張り過ぎが祟って、ついにガス欠を起こしてしまったトワリス。
この辺りから、ルーフェンのトワリスに対する認識も変わってきます。
トワリスの愚直さに呆れつつ、昔のよしみもあって、なんとなく放っておけず世話を焼くルーフェンですが、多分彼は、トワリスが魔導師になることには元々反対だったし、そもそも本当に魔導師になるなんて思ってなかったんでしょうね。
心労で倒れるくらいなら、魔導師なんかやめて、またアーベリトに来ないかと誘います。
しかし、元はと言えば、トワリスは、情けをかけられるのは嫌だという動機でレーシアス邸を飛び出しているので、その誘いは断ります。
ルーフェン的には、折角助けてあげるって言ったのに、なんでそんなヘロヘロの状態で断るんだと、内心納得いかなかったんじゃないかなと思います。
ルーフェンの予想外だったのは、精神面はともかく、戦闘技術面ではトワリスはめちゃめちゃ強かったってところですね。なんてったって実技首席なので、伊達に拳と脚力で魔導師団をのし上がってきてません(笑)
魔力は少ないですが、身体能力が高い&細かい魔力の調整は上手いので、潜在能力だけで言えばトワリスはかなり上位の実力をもった新人という設定です。
昔ルーフェンに教わった魔術の進化系的な幻術を使い、祝宴に紛れていた刺客たちを見事ぶっ倒したトワリス。
元は意思疎通も満足にできなかったようなトワリスが、こうして魔導師になるまで、一体どれだけ苦労したのだろうと、ルーフェンは感動します。
しかし、うっかりトワリスにときめいたことがバレて、ルーフェンはロゼッタに睨まれます。
でも、喧嘩別れみたいになってますが、ここで、ルーフェンとロゼッタの間に亀裂が入ったりはしてません。
ロゼッタの目的は、リオット族の所有権をルーフェンに譲ってもらうこと、そんでもって父クラークの命を狙う刺客を祝宴の場に誘き寄せて、ついでに倒してもらうことでした(★本編には書いてないですが、この刺客たちは三街を敵視しているセントランスの者達です)。
そもそもが利用しあってる関係なので、全く問題はないですね!
ロゼッタとルーフェンの、腹の探り合いしてるような関係、個人的には好きなので、書くの楽しかったです(笑)
乳母よりうるさいという理由で、結局ロゼッタに解雇されたトワリス。
今がチャンスとばかりに、今度こそ言い方を間違えないよう、「可哀想だからじゃなくて、君の力が欲しいからアーベリトに来て欲しいんだよ」とルーフェンはトワリスを口説きます。
結果、成功。念願叶って、トワリスのアーベリト配属が決まりました。
これは完全にルーフェンの職権濫用でもありますね(笑)
ちなみにこの時、ルーフェンは20歳くらい、トワリスは17歳くらいです。青春ですね。
ハーフェルンパートは、ルーフェンとトワリスの関係がちょっと進化するお話でした。
- Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】 ( No.409 )
- 日時: 2021/02/10 17:29
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r9bFnsPr)
〜あとがき〜④
†第五章†──淋漓たる終焉
第一話『前兆』
アーベリトに帰ってきたトワリス。様変わりした街並みに驚きつつも、リリアナやサミル、ロンダートなど、懐かしい面々に再会します。
そんな中で、初顔だったのがリオット族のハインツ。
筋骨隆々としたいかつい見た目に反し、気が弱い若干十四歳の少年です。
リオット族たちは、若い男衆を中心に都市部に進出してきていますが、彼らは基本ルーフェンを介して、商会に属し働いているので、アーベリトが主な勤務地ではありません(★詳細は上巻で!ラッセルさんやノイちゃんたち、女性やお年寄りは南方に残ってたりもします)。
ですがハインツくんは、ノーラデュースから助け出された時に、唯一「ルーフェンの元で働かせてほしい!」とお願いしてきた子でした。
とはいえ、当時はまだ8歳だったので、しばらくはラッセルさんたちと暮らしていたハインツくん。
それから6年経った今でも、ルーフェンの力になりたいという気持ちが変わらなかったため、アーベリトにやってきました。動機としては、トワリスと近いものがありますね。
リオット族の中でもずば抜けて力が強く、頑丈に成長したハインツくんは、能力的には魔導師としてルーフェンの下で働いても問題なさそうですが、なんせ引っ込み思案な性格なので、時には非情さも必要な仕事をこなせるとは思えません。正直、頭も回る方ではないです(笑)
ルーフェンは、自力で魔導師になったトワリスですら、「危ないからやめたほうがいいんじゃない?」って心配してたくらいなので、内心ハインツくんをアーベリトに引き入れることにも反対だったんじゃないかなぁと思います。
それでも、ルーフェンが彼を下に置いた理由は二つ。
一つは、ハインツくんが自分の強すぎる力を持て余していた故に、他に合いそうな居場所がなかったこと。
もう一つは、完全に裏設定なのですが、ハインツくんが亡きアレイドくん(ルーフェンの弟)に似ていたからでした。
アレイドはシェイルハート家の四男坊で、上巻の序盤ではルーフェンに付いて回ってた気弱な子ですね。
鬱陶しくて、当時のルーフェンは邪険に扱ってましたが、シルヴィアさんに兄弟たちが殺されてから、もうちょっと仲良くしておけば良かったと後悔しているような描写があります。
ルーフェンが意識してそうしたのかはわかりませんが、内気なところ、ついて回ってくるところが、なんとなく弟に似ていたので、ハインツくんのことを拒否することはできなかったんじゃないかと思います。
人混みを歩いているだけでビクビクするハインツくんですが、そんな彼に、トワリスの友人であるリリアナが惚れました(笑)
三章三話で、まだ孤児院で暮らしていた頃のトワリスとリリアナが、恋バナ?的なことをしているときに、リリアナは「早く運命の王子様に会いたい」的なことを言っています。
ハインツくんは、王子様っていうタイプでは全くないと思うんですが、普通より食べられるからなのか、あるいはギャップに萌えたのか、リリアナはフォーリンラブしたようです。
リリアナは夢見がち暴走特急列車なので、トワリスは
基本的に引いてますね。
この辺の話は、特に深い意味はないので、解説することは特にありません。
アーベリトの現状を紹介しながら、閑話休題のつもりで書きました!
