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複雑・ファジー小説
- Re: 催奇形性シャングリラ ( No.2 )
- 日時: 2018/07/12 23:37
- 名前: 夜耽 ◆N.Jt44gz7I (ID: XCi1wD91)
「別に死にたいわけじゃないんだ。今が辛いわけであって、決して未来に希望を抱かないわけじゃないし、まだまだやり残したことがある。そうだね、出来るなら僕が見たくないものは一切見たくない。僕が否定される世界になった瞬間から、眠たくなっちゃうね」
対面に座るそいつは枯れ葉色をしたレモンティを猫の頭が付いたマドラーでかき混ぜた。
ぐちゅぐちゅじゃぶじゃぶと無遠慮に泡を立てる。
「随分と傲慢だね。私はおかしいと思うけど」
私は消えない気泡を見ながら正直な感想をレモンティに零した。
「君までに否定されたらもうしょうがないじゃないか。ああ、消えたい」
「勝手にしたらいいじゃないの。君が消えたとしてね、最初の方こそ悲しいけど多分あとからどうとでも出来るから」
私は何を言っているのだろうか。
流石にまずいかと思っていいわけがましくそいつに視線を向けると、そいつは目尻を下げてグラスの結露を人差し指でなぞっていた。
「でもやめらんないんだよなあ。本当に何言ってるんだろ、多分今年も僕は死なない」
「私はこの季節が来たなあなんて思うけど」
フチから垂れるレモンの酸は、ぐらぐら煮立たせるような模様を描いてお茶に溶けていった。
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