複雑・ファジー小説

Re: What A Traitor!【第1章26話更新】 ( No.28 )
日時: 2018/11/11 22:41
名前: 日向 ◆N.Jt44gz7I (ID: on4ShBGJ)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode=image&file=6199.jpg

ⅩⅩⅥ

 ディンゴは地を蹴り、ロバートに肉薄した。
 刃毀れしそうな程に口内に据わった凶刃を噛み締める。
 今も穿たれた銃創からは生命が赤く流れ出している。剥き出しの闘争本能と全身の昂ぶりは不規則な脈拍となって血液を押し出した。
 酸素に触れ、黒く結晶化した紅が両者の間隙に飛び散る。
 空間を裂くディンゴの右拳がロバートの頬に影を落とした。
 眼球を狙う目潰し。人間の強膜は存外強靭で、並大抵の衝撃では破る事など困難である。ディンゴは力を速さに変える拳骨を目標の直前で開き、爪で角膜を抉り取ろうと試みた。
 しかし嘲りを含んだ笑声が耳朶に沿って飛び込む。歪む瞳の稜線、爛々と光るヘーゼルは確かに拳の切っ先を捉えた。

「は──手負いの獣にやられる俺では……」

 ロバートは再びその橈骨でディンゴの拳を薙ぐ。 

「無い!」

 そして彼の攻撃はロバートの太い腕に遮られた。
 交錯する骨肉は強い震盪を起こし、ディンゴは跳ね返ってくる衝撃に顔を歪める事しか出来ない。左頬の傷は歪んで裂創の繊維を伝っていた脂汗が飛び散った。
 硬い橈骨と細い拳の骨同士の衝突では前者に圧倒的な分がある。
 ディンゴは余計な衝撃を逃がす為、ロバートに弾かれるがままに右手を宙に遊ばせた。
 接地すると同時にバックステップで後退し、相手のリーチでは届かないところにて呼吸を整えようとする。
 ヒットアンドアウェイ。二度も見切られてしまった今もうこの戦法はロバートに通じないだろう、とディンゴは歯噛みするしかなかった。
 しかしその目は死んではいない、ヘーゼルを射抜く三白眼は静かに黒い炎を燃やす。

「抜かったな。同じ手を食うか、原始人め」

 ロバートはこれ見よがしに右手を掲げて指の骨を鳴らしてみせた。
 もともとディンゴは筋骨隆々な方ではない。野生の猛獣を思わせるしなやかな筋肉と強靱な撥条ばねが彼の強みではあったがそれでもやはり線は細かった。
 それに反してロバートは2m近くの巨躯と体重があり、重厚な筋肉の鎧に覆われている。【onyx】の中でも頭一つ抜きん出て体格の良い彼だったが近接戦闘訓練にもその特異性は現れた。
 小技をものともしないパワープレイと大振りの強力な打撃。武器を用いない丸腰で行う近接戦闘訓練において彼の右に出る隊員はいなかった。
 ロバートは唯の工作員ではない。共に【アカプルコ・カルテル】の本部に侵入していた仲間からの押し上げ操作はあったものの、彼は確かに【特殊高火力殲滅部隊「onyx」】の副隊長に収まる実力を持っていた。
 元より死角を利用し疾手で相手を翻弄する戦法を採るディンゴと、巨大な体躯と膂力で全てをねじ伏せるロバートの戦法には大きな違いがある。
 ディンゴの戦い方が死につつある以上、近接の肉弾戦闘に応じるしか無い。
 両者の型はそもそもの相性が悪かった。

「銃を抜くか? 俺は一向に構わんぞ」
 
 忌まわしい淡褐色が万華鏡のように中枢神経に射す。
 ディンゴはどうしてもトカレフTT-33で、ホローポイントの銃弾で目の前の男を喰うわけにはいかなかった。内なる肉を穿つ鋼鉄の花など【彼女】への手向けにはならない。
 野犬は今更殺意を隠そうともせずに唸った。
 この両手で曝く筋繊維に、晒す脂肪に、引き摺り出す臓物に意味があると信じて野犬は牙を見せた。