シリアスばっかだと読み手も書き手も疲れますからね(笑)
長くなると思って根こそぎ削っちゃいましたが、トワリスがアーベリトに帰ってきてからの閑話休題パートは、本当はもっと色々書く予定でした。
リリアナのことだけじゃなくて、ハインツとトワリスの関係とか、ハインツとルーフェンの関係とか(気が向いたら外伝とかで書きたいですね)。
ハインツくんは、ルーフェンに恩があって、彼のために頑張ろうと決意してアーベリトまで来た点はトワリスと共通していますが、彼は彼で、また成長を遂げて別の道に行きます。
人の後ろに隠れて震えていたハインツくんの成長物語も、またアルファノル編あたりでちょびっと紹介したいなーと思います。
リリアナの弟のカイルくんは、終始ぶっきらぼうでした。
ミストリア編では、リリアナの身の安全のために、ユーリッドとファフリに「さっさと出て行け」ときつい言葉をかけてきます。
まあ彼はトワリスたちと違って一般ピーポーなので、今まで育ててきてくれたお姉さんを守るためにも、お人好しな振る舞いばかりしていられない、ということなんでしょう。
彼はすごくしっかり者なので、将来は沢山働いて高級取りになって、お姉さんに楽させてあげようとするんじゃないですかね。
リリアナが孤児院時代に、「カイルが結婚したら寂しい!」みたいなこと言ってますが、万が一リリアナのほうが先にゴールインしてしまうようなことがあれば、カイルくんのほうが寂しくて死ぬ気がします(笑)
リリアナさん、看板娘やってるくらいのでモテそうですし、そこそこ可愛い設定です(ただしハインツくんはリリアナのことが苦手です)。
最後は、張り切りまくったトワリスが、ルーフェンに仕事の報告をして終わります。
基本的にルーフェンは褒めてくれる(というか慇懃)ので、そのせいでトワリスは熱血仕事人間に出来上がってしまった気がしないでもないです(笑)
どうでもいいことですが、この時のトワリスは短髪です。
外伝にて、ルーフェンがトワリスに三つ編みを教えてあげる話を大昔に書いたんですが、似たような設定が本編にも適用されていて、トワリスが髪伸ばした理由はルーフェンにあります。
ここら辺になってようやく、ルーフェンが軽口言ってトワリスがキレる、みたいな、ミストリア編であった主人公コンビの温度差に近づいてきたので、作者的には「やっとここまで来た!」と感慨深かったです。
第二話『欺瞞』
配属先不明だったサイくんが、実はアーベリトにいたことが分かりました。
トワリスは、サイがサイコパスなんじゃないかと疑いつつも、以前のように仲良くやっていこうと思い直します。
この話から、いろんな勢力が本編に出てきますね。
読者さんもいよいよ混乱してきたんじゃないかと思いますので、ざっくり解説させて頂きます。
まず、大事件として、軍事都市セントランスが旧王都シュベルテを襲撃します。
ここで主だって動いていた勢力が以下です。
①旧体制の魔導師団と世俗騎士団
……シュベルテの主戦力、旧王家カーライル家に忠誠を誓う、サーフェリア一でっかい魔導師団と騎士団ですね(★シュベルテに従属する他の都市の治安維持も担当してます。魔導師があちこち派遣されてるのはそのため。ハーフェルンなんかもその一つですね)。
ジークハルトやトワリス、アレクシア、サイ、皆が所属しているところです。
一応総括者は召喚師ですが、ルーフェンは今アーベリトにいるので、召喚師をトップに象徴としたシュベルテ運営の武人集団っていう表現が正確かと思います。
最近、反召喚師派の教会側に寝返っていく魔導師や騎士が増えてきたのが悩みです。
どう対処しようかと考えていたところで、セントランスからの襲撃を受け大ダメージ。
壊滅寸前まで追い詰められ、ジークハルトはだいぶションボリ。
なんとか教会やセントランスに打ち勝って名誉回復したいところです。
①ー1 旧王家カーライル一族
……長年サーフェリアを総括してきた旧王家、現在はシュベルテを治める公爵家です。
現在生き残っているのは領主バジレット・カーライルとその孫シャルシスです。
上巻にて、シルヴィアさんに王位継承者を殺されまくり、このままじゃ国を統治できへん!ということでアーベリトに王権を一時預けました。
基本は魔導師団&世俗騎士団側ですが、バジレットさんは魔導師や騎士たちが政権を握ろうと動き始めることを危惧し、統治権を守ってます。
実際、王位継承者が死にまくった時に、騎士団がまだ赤ちゃんのシャルシスを即位させて、日本で言う摂政的ポジションにつこうとしてきました。
つまり、シュベルテ内では、カーライル旧王家vs騎士団&魔導師団の一部の過激派vsイシュカル教会、という三つ巴の争いが水面下で起きてるわけですね(笑)
②イシュカル教会および新興騎士団(修道騎士会)
……世界を四つに分断した女神イシュカルを崇める、反召喚師勢力です。
かつては急進派が暴れまくってたので、世間からは狂信者集団扱いされていましたが、ルーフェンがリオット族を王都に引き入れたり、アーベリトへの遷都を強行したりして、近年召喚師一族に対する不満が高まってきたので、信仰者数UP↑して勢力が伸びてきました。
大司祭を務めるモルティス・リラードは、イシュカル教徒であることを隠して、事務次官として王宮に潜り込んでましたね(実は上巻にも結構出てるよ!)。
ひっそり悪さしながら、ルーフェンが不在なのをいいことに、イシュカル教会によるシュベルテ乗っ取り大作戦を決行する機会を伺っていました。
そして、時は来たり。セントランスの襲撃により、騎士団と魔導師団が潰れた瞬間を見計らって、新しく発足させた修道騎士会の名を掲げ、戦災難民を救助しました(自分たちは戦ってないのがセコいところ)。
教会「ほら皆、美味しいご飯と温かい寝床を用意してあげよう。頑張ってる皆をイシュカル様は見捨てないZE☆」
人民「きゃー!イシュカル様ばんざーい!魔導師団と世俗騎士団まじ無能じゃん!」
ってな具合で民意を勝ち取り、旧王家率いる魔導師団と世俗騎士団を陥落させました。
③バスカ・アルヴァン率いる軍事都市セントランス
……サーフェリア編上巻にて、王位争奪戦でアーベリトに敗れた街ですね。
あれ以来、王位の譲渡と遷都を行ったカーライル家と召喚師一族、つまりは協定を結んだ三街(シュベルテ、アーベリト、ハーフェルン)をめちゃめちゃ恨んでました。
今まではハーフェルンやアーベリトに刺客送ってただけでしたが、満を持してシュベルテを攻撃!
