複雑・ファジー小説
- Re: ヒノクニ ( No.21 )
- 日時: 2020/07/24 21:24
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: YGRA.TgA)
「ぐおぁぁああああああっ!!」
「ぎゃああああああああああああああああああっ!!」
……とは言ったものの、怖い! 怖すぎるんですよ!!
護法を強制的に発動させる注射器を打ち込んだ盗賊の部下たちの顔色は真っ赤だったり真っ青だったり……、口から涎だらだら流れてたりとか首の方向人間のものとは思えないぐらいのものだったり……。
正直人間とは思えない——いや、もう『人間には戻れない』んだ。繋は言った、「この粗悪品を使った人間は使用後死ぬ」と。
——……もうなりふり構っていないのだ。
わたしに突撃してくる盗賊たちを殴り倒す。接近する種類の「物理系護法」はこうやって無理矢理殴って解決する。……のだが……。
「ひひっ。っひっひひ……」
気味の悪い笑みを浮かべる盗賊たち。こいつらは遠隔や罠といった種類の護法を引き出している——見覚えのある紫色の煙を起こしている。
「げほっ」
命のかかわる煙——! くそ、面倒くさい。視界もさえぎられるし、吸っちゃだめだ……!
何とか棒があったら手当たり次第に殴れるのに……!
でも言い訳している暇はない、わたしは近くにいる盗賊共を力いっぱい蹴り倒す。
もう何だかんだで15人ぐらいはやったと思う。
「おい! 皇帝の遣い! 頭領がこの棒アンタのだって言ってたから持ってきたぞ! てか重い! 重すぎるぞこれ!!」
「本当!? こっちに投げて!! 余裕が無い!!」
「おうよ!!」
下着泥棒たち5人掛かりで何とか棒がわたしに投げ渡される。
ようやく返ってきた……!
でも、感傷に浸っている暇はない。薙ぎ払う。
わたしは一歩、力強く踏み出す。
その衝撃で地面が割れる。そして、また踏み出す。
「さっさと潰れろ」
——残り、20名。
この人数、この距離であるのなら問題なく殲滅する。恭順も平伏も一切認めない。
わたしは横一線に棒を振る。
次の瞬間には、盗賊共は全員地に伏していた。
「ふいー。終わったー……」
緊張がほどけた感じだ……。怖かった、怖かった……。
負けるかと思った、ありがとう何とか棒。お前は偉大だ。
今この瞬間から大切にすると誓おう。
ほっとしたのも束の間、何とか棒から布らしきものがするりと落ちてきた。
「…………んん?」
反射的にその布を受け止める。
これは、これは———……。
下着だ。下着だ?
「あっ! 悪い嬢ちゃん、さっきまで下着干してたんだよ! それ確かに重いけど、真っ直ぐで落ちないから重宝したんだぜ。手放すのが惜しかったぐらいだ!」
「まず人の私物で下着干してんじゃね——!! この腐れ外道共が———っ!!」
ふざけんなよ!? 何とか棒、こんな扱い受けたけど結構な代物なんだぜ!? 上様言ってたもん!!
ばれたらわたしが干されるわ! いや、首飛ぶわ!!
やっぱ下着泥棒って碌なもんじゃないね。