「ア……? テメエの方こそ防戦一方だろ、ボールズヘッド。そのドタマに乗っかった不能マグナムでも抜いてみろヨ。怖くてチビっちまうかもナァ……?」
 
 ディンゴは折節襲い来る銃創の痛みと残っていない退路を誤魔化すように口角を吊り上げる。
 そしてトカレフは疾うに弾切れのホールドオープンだった。弾薬は持ち合わせているが入れ替える時間も余裕も無い。この狡猾な男がそれを許すはずも無かった。
 旧友を訪ねて商会の門を叩いたのは組織と今回の国境戦争の為ではない。己の私怨を晴らすための布石と場の攪乱。全てはこの時の為だった。
 しかしディンゴも組織に身を置き、隊長という肩書きにある以上カルテルを勝利に導かねばならない。そのために商会に依頼し、戦闘員を利用した節も勿論あった。浩文とファティマの両名の力は予想以上のもので、自分が戦線を離脱したとしてもまだ猶予はあるだろう。
 そして戦場に立っているのは他でもない南米の不敗神話【特殊高火力殲滅部隊「onyx」】だ。今は共に戦ってきた朋友を信じるしか無い。
 だが眼前に立ちはだかるのは圧倒的不利。計算が狂う要因となったイレギュラーは幾つもあった。
 小型機関銃に撃たれるという近接戦闘におけるセオリー違反にて負った傷。そして仕舞いに掘り起こされたのは捨て去った己の出自。 
 ディンゴは紛れもない正真正銘の密林の民だった。
 ロバートが突き付けた事実に嘘は一つも無い。
 文明の人工光が若かりしディンゴの網膜を焼いたのとほぼ同時期、彼は全てを失った。しかしそれは自ら選び取った道で代わりに初めて手にするものもまた数多くあった。
 前隊長ディエゴ=ロア=アルバノス。彼の名を再び耳にすることがあろうとは。
 あの忌まわしき【コード=エンジェル】にて彼は禁断症状で半狂乱になった仲間の凶弾からディンゴを庇って戦死した。ディンゴの首から提げられている黒いオニキス石の首飾りも死の間際に彼から受け取ったものである。己の首が落ちようとも地には堕とせぬ【onyx】の名前。彼の死の原因となったコードを探られるのは自身の内臓を暴かれるような感覚だった。
 そして出会ったのは。

『私の名前ね、スペイン語で【愛しい人】っていう意味があるんです』

 また幻聴がした。追憶は必ず古傷の疼痛を呼ぶ。

「何を言うかと思えば。この手で貴様を再び失望させた果ての死に意味があるんだろうが」

 ロバートはディンゴを遙か上から見下ろした。嘲笑うかのようにディンゴの大切なもの全てを目の前で引き裂いてみせた男。
 霧散していく疼痛と幻聴の中ではっきり見えたのは絶対的優位に立つ強者の嘲笑。それが分かっているからこそディンゴは爪を出し、牙を剥く。格好も何もない。
 負け犬の遠吠え。弱い犬ほど良く吠える。そんなものクソ食らえだった。