「しかも俺たち、召喚術使えるようになっちゃったもんね!」と高らかに笑いながら宣戦布告しました。
さて、そんな殺伐としたシュベルテですが、とりあえずピンチ!ということで、アーベリトも早速救援活動に参加します。
怪我人を受け入れ、宣戦布告してきたセントランスをどげんかせんといかん、と動き出しました。
(★怪我人受け入れついでに、シルヴィアさんまでアーベリトに避難させました。この話はまた他のページで)
どげんかせんといかん、と言っても、シュベルテが落ちた今、セントランスに勝てるとは思えないし、国王のサミルさんは非戦論者なので、なるべく宣戦布告には応じない形で事態を収めたいと考えます。
そこで、ルーフェンがとったのは、セントランスのスパイ——サイ・ロザリエスを逆に利用する方法でした。
サイくん実は、シュベルテへの襲撃を手引きしたり、召喚術の行使方法を探るための、セントランスからのスパイだったんですね。
アーベリトが「戦うのはやめようよ!」と親書を出したところで、セントランスは聞いてくれません。
でも、サイからの連絡ならセントランスもちゃんと読むはず……ということで、ルーフェンは、サイに色々と情報を吹き込みます。
といっても、サイもめちゃくちゃ切れ者なので、ルーフェンの言うことは常に疑ってかかってました。
サイは、ルーフェンに、召喚術についての探りをいれては、その答えを更に自分でも調べあげ、その結果のみを信じていました。
この辺りは本編でも細かく書いてるので、読んで頂ければお分かり頂けるかと思うのですが、要はルーフェンは“見聞きしたもの全てを疑い、最終的に裏が取れた情報のみを信じる”サイのやり方を、逆手にとって利用しました。
つまり、今回の場合、単なる偽の魔語で記された呪詛を、召喚術だと偽り、サイの力でそれを調べあげるように仕向け、最終的にはサイ経由でセントランスが呪詛(偽の召喚術)を使うように誘導したんですね。
サミルさんからの「戦うのはやーめよ」っていう親書をすり替え、サイは、セントランスに「これが一般ピーポーでも召喚術を使える方法だよ!」と情報提供します。
セントランスはそれを信じ、術を行使しますが、それはルーフェンが使うよう仕向けた呪詛(魔語記載だから呪詛かどうかなんて見分けられない)なので、結果的にセントランスの魔導師たちが自滅します。
こうして、戦わずして、アーベリトはセントランスを陥落させたわけですね。
しかも、これにより親書をすり替えたことがバレたので、サイがスパイだったことも露見しました。
こういう切れ者同士の心理戦みたいなの、私は好きなんですが、分かりづらかったら申し訳ないです^^;
召喚術チャレンジに失敗し、スパイであることまでバレたサイ。
彼がサイコパスであると疑っていたトワリスは、「危ない考えは捨てて罪を償え」と、ある意味での救いの言葉を投げかけますが、サイは頷きません。
サイは、確かにサイコパス感ありますが、その実、魔術に興味があるわけでもない、抑圧されて育った現代っ子みたいなキャラでした。
魔術が好きだから、というわけではなく、たまたま得意だったから、自分を評価してもらうための手段として魔術を学んでたんですね。
サイは、養父であるバスカ・アルヴァンに否定されて育ったため、自己肯定感が低く、自分の意思を持たない、強い自己主張ができない人間に育ちました(バスカは、悪い人間ではありません。自分が脳筋スポ根の叩き上げ世代だったため、自分にも周りにも常に厳しかったんですね)。
そんな自分に疑問も持たず生きてきましたが、養父の命令で魔導師団に入ったサイは、夢を持って邁進していく周囲の若者たちを見て、衝撃を受けます。
言われた通りにしか生きてこなかったサイには、目標のために一心に頑張ってる人間が、ひどく眩しく映ったんじゃないかなぁと思います。
こういう人、現実にも結構いますよね。
進路決めるのに、将来の夢がある人は志望校に向かって頑張って勉強するけど、やりたいことがない人は、なかなか頑張れない……みたいな。
サイに関しては、スペックはめちゃめちゃ高いんですが、夢なんてものがなく、何かのために努力しようと思った経験がありませんでした。
だから、元が文字も読めなかったのに、アーベリトの役に立ちたい一心で魔導師に上り詰めたトワリスのことを見て、色々思うところがあったんじゃないかなと。
初めて会った時に、サイはトワリスに対し「ずっと努力家だなぁと思って見てた。トワリスさんと話したくて……」的なことを言っています。これはスパイとして近づいた意味もありましたが、案外本心だったのかもしれないですね。
また、皮肉なのが、サイは卒業試験の時に魔導人形ラフェリオンに出会っています。
ラフェリオン、ほぼ人間でしたよね。その生き方を見比べてみたときに、サイのほうがよっぽど操り人形のようで、ラフェリオンのほうが人間らしく思えます。
唯一得意な魔術ですら、召喚師のルーフェンには敵うはずがないし、セントランスを出たサイが見てきたものは、全てが劣等感を助長するものばかりでした。
しかし、最期の最期に、サイは今までの闇の系譜の根底を覆すほどの、ビッグイベントを起こして亡くなります。
なんと、召喚術を使っちゃうんですね!
