複雑・ファジー小説

Re: 君は地雷。【短編集】 ( No.1 )
日時: 2018/05/22 19:43
名前: 脳内クレイジーガール ◆0RbUzIT0To (ID: CSxMVp1E)

【 君は地雷。 】

 あっくんは、あたしのことを地雷だと言った。最初は「地雷」の意味がよくわかんなくて、あたしは「なにそれ」と聞き返してベッドにごろんと寝転んだ。あっくんが応えてくれるわけもなく、あたしは何でかすごく気になって辞書を開く。

 地雷っていうのは、兵器だった。地上や地中に設置された爆発する兵器。
 
 あたしはあっくんに危害なんて加えないし、爆発だってしない。あたしがあっくんを殺しに来たとか、ある意味SFっぽくて、それはそれで面白いけど。
 ばーんとあたしが今この瞬間爆発したら、どれくらいの規模になるのだろう。あたしだけが勝手に死んじゃうくらいの自滅爆発かも。それか、あっくんとあたしだけが死んじゃう無理心中みたいな感じかな。それとも地球を丸ごと焼き尽くすくらいの大爆発とか。ああ、想像するだけでわくわくする。

 「ねえ、あっくん」

 パソコンから目を離さずに、譫言みたいに「なに」と呟いたあっくん。あたしはベッドの上で足をばたつかせながら、辞書を閉じた。あっくんがこっちを見る気がさらさらないのはわかっていたから、あたしは無理やりあっくんにちゅーして押し倒してみた。

 「あっくんは、地雷は嫌い?」

 やり返しみたいな濃厚なキスに、あたしは自然と彼の背中に腕を回していた。白いワンピースが淡く透けているのは、あっくんを誘惑するためなんだよ、って言わないけどね。

 「君はいつか、きっと爆発しちゃうよ。そして俺のもとからいなくなる」

 あっくんの言ってる意味はよくわかんなかった。だけど、あっくんの甘いキスに今だけは溺れていたいと思った。あっくんは、きっといつかあたしがいなくなると思っているんだろう。あたしも、おんなじこと考えてたよ、とは絶対言わないけど。
 五月の爽やかな風が窓からふわりと感じられた。この柔らかな優しい雰囲気が、いつかあたしが爆発したら消えちゃうんだろうね。

 「違うでしょ。あっくんがいなくなっちゃうんじゃん」

 赤紙は、破り捨てることができないから。だから、あっくんとこの先ずっと一緒にいられない。今、あたしが爆発して世界丸ごと焼き尽くせたら、あたしは天国でずっとあっくんと幸せになれるのにね。