「死ぬのはテメエだ」

 もう届かない筈の爆風がディンゴの前髪を揺らす。

「出来るものなら」

 数分の間もなく両雄は再び激突した。
 ロバートは吼え、拳で空を切る。
 迷い無い右ストレートがディンゴの頭目掛けて振り下ろされた。ディンゴは風斬りの拳骨を皮一枚のヘッドスリップで躱す。しかしその風圧から厭でも察せられる威力に戦慄した。眼前の空気が消し飛んだのだ。大振りでもテレフォンパンチでも無い凶器、一発でも直撃すれば骨はひしゃげ肉は潰れ皮は切り裂かれるだろう。
 ロバートは躱されたと見るや否や左のフックでディンゴの顎を狙いにかかった。脳震盪など起こせば瞬時に雌雄は決着してしまう。ディンゴは動体視力と脳をフル稼働させ、すんでの所で顎を引く。筋張った固い拳が目の前を過ぎる。命を刈り取る豪速に鼻先と前髪が焦げた。
 フックの反動で捻りを加えられたロバートの上半身が一弾指停止する。ディンゴはそれを見逃さず好機としてローキックで体制を崩しに掛かかった。半身を捻ったのち重力に任せて相手の膝の腱へと鋭角に脛を叩き込む。銃創から血液が噴出するのも構わず拳を握り締めて末端に残る力の残滓を足に乗せた。
 全てを振り絞った下段蹴りはロバートの腱にクリーンヒットする。
 しかし彼の体幹は揺るがされることも、その表情を苦悶のものに変えることも無かった。膝を柔らかくして衝撃を地へと逃がしつつも土台は踏ん張りが効いている。
ディンゴは驚愕を瞳に落とし込んだまま、柔なブローをロバートの左頬目掛けて打ってしまう。
 鈍い殴打音とその感触で拳が彼に届いたことを知ったが、ディンゴにはまるで敢えて被弾したかのように見えて仕方が無かった。ディンゴは拳で弾いたロバートの頭部を見る。左側に跳ね飛ばされた顔に嵌め込まれた淡褐色と目が合った。
 瞳孔の開ききったオニキスを凝視する爛々としたヘーゼル。
 ロバートは肉の寄った左頬を歪めて、笑った。

「やはり、軽いな」

 絶望に呑まれそうになった。
 一体どうすればこの男をねじ伏せることが出来るのか。
 小手先の拳も足も効かない、そして銃はホールドオープンのままでは鉄の塊に過ぎない。
 しかし一つだけ手は残っていた。しかしそれが成功する保証も何処にもなく、もしそれが失敗して潰えてしまったならば真の意味での死がディンゴを待っている。
 だが最奥にくるのは、二十数年胸に抱き続けてきた殺意をそんな最後に代えても良いのかという自問自答だった。
 圧倒し、この手で奴を引き倒し、これまでの怨嗟全てを以て酷く責め抜いて殺してやる筈だろう、と。自身の全てを奪い今更暴いた奴に安寧とした死を与えるつもりか、と。
 ロバートが手強い事はディンゴも重々承知だった。二十数年前の邂逅にてもその実力差をまざまざと見せつけられ、敗北した。何一つ守ることの出来ない負け犬で、どうしようもない弱者だったのだ。
 自身の命などもはやどうなっても構わない。若かりし頃にエンジェルダストのバッドトリップによる銃乱射事件で、この男に全てを蹂躙し尽くされた時点で、死んだようなものだった。歩く死人に命など惜しいものか。
 自分が死んでいれば良かったのに、と後悔は尽きない。こんな自分に命を遺した彼らの弔いに何が出来るだろうか。自分のせむとす事は正解か、不正解か。果たして自分が許せるか。過去の自分が未来の自分が、今の自分を。 
 しかしディンゴに血迷うほどの血はもう残っていなかった。
 失血に震える手で懇願するように左頬に触れ、【愛しい人】を想う。

 守れなくて、悪かった。
 あの時から何一つ変わらなかった。オレは弱いままだ。
 なあ、こんな決着でもオマエは許してくれるか。

 瞳を閉じても答えなど当然返ってくる筈も無い。
 ディンゴは左頬を歪めて、苦々しく笑った。
 そして須臾にバックステップでロバートから距離をとる。もはや軽やかな足取りでは無かった、疲労物質の溜まりきった筋肉を酷使する泥臭さが付き纏う。