召喚術については謎が多かったんですが、『召喚師一族にしか使えないもの』というのは、ミストリア編からの共通認識でした。
しかし、実はそう世間に思い込ませることで、召喚術という危険な魔術を使おうとする者が出ないよう、秘匿とされていただけだったんです。
召喚術を一般でも使えるという認識が広まったら、大変ですからね。色んな国が核爆弾もってます、みたいな事態に陥ります。
五章二話の段階では、サイが召喚術を使ったことで、ルーフェンだけがこの事実に気づきます。
本当は召喚術って誰でも使えちゃうんだ……ということは、絶対に隠さなければなりません。
かなり物語の確信に迫る話でした。
- Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】 ( No.410 )
- 日時: 2021/02/12 12:22
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r9bFnsPr)
〜あとがき〜⑤
†第五章†──淋漓たる終焉
第三話『永訣』
いよいよこの時が来てしまいました。
サイくんが亡くなって落ち込むトワリスに、唐突に遺書を渡してくるサミルさん。
鬼畜か?と言いたくなりますが、まあルーフェン、トワリス、ハインツ、ロンダートの中だったら、私もトワリスに渡しますね(笑)
死期が近いことを悟ったサミルさんと、徐々にそのことに勘付き始めたアーベリトの人たち。
シリアスファンタジーを書いてると、復讐に生きて亡くなった人とか、誰かを守って犠牲になった人とか、色んな『意味のある死』を書くことがありますが、ここにきて主要人物の一人であるサミルさんが、普通に病(年齢的に老衰死と表現してもいいかもしれませんね)で死ぬって、なんというか……人間の儚さを感じますよね。
ミストリア編にサミルさんは出てないし、そもそも王都がシュベルテに戻ってる時点で、彼の死を予測できていた読者さんはいたんじゃないかなぁと思います。
サミルさんには幸せに逝ってほしかったので、私はこれが一番良い終わり方なのかなと考えてます。
皆がサミルさんの元を訪れる中、ルーフェンだけが一向に顔を出そうとしません。
トワリスが探しにいくと、ルーフェンは、サミルの実子でもない自分は一体どうすればいいのかと、悩んでいるようでした。
ルーフェンは、上巻の時代からやけに血の繋がりを気にしている節があります(かつて片腕を失ったオーラントさんに対し、本物の息子であるジークハルトがいるんだから俺は引っ込んでなきゃ、てな感じでいじけてたこともありました)。
血の繋がりがある親子関係こそ本物、みたいな思考してるので、実母があんなんでもなかなか縁切れないし、それ以外の他人とは一歩引いた関係を築いてきました。
故に、今までも色んな人間の死に触れてきたルーフェンですが、なんだかんだで、そこまで大事な相手を失くすっていう経験はなかったんですね。
それが今回、パパ的存在のサミルさんの死期が近いと知り、あくまで他人でしかない自分はどうすれば良いのか、距離感を掴みかねていた次第です。
ある意味、血の繋がった親子関係というものに夢を見てる結果なのかもしれませんが、ここにきて、ルーフェンの不完全さというか、人間的に欠けてる部分が出てきます。
ここで、またトワリスのルーフェンに対する印象が変わってきます。
四章二話のあとがきでも記した通り、トワリスは、ルーフェンに憧れのお兄ちゃんフィルターをかけちゃってる節がありました(笑)
まあルーフェンがかっこつけがちで、完璧な部分しか見せて来なかったせいなんですが、下巻の始まりから『トワリス視点』で進んできた今現在まで、やっぱり「ルーフェン=完璧で頼りがいあるけど、いまいち何考えてるのか分からなくて怖い、別世界の人みたい」っていう印象が読者さんの中でも強かったんじゃないかと思います。
でも実際、全然そんなことなくて、頭いいだけで中身は、子供っぽいんですよね。
この辺りでトワリスも、そういうルーフェンの欠けたところに気づいてきました。
ちなみに、ルーフェンとトワリスの親へのイメージっていうのは、大きく違っています。
親子関係って、闇の系譜では常に意識して書いてるんですが、まずトワリスは、顔も覚えていないし真実は分からないけど、母親に対して良い印象を抱いてます。というか、そうだったらいいなと思い込んでますね。
一方のルーフェンは、シルヴィアアンチみたいなとこあります(笑)
その二人の認識の差が、前話でアーベリトにシルヴィアさんが避難してきた時に、がっつり出てます。
なんなら、三章一話で、母親の死を知って泣くトワリスに、ルーフェンは「そりゃ普通母親が死んでたら悲しいよな」みたいな他人事のような感想を抱いてます。
だから、ルーフェンがシルヴィアを警戒しまくってた時に、当初トワリスは「母親に対して冷たすぎる!」って批判的だったんですが、だんだんルーフェンの暮らしてきた環境が垣間見えてきて、本気で愛情が分からない人なんだなぁと感じ取り始めます。
トワリスは、なんだかんだでサミルさんやらロクベルさんやら、色んな人に出会ってますからね。
ルーフェンには、サミルさんがいたけど、自分で親子ではないと線引きしていたので、そこにあったはずの愛情が、いまいち見えていなかったのだと思います。
さて、話を戻して、ようやくサミルさんに会いに行ったルーフェン。
ルーフェンは、今後のことなんか話したくないと避けようとしますが、サミルさんは自分が死んだあとのことを伝えてきます。
そうして「真っ直ぐ生きてください。私はいつでも、君の味方ですよ」という言葉で、締め括りました。
この言葉、上巻の序章で初めてルーフェンと会って別れる時に、サミルさんが言った言葉と同じなんですよね。
サミルさんは、ルーフェンを見た時から、兄の子であることが分かっていました(詳細は上巻にて)。
その上で、叔父である自分が守らねばと、決意しています。
親子じゃないけど、親子に近い確かな絆が、そこにはあったように思います。
サミルさんが亡くなったのは、雪が降る明け方のことでした。
ルーフェンが、最後までサミルさんのことを「お父さん」と呼ばなかったのは、まあ今更言えなかったというのもありますが、サミルさんとの想いの形に齟齬を感じてたからです。
