複雑・ファジー小説
- Re: 君は地雷。【短編集】 ( No.22 )
- 日時: 2019/06/21 15:56
- 名前: 脳内クレイジーガール ◆0RbUzIT0To (ID: sc915o9M)
【 はろーはっぴーわーるど 】
「死んじゃえ」花ちゃんはこのメッセージを打った時、どんな表情だったんだろうなって考えてみる。わかりっこしないのに。画面越しで私は「そうだね」とキーボードをたたいた。でも送信することができなくて、結局バックスペースを四回たたく。
花ちゃんは私の味方だ。五年前にとあるサイトで出会って、私から声をかけた。のちに同い年ってことが判明して、馬鹿みたいに喜んだ。どんな子だろう、って何度も何度も彼女の容姿を想像して、やっと見つけた彼女のSNSで顔はわかんないけど友達と一緒にお洒落なカフェに行ってた写真を見た。三年の月日をかけて花ちゃんの近くまでいって、花ちゃんの友達になった。花ちゃんは私の全てだった。
なんだか全部上手くいってる気になってたんだろう。学校でいじめられてることも、親に暴力を振るわれてることも、毎日死にたくなってることも花ちゃんさえいれば何とかなるって。花ちゃんが私と仲良くしてくれたらそんなのどうでもよかった。痛みも悲しみも苦しみもそんな現実は皮膚を傷つけるだけ。花ちゃんさえいれば、それでよかった。
「最近あんまり浮上しないよね? どうしたの、何かあった」
スマートフォンの通知に花ちゃんのメッセージがポンと映し出される。わあい花ちゃんだ、って喜ぶけれど、口角は上がらない。あれ、ご飯食べれなくなってから何日たったっけ、思い出せないくらい前のことじゃないはずなのに、脳がちゃんと仕事してくれないや。手に力が入らない。スマホを取ろうと手を伸ばすけれど、つかんだ手に力はなくて、当然のように真下に落ちた。手の甲が湿った。涙が出たのだろう。目頭がぐわっと熱くなって、ぐっと鼻のあたりが痛くなった。気持ち悪い。
「死にたくなっちゃった」
殴ることしか能のない父親も、料理を作ることも食事代金も一切くれない母親も、怪我の多い私を気持ち悪いとか異端だと嘲笑って除け者にする同級生も、みんな嫌いだ。でも、私が悪いんだ、私がいい子じゃないからいけないんだ。私がいいこだったらきっと、こんなことになってない。吐く。胃がむかむかする。嫌だ。助けてほしい。
花ちゃんの返信は一分もかからないうちにきた。花ちゃんは絶対こんなこと言わない。私の大好きな花ちゃんはこんなこと言わないよ。でも、わかってる。私の大好きな花ちゃんは裏で私のことを気持ちの悪いストーカーだって言ってること。知ってる。花ちゃんの答えに私は「そうだね」と入力して、ちょっと考えて、ゆっくり消した。
「花ちゃん大好きだよ」スマホはベランダから勢いよく放り捨てた。一緒に私は足を投げる。地面と対面するころにはもう記憶はないだろうから、大好きな君へ愛の告白だけしておくね。