 卑怯でも、無様でもいい。矜持すら放れ。此処はテメエの領分だろうが、狂犬。

 ディンゴは深く息を吸って、浅く吐いた。
 ロバートは透明な唾を吐き捨てて不敵な笑みを浮かべる。未だディンゴのカウンターを待つ余裕を見せる。そして野犬はそれに乗った。罠だろうが、どんな顛末が待っていようがそれに乗るしか無かった。
 体重を下に移動させ、トップスピードに移行すると共に死角に入る。並大抵の人間ならば捉える事すら困難な獣の構え。しかし立ちはだかる男はいとも容易くそれを破る、そんなこと百も承知の大博打だった。
 そして鉄錆に浸食された撥条を使って最後の力と速さを拳に乗せる。風を切るスピードと空間を制圧する膂力。これが正真正銘最後の賭けだった。

 しかし伸ばした拳は呆気なく彼の腕に叩き落とされ、容赦無い殺気が籠もったクロスカウンターが被さる。
 ロバートは愉悦に顔を歪ませ、圧倒的勝利を確信した。

「何度やっても──」

 だがしかし、先に相手を捉えたのはディンゴのブーツ底の仕込みナイフだった。
 ロバートの脇腹にディンゴの蹴りが叩き込まれようとする。
 急襲は見切られていた筈だった。ロバート自身もディンゴの動きなど見切っていた筈だった。
 しかしそれこそが活路。ロバート=コスターという男は自身の力に驕っていた。
 自身を絶望の淵に追い詰めていたぶる為に決して銃を手にしないであろう事も。ディンゴは彼の性質を見抜き、そして全てを諦めた。
 どうせヒットアンドアウェイの仕舞いには拳が飛んでくるだろうと、そんなもの軽くいなせると。ロバートは密林の野犬を過小評価していたのだ。そして彼の領分である密林の疾手を完全には捉え切れていなかった。
 どんな不利な状況にあっても自身の戦法を曲げなかったのは、その布石。
 どれだけ牙を剥いても爪を立てても叩きのめされ、正攻法では敵わないと突き付けられた末の断腸の選択だった。
 真っ向からねじ伏せて、【彼女】への手向けとしたかった。しかし、全てを出し切って尚、届かなかった。きっと手負いでなくとも彼には最初から敵わなかった。
 【愛しい人】の全てを奪った男への復讐として選んだのは自身への裏切り。
 努力などという生ぬるい言葉には反吐が出る、そんな言葉で片付けられるような人生も送ってきていない。今日この時に復讐の為に研鑽を重ねた自身を裏切ってまで、殺す事を選び取った。
 黒いインナーを裂いて表皮に触れる。その凶刃を視認した大きなヘーゼルは見開かれ、唇は間抜けな音を漏らした。

「お、あ」

 ディンゴは踵をロバートの腹により深く沈めた。刃毀れするほど奥歯を噛み合わせて疲弊しきった身体に鞭打つ。筋肉が軋んで裂創から銃創から血を噴くがそれでも全身に力を込めた。ロバートの脇腹に突き立てたナイフを力に任せて横真一文字に奔らせる。
 ぐじゅ、と汚らしい水音がしたのち、鮮血が迸った。
 ロバートは目を白黒させて、呻きながら膝をつく。ディンゴは刃を引き抜くと血の付着した靴底でロバートを蹴り倒した。

「──が」

 ディンゴが男の血の染みた黒いインナーを引き裂くと、自らが創った傷から赤黒い内臓が飛び出ていた。
 野犬が無感情に両手で傷口を容赦無く広げる。血反吐が詰まったロバートの気管からは濁った音が漏れ出た。ディンゴはざっくり開いた傷口を見下ろすと感情の籠もっていない目で腹腔に手を突っ込んだ。