ルーフェンにとっては、サミルさんが本当の父親のようでしたが、サミルさんにとっては、ルーフェンはあくまで兄の息子なんですよね。
といっても、その愛に差はなくて、サミルさんは本当にルーフェンのこと大事に思ってたはずなんですが、それでも、ルーフェンは面と向かってサミルさんを父と呼ぶことは出来ませんでした。
サミルさんは、正直甘い部分が多すぎて、国王としては色々足りない部分がありました。
上巻でも、仕方がなかったこととはいえ、アーベリトに遷都したことが正解だったかどうかはなんとも言えません。
それでも、沢山の人を愛し、愛されていた人物だからこそ、良い幕引きができた人物だなと思います。
サミルさん、そしてレーシアス家について補足します。
サミルさんが非戦論を掲げていたのは、アーベリト自体が慈善活動に力を入れていたというのもありますが、自身が若い頃の十年ほど、軍医を務めていた経験があったからでした。
この辺のお話は、近々外伝に掘り下げ話として載せようと思ってるので、よかったらご覧ください。
以前、上巻のあとがきで、闇の系譜の世界の文明レベルについてチラッとお話したかと思いますが、サーフェリアは、基本的に魔術がある故に科学はそれほど発展していない設定です(というか魔術と科学の共存はリアリティを突き詰めるとキリがないので、考えたくないですw)。
銀竹オリジナル成分が多分に含まれているので、なんとも言えないのですが、なんとなーく実際の歴史でいう16〜17世紀くらいの発展レベルを参考にしてます。
ただ、戦が多い世界設定なので、医療技術に関しては突出して進んでいて、大体18〜19世紀くらいのレベルに合わせてます。とりわけアーベリトは、遺伝病の治療法確立とかしてますしね。
じゃあなんで、そもそもお金がないアーベリトが異様に医療進んでんの?って話なんですが、それは元が平民出のレーシアス家が慈善活動を始めたからこそ、でした。
まず、医療技術の発展具合って、結局のところ解剖に手を出すか出さないかで大きく分かれます(宗教的な思想とか倫理観から解剖を認めないとやっぱり遅れる)。
サーフェリア編上巻の二章四話で、サミルさんが「兄さん解剖するなんてドン引きかもしれんけど」的な発言をしていますが、これは、死体開くなんてどうなん?とか、血に触れるなんて穢らわしい!っていう考えが世間的にあったためです。
その点、アーベリトは政府公認で戦争難民を引き取っていた分、死に触れる機会が他より多く、死体を解剖したところで咎められるほど高い身分でもありませんでした(実際の史実でも、死体処理は賎民の仕事だったり、死刑執行人は正しい医療知識を持ってたけど身分の高い医者はお祈りすれば病気治ると思ってたとか、割とあったそうです)。
そういう環境だったからこそ、医療が発展していったのは必然であり、結果的に、アーベリトは小規模ながらも大都市を凌ぐ医療技術を持った街になったんですね。
ちなみに、話は変わりますが、サーフェリアの身分制度(貴族編)について。
カーライル公だの、マルカン侯だの、レーシアス伯だの、色々出てきますが、基本的な公侯伯子男の序列は同じものの、呼び方だけ闇の系譜オリジナルになってます。
ていうか、単純に分かりやすいようにしてます。
実際は会話中に爵位の前に名前をつけることはあんまりないらしくて、例えば公爵だったら「公」とか「閣下」って呼ぶようなんですが、名前つけてないと「いや誰やねん」ってなるじゃないですか。
まあ闇の系譜でもそういう使い方をしてる時もあるんですが、調べたところによると、実際の呼び方ってかなり複雑に決まっているようで、ぶっちゃけどうでもいいので省略してます(笑)
クラーク様、もしくはマルカン侯って聞いたら、ああ、あの港町の領主ね!ってなんとなく思いつ……かない読者さんもいるであろう状況の中で、港湾都市ハーフェルンで爵位を得た『ハーフェルン侯クラーク』、正式な場では『ハーフェルン侯爵閣下』、でも場所や身分が変わってくると『マルカン卿』って呼びれたりもする、なんて事態が発生したら、特に横文字の固有名詞が苦手だと言う方は、確実に混乱しますよね。
というわけで、闇の系譜では爵位は敬称的なノリで使って、姓+爵位=呼び名としてます。
サミルさんだったら、伯爵の称号をもらってアーベリトという領地をもらったレーシアス家の人なので、『レーシアス伯』と呼ばれます。
また、貴族出でなくても、宮廷魔導師になったりすると、その働きに応じて爵位をもらえたりもするので、ジークハルトなんかは『バーンズ卿』って呼ばれてますね。
全部自分で決めないといけないけど、舞台がそもそもフィクションだから事実と違ってもOK、それがファンタジーのいいところです(笑)
第四話『瓦解』
サミルさん、つまり現国王が崩御したので、どうすべきかシュベルテのバジレットさんに相談にいきたいアーベリト勢。
しかし、なんと②教会がシュベルテの城まで乗っ取り、①召喚師派は登城NGになっていました(また勢力がいろいろ出てきます!分からなくなったら>>409をチェック!)。
困ったアーベリトの自警団員代表、ロンダートさんが「(サミルさん亡くなったけど元気出せよ、気分転換に)召喚師様がシュベルテ行って直接交渉してきてよ!」と進言。
ルーフェンがシュベルテに行くことになります。
ルーフェンを待ち受けていたのは、うまいこと政権を握った大司祭モルティス・リラードでした。
彼らイシュカル教会は、セントランスからの襲撃で負傷したバジレットばあちゃんを隠し、現体制を一新して召喚師派をぶっ潰すと主張しています。
睨み合った末、ルーフェンを城に監禁しようとしますが、新興騎士団に紛れ込んでいたアレクシアによって逃され、ルーフェンを代わりにジークハルトに会いに行きました。
ここで、新しく以下が動き出します。
④現召喚師ルーフェン
……アーベリトに籍を置いていたが、サミルが崩御したことで、王権と共にシュベルテに戻ることになりそう。
ただしシュベルテでは反召喚師派の動きが活発化してるので、今戻ったらいよいよ暴動が起きる可能性あり。
教会は潰さず、対抗勢力として魔導師団の復権は必要。
