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複雑・ファジー小説
- Re: 催奇形性シャングリラ ( No.1 )
- 日時: 2018/07/11 16:05
- 名前: 夜耽 ◆N.Jt44gz7I (ID: XCi1wD91)
自食症。
その三文字はいやに青い光を放っていた。
私には幼い頃から人には言えない悪癖があった。
余る自分の肉を食む。そんな癖。
いつからそんなことするようになったかなんてもう覚えていないけれど。
白くなった指先の肉片を犬歯でねじ切る。途中で痛くなってもお構いなしに。
淡い鉄錆と水分を含んだ肉片を唾液と一緒に飲み込んだとき、私は頭が冴えるのを感じた。
治りかけの傷に張り付くカサブタなんかもつい口にしてしまう。
引き千切ったところからまた血が滲んで、傷が化け物みたいに開くのを私は毎回見るんだ。
「自食症……っていうんだ。なんかかっこいーじゃん」
昨日も友達からその指どうしたの痛そうなんて言われちゃったけど、うまく誤魔化せたのかな。
料理してたら切れちゃって、だとか、洗剤が合わなかったのかも、なんて有り得もしないことなのに困り笑いを添加物にして色付ける。
あんまりやり過ぎると絆創膏のお世話にならなきゃいけないし。無くなるたびに買ってたらそれこそミがもたない。
「別に好きでやってるわけじゃないしなあ。どうしよ」
私は皮がめくれて中が露出した指先を見る。
また溢れてきた体液は液晶に輝いていた。
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