「ぅあ゛」

 ロバートは感情の残滓を振り絞って自分の体内を掻き回すディンゴの腕に爪を立てるも、野犬は腹から腕を引き抜いていとも容易く力無いロバートの手を振り払う。これまでの力関係は逆転、太陽が落とす二人の影は大いなる自然の弱肉強食に他ならなかった。
 ディンゴは掌を天に透かして地面に落ちる手首に踵を落とす。指に繋がる腱を切断する為だった。腱を切ると指先は繊細な制御を失う。顔を苦悶に歪めて手首から命を噴き出すロバートを一瞥して、ディンゴは再び傷口に手を突っ込む。異物を突っ込まれて痙攣する腹腔をぐじゅぐじゅと探ると血が止め処も無く溢れて返り血に汚れた。
 そして一等柔らかい肉の管を力任せに引っ張り出す。露わになった小腸を引き摺り出すとロバートは目を反転させ奇声を上げた。
 ディンゴは引き掴んだ小腸を叫喚する入り口に押し込む。唾液と血反吐に塗れるのも構わず喉奥まで己の拳と肉管を詰め込むとロバートの身体は魚のようにびくびくと跳ねた。そして彼の傍らに立つと腹から繋がったままの小腸を口に含ませた顎を爪先で勢い良く蹴り上げる。
野犬の選んだ復讐は自身の内臓を生きたまま食い千切らせる事。神話を擬える事も高尚な理由も必要なかった。かち合った歯の隙間からじゅぶと内容物が漏れるのを見る。
 この男に左頬を削がれた時の自分とよく似ていた。鼻水と涙と血液と唾液と吐瀉物と脂肪と肉片に汚れた顔面。筋肉の弛緩で漏れ出た排泄物が放つ異臭が鼻を衝いた。
 そして身体の孔という孔から体液を垂れ流す宿敵の耳元で囁く

 人食いの野蛮人と畏怖されるヤノマミ族。しかし彼自身人肉を食ったことなど無かった。

「テメエの糞袋の味はどうだ。美味いカ? 死ぬ程美味いヨナァ」

 やがてロバートは全身を痙攣させた後、白目を剥いて動かなくなった。



 不思議なことに血を流し横たわる怨敵の亡骸を目の前にしても新たに湧き出た感情など何処にも見当たらなかった。
 自分が受けた以上の痛みを、【彼女】が背負わされた以上の痛みを以てもっと惨たらしく殺してやりたかった筈なのに。野生のままに遺体を損壊しても構わなかった。だがそれはしなかった。ただ感情の振り幅を喪失しているだけだろうか。否、それとも。
 ディンゴはよろよろと足を引き摺って、死体から離れるとその場に座り込んでしまった。

「──アー、クソ。疲れタ」

 そして仰向けになって草の生い茂る地面へ倒れ込む。
 全てを清算しきって返り血と痛みに塗れた身体を休めたかった。疲労困憊の身で眠り落ちて、名も無き密林にて生を終えたとしても一向に構わない。
 しかし今となって彼は一匹の野犬ではなかった。彼にはいま現在も己の命を燃やして戦っている仲間がいる。襲う疲弊に目を閉じても彼岸にて微笑む【愛する人】の姿を見つけることなど出来なかった。
 走馬灯を見るのはまだ早い、感傷など今は捨て置けば良い。

「ココでくたばってるワケにもいかねェか……!」

 ディンゴは笑う己の膝に活を入れて立ち上がる。叩き込まれたダメージと酷使した筋肉が軋んで身体の至る所が悲鳴を上げたが、そんな事になど構っていられなかった。
 野犬は足を引き摺りながら国境を南に下り始める。
 背景に鏤められていた銃声も今では遙かに南に遠のいてしまって、もはや断続的にしか聞こえない。
 しかし聞こえる、戦争は未だ止まない。キリングマシンを形成する一個師団の仲間たちは忠実にその作戦を守り、戦場に生きているのだ。
 ディンゴは息を深く吐いて、満足に動かない足を前に進めた。 

 全ては思惑通りに。
【アダムズ・ビル】一掃の作戦完遂はすぐ近くまで訪れていた。

ⅩⅩⅥ