しかし、召喚術の秘密を守るためにも、反召喚師派の動きが強いなら、このまま召喚師制を無くすべきと考え、自分が最後の召喚師になると決意します。
⑤城を追い出された若い魔導師たち(ジークハルト、アレクシアら)
……魔導師団の復権を望んでいるあたりは、①④と同じ。
ただし上層部(老害)の腐敗が目立っていた旧体制は一新して、教会への対抗勢力には召喚師を設置。教会は完全に潰すべきと主張。
現在のリーダーポジションはジークハルトですが、彼は今、セントランスからの襲撃で周囲の人間を亡くし、自信を失ってションボリしているところです。
元々は、召喚師なんかいなくたって魔導師団が国を支えるぜ!と思っていたジークハルトですが、今回の襲撃を経て教会側に傾いていく民意を目の当たりにし、自らの無力さに歯噛みします。
人というのは、何かにすがらねば不安に押しつぶされてしまう生き物です。
今回の教会の台頭も、言わば危機的な情勢に追い詰められた人々が、すがる対象を召喚師から女神イシュカルに切り替えた結果でした。
自分は召喚師の代わりにはなれないのだ、と痛感したジークハルトは、ルーフェンにシュベルテに戻ってくるよう頼んだ上で「俺じゃ駄目なんだ」と悔しげに伝えます。
この言葉、実は上巻の二章四話で、全く同じことをルーフェンがジークハルトに対して言ってるんですよね(ルーフェンが言ったのは、オーラントさんのそばにいるのは俺じゃ駄目なんだ、の意味)。
ルーフェンとジークハルトは、互いに自分の持っていないものを相手が持っていて、それぞれ羨ましく思っています。
シュベルテに戻って欲しいというジークハルトの頼みに、ルーフェンははっきりとは頷きませんでした。
召喚術が召喚師一族でなくても使えるかも、と仄かしてみたところ、ジークハルトが興味を示したからです。
ジークハルトのように心根が真っ直ぐで、悪用する意図がない者でも、秘密を知ったら、召喚術を使おうとするかもしれません。
ルーフェンはジークハルトの反応を見て、改めて、召喚師一族を廃することを心に決めます。
⑥前召喚師シルヴィア
……問題のルーフェンママ、現在はアーベリトで療養中。
彼女はなんかもうマジ疲れちゃったので、ルーフェンに殺されたがっています。
最期の最期に、ルーフェンの脳内に自分の存在を焼き付けたかったためです。
が、ルーフェンにその気がないと知って逆上。その気になるよう、アーベリトを陥落させようと動き出します。
ここには教会の意図も介入してますね。
教会はシルヴィアに対し「youやっちゃいなyo」と煽り、自分たちの手を汚さずにルーフェンを陥れようと画策していました。
元から様々な禁忌魔術に手を出していたシルヴィアさん、アーベリトの人間たちを糧に、悪魔を生み出して街を壊滅させます。
ここで初めて、ルーフェンが気づいていたこと(悪魔は召喚師じゃなくても人為的に作り出せる)が明らかになりますね。
シュベルテでも、セントランスでも、考えてみれば、瀕死状態の人間が大勢いる環境下で悪魔が生み出されていたんです。
なんとか悪魔と戦うトワリスやハインツたちですが、最終的には、ロンダートたち自警団員が、糧となっている人間たちと共に自爆することで、悪魔への魔力供給を止め、ルーフェンが帰ってくるまでの時間を稼ぎました。
ここら辺の戦闘シーン、いつもちゃらんぽらんだったロンダートさんたちが一番冷静だし、判断も的確かつ迅速なんですよね。
戦闘能力的には圧倒的にトワリスやハインツが上なのですが、ロンダートさんたちは、アーベリトを王都になる前からずっと守ってきた人たちです。
元はただのゴロツキ集団だし、正規の騎士でも魔導師でもありませんが、土壇場で経験の差が出たのかなと思います。
やらかしたシルヴィアさんを衝動的に殺そうとするルーフェンと、それを止めようとするジークハルトとトワリス。
しかし、最終的にルーフェンを留まらせたのは、ハインツくんの言葉でした。
サーフェリア編上巻にて、ルーフェンは、争うリオット族と魔導師たちに向かって、「憎しみ合うのは間違ってる、この連鎖を止めよう」的なことを言っています。
そのルーフェンが、憎悪に駆られてシルヴィアを殺そうとしました。
こういうのは理屈ではないですが、かつてのルーフェンの姿に感化されて着いてきたハインツくんにとっては、ショックな光景だったんじゃないかなと思います(ミストリア編でも、ハインツくんは獣人襲来の件について何も話さないルーフェンに「国のことだから~」みたいなことを言ってますね)。
完結直後のあとがきにも書きましたが、下巻は、ルーフェンが落ちていく話なんですよね。
今後も、あれだけ嫌っていたシルヴィア側に思考が偏っていくので、なんとも皮肉なものです。
最後はルーフェンが、召喚術の恐ろしさをジークハルトに見せつけて、街を壊し、イシュカル教徒たちも一掃して終わります。
ここまで来るとだんだん実感が湧いてくるんですが、現状、ルーフェンは明らかに悪側(支持率が少数派)ですよね。
上巻から始まり、運命に逆らいながらリオット族を救って、アーベリトに遷都して、そんなルーフェンに望んで着いてきてくれたトワリスやハインツもいて……道を違わぬよう、まっすぐ進んできたはずなのに、いつの間にか悪になっていました。
正義ってなんだろう、って思います。
ルーフェンは、その時代の流れを掴み取ったものが一時だけ正義と呼ばれる、と表現していますが、その通りですよね。
正しいから正義なんじゃなくて、それぞれ正義だと思って突き進んだ結果が、その時代に合わなければ悪になってしまう。
歴史ってこういう正義、思想のぶつかり合いで出来ていくんだなぁって……そういうのが表現できたら、ハイファンタジー書けてる感ありますよね(笑)
- Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下【完結】 ( No.411 )
- 日時: 2021/02/11 19:27
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: r9bFnsPr)
〜あとがき〜⑥
†第五章†──淋漓たる終焉
第五話『隠匿』
思うところがそれぞれある終わり方にはなりましたが、色々と決着がつきました。
①旧体制の魔導師団と世俗騎士団→解散!
①-1 旧王家カーライル一族
→サミルさんに代わりバジレットが新王へ。モルティス率いる騎士団とルーフェン率いる魔導師団の二大勢力による統治体制を確立。
②イシュカル教会および新興騎士団(修道騎士会)
→ジークハルトに査問され、あんまり強気に出ると裏工作してたことがバレるので、城から一度退散。襲撃への関与は否定したが、魔導師団の復権とルーフェンらの登城を認める。
③軍事都市セントランス→陥落。シュベルテの政権下へ。
★ちなみにアーベリトの生き残りはシュベルテで一時保護。
後に、ルーフェンが上巻でカーノ商会から買収したヘンリ村跡地に移住します。
④現召喚師ルーフェン
→シュベルテに戻って魔導師団のトップに。
バジレットおばあちゃんには却下されたけど、いずれ召喚師制は無くす気満々。
召喚術は召喚師以外では使えない、という認識を壊さないために、アーベリト襲撃の罪を被るが、「俺がやりました!」と自ら肯定してしまうと人民からブーイングがくるので、黙秘。
⑤若い魔導師たち(ジークハルトら)
→教会を訴えて復権、魔導師団の建て直しに奔走なう。
人手不足のため、清く正しく国を守ってくれる優秀な魔導師募集中。
とりあえずトワリスとハインツの勧誘には成功した。
⑥前召喚師シルヴィア
→反逆罪の落とし前をつけるために、公開処刑決定。
まとめると、以上のような形で収まりましたね。
セントランスによる襲撃、シルヴィアによる襲撃、合わせて大勢の人間が亡くなりました。
本編の流れからはちょっと脱線しますが、ここで、名前はあったけどモブに近かったからいまいち思い出せない、襲撃で亡くなった被害者たちを追悼したいと思います。
○ガラド・アシュリー
……シュベルテの政務次官。上巻にて「顔がカマキリに似てる」と言われ、オーラントさんとルーフェンに陰で笑われていた。モルティスのライバルだった。
○レオン・イージウス
……前世俗騎士団団長。上巻にて王位継承問題で揉めてたときに「血統を重んじて、赤ん坊だとしてもシャルシスが王位を継ぐべきだ!」って主張してた人。摂政ポジションを狙ってたため、バジレットおばあちゃんに警戒されていた。
また、アーベリトへの遷都に反対してたので、それを強行したバジレットとルーフェンを恨み、セントランスに荷担して襲撃を手引きしてたんじゃないかと、本物のスパイだったサイくんにしれっと罪を擦り付けられていた。
○ヴァレイ・ストンフリー
……前宮廷魔導師団団長で、ジークハルトの元上司。
アーベリトへの遷都を可もなく不可もなくって感じで見守ってた穏健派。
優秀だったが、花祭りの直前に「俺一人が反逆者になって魔導師団が救われるなら、教会は俺は止めるぜキリッ」的な発言をして早々にセントランスによる襲撃で亡くなった、いまいち残念な人。
ああ、そういえば聞いたことあるな……みたいな名前だと思います(笑)
このまま忘れて頂いて結構ですが、一応頑張ってた権力者たちなので、この場をお借りして南無阿弥陀仏。
また、今回の襲撃の被害規模、わざわざスペース使って詳しく数値まで書く必要はないなと思って省いてたんですが、折角なのでここに書きます。
そのために、まず人口についておおまかに載せますが、前提として、サーフェリアは、面積の割に人数住んでません。
現実の単位で表すと、大体サーフェリアは5億haくらいの面積で、ざっくり総人口900万人くらいです(世界背景的には妥当な数だと作者は思ってますが、もうちょい治安良くなったら増えてくるはずです)。
全然人が住んでいない地域もあるので(探索し甲斐があるな!)、一部に密集しつつ、それでも小さい村なんかは百人単位しか住んでないですね。
そんでもって、一番大きな都市シュベルテは、面積1500ha、人口20万人ほど。
★今回セントランスによる襲撃では、本編中に「城下の四分の一がやられた」と書いてるので、大雑把に計算すると5万人近くが被害に遭ったということですね。うーん、しかも大型の建物や魔導師団・騎士団を狙ってきたので、被害規模としてはなかなか……。
アーベリトに関しては、途中で王都になったので、面積も人口も著しく変動し、これからも大きくなっていく予定でした(五章一話で、大工さんたちが頑張ってましたね)。
そもそも一時滞在者が多い街なので、本当に大まかな表記になりますが、ここ七年で、面積が160→400ha、人口は6000人→2万くらいまで増えています(急速に発展していったので人口密度的にはシュベルテより高かった)。
★それをシルヴィアさん(とルーフェン)が全壊させて、百数十人くらいしか生き残らなかったんだから、やばいですよね。ほぼ大規模自然災害並みの被害です。
本編に戻ります。
ひとまず、リリアナやカイル、ダナおじいちゃんは生き残っていたので、安堵するトワリスとハインツ。
しかし、人々、特にアーベリトの生存者たちの間では、召喚師に対する不信感が爆上がりしていました。
アーベリトを襲ったのは明らかに召喚術。
しかし、その犯人がシルヴィアであると明言すれば「召喚師じゃないのに召喚術使ったの?」という疑問が生じてしまいます。
それを防ぐために、バジレットたちは黙秘を続けていたので、人々の疑念はルーフェンに向かいました。そりゃそうですよね。
移住先を伝えにきたルーフェンに対し、人々の不満が爆発します。
「アーベリトに不幸を招き入れたのはお前だ」「死神だ」と罵声を浴びせますが、それでもルーフェンは、何も言いませんでした。
尚も罪を否定しないルーフェンに、トワリスは納得がいかず、地下牢にいるシルヴィアをぶん殴って「お前が代わりに謝って、息子の無実を証明しろ!」とキレ散らかします。
ミストリア編ではユーリッドくんがファフリちゃん専属のセラピストでしたが、サーフェリア編ではトワリスがシェイルハート家専属のセラピストですね。
ただし人狼族は、ある程度の理屈が通らない相手にはショック療法として拳をお見舞いしてくるので、注意が必要です(ユーリッドくんもファフリパパ殴ってます)。
ショック療法で諦めがついたのか、シルヴィアさんは、息子への執着をこの段階で辞めます。
……というか、もう本当に疲れて限界だったんだろうなと思います(笑)
どうせ死ぬなら、人々の記憶に鮮烈に残って消えようと、ヤンデレチックな思考をしていたシルヴィアさん。
彼女の行動には、非常に矛盾が多いです。
まず、生まれたルーフェンを殺さなかったこと。それから、侍女アリアからの手紙をわざわざ取っておいたり、オーラントさんを殺さなかったり。アーベリトでは、孤児院を魔法陣外にしていたり、直前でトワリスとハインツの術式を解いていたり……。
シルヴィアさんに人間らしさが残っていた故の行動だったと、都合よく解釈しても良いですし、偶然だったと解釈しても良いと思います。
ただ、そういう彼女の一面を知ると、憎みきれなくなるので、ルーフェンはあえて知らなかったことにしました。
彼女がどんな想いを抱えて生きてきたにしても、しでかした罪は重いものです。
最期は地獄に下り、シルヴィアさんは息を引き取りました。
あれだけ息子に殺されることに執着していたのに、結局、息子の手では逝きませんでした。
この時ようやく、ルーフェンはシルヴィアと決別できたのだろうと思います。
さて、そんなシルヴィアさんの訃報を後に知ることになるルーフェン。
かつて買収したヘンリ村の跡地にて、七年前に見つけた山荘で一人の時間を過ごします(ミストリア編でファフリちゃんたちが暮らしてたところです)。
アーベリトの人々に死神だのなんだのと言われても、一見ケロっとしていたルーフェンですが、実はいろんなものが溜まっていました。
かつては夢にまで見た、召喚師制の廃止——あまりにも簡単に覆って、転りこんできたその機会は、ようやく召喚師として生きることを決めたルーフェンには、受け入れ難いものでした。
また、今までアーベリトで築いてきたものが一瞬で消えた屈辱は、表に出していなかっただけで、耐えられないほどの絶望感を伴ってルーフェンを蝕んでいたのです。
そこにセラピスト、トワリスの登場(笑)
トワリスが本人に代わりに、築いてきたアーベリトでの七年間を肯定してくれたので、ルーフェンは救われたのかなぁと思います。
まあこの辺は特に解説することないです。
シルヴィア側に寄っていたルーフェンを、すんでのところで掴んで引き止めていたのが、トワリスだったり、ハインツくんだったり、ジークハルトだったりしたのでしょう
†終章†『黎明』
終章は次編のために書いたものなので、語ることはありません。
ミストリア編では色んな召喚師に接触していたエイリーンが、ついにルーフェンのところに来ました。
ユーリッドとファフリの話に関しては、おまけみたいなもんですね(笑)
ミストリア編を読んでいない人からしたら「いきなり誰⁉︎」って感じだと思うんですが、ここでミストリアの解説を始めると、折角サーフェリアで終わっていた余韻が消えるので、簡潔に済ませてます。
いよいよ点と点が繋がってきて、作者的にはホッと一息、という感じです。
いい加減長過ぎですね。解説あとがきも、そろそろ終わりにします。
他にも、本編が不明瞭で分からないことがあったり、気になる事がありましたら、このスレにコメントされるの嫌!ってことは全くないので、ご質問頂ければと思います。
とりあえず、言いたいことを一気にぶちまけたので、読みづらいとは思いますが、本編を読み進める一助になりましたら幸いです。
それでは、これにて、本当の本当にサーフェリア編完結とします。
もうサーフェリア編を更新することはないのだなぁと思うと、すごく寂しいですが、書きたかったシーンを沢山書けたので、達成感でいっぱいです。
主人公はダークサイドですが、これからもルーフェンとトワリスをはじめ、いろんな登場人物を応援してもらえるように頑張ります。
めちゃくちゃ長いですが、どの編もそれぞれ面白いと思ってもらえたら嬉しいですね。
ここまで読んでくださった方、誠にありがとうございました……!