複雑・ファジー小説

Re: 運命を変えたその先は。 ( No.2 )
日時: 2018/05/30 01:31
名前: ピオーネ (ID: sNU/fhM0)


March 17th Sunday
weather:Sunny






今日はとてもよく晴れていた。春風は綺麗に咲き誇る花たちをゆらり、ゆらりと揺らしていく。

まぁ、廻りの樹海に1歩入ればどんなに晴れていてもそんなに光は差し込まないし、春風なんて木々に阻まれ入ってこないのだけど。


「マスター。今日は誰か来そうですか?」


「さぁ?そんなの知らんし興味ない」


「そうですか…」


マスターは変わった方だ。話しかけても面倒くさそうにあしらわれて終わる。会話もそんなに続かない。
助けてもらった分際で文句なんて言えないけれど。


そんな静寂に包まれた店内に『チリン、チリリリリン♪』という甲高い音が響いた。店のベルだ。

時が止まったような店内に入ってきたのは、一人の少女だった—















Episode:A『Lost friendship』
ー星の子とココロの友達ー









人が増えても静寂が続いていたが、遂にマスターが口を開いた。


「キミ、何しに来たの。自殺しに来るならもっと奥に行けばいいものを」


なんと酷い言い様だろう。マスターは来客に対していきなり自殺志願者と決めつけ店から追い出そうとしている。


「…マスター、来客に対していきなりそんなこと言うなんてあんまりです。そもそも自殺志願者ならここにわざわざ入ってこないでしょうし」


「そんなの知ってるさ。ここに来るやつはみんな俺に助けを求めてくるんだからな。ちょっとからかっだけさ」


「随分と度の過ぎたからかい方ですね…」


「別にいいじゃん。そんなの俺の勝手だろ。んで、お前さん、なんでここにきたの?」


「あ、えっと…その、この樹海に過去に連れて行ってくれる凄い魔導師がいると聞いて…。その人には『ノワール』っていう通り名?みたいなものがあるとか…。で、意を決してこの樹海に入って、ずっと歩き回ってたらここにたどり着いたって訳です」


「ふーん。まぁ、その通り名は確かに俺のだけどキミがいう『凄い魔導師』ではないと言っておく。んで、あんたの名前は?」


「私は『ワカ』って言います。私は彗星…通称、ほうき星に乗って旅する一族の1人なんです。」


「ふーん。…んで、キミのご用件は?内容によっては断るけど」


「私…5年前にクリスティアン王国に1ヶ月だけ降り立ったんです。あの王国には『星くず祭』っていうお祭りが年に一度、1ヶ月かけて開催されるので…。ずっと星の上にもいるのもあれですし。それで、ある日公園で本を読んでたら同年代くらいの子達が遊ばないかって誘ってくれて。それで一緒に遊んだらとても楽しくて。私たちはすぐに仲良くなれていたと感じました。私はその時はまだ自分が星の民だということは言ってませんでした。帰る時に伝えればいいかなって思って…」


「マスター、この方はあまり後悔してそうには見えないのですが…」


私が小声でマスターそう聞くと彼は小声で

「こういうのはラストの一週間から最後の日にかけて何が悪いとこが起こるもんだ。お前は指示があるまで黙って聞いてろ」

と返してきた。
とりあえず私は黙って聞いておくことにした。

「もうすぐ次の場所へ出発する頃のことでした。私たちは小さなことで喧嘩してしまったんです。みんなはバラバラになってしまい、伝えようと思っていた私の正体も言えなくなってしまいました。結局、私は何も言わずに国を立ち去りました。次の年も、その次の年も何となく罪悪感とか、嫌悪感で中々星から降りれずに1ヶ月を過ごすことが大半を占めました。なので思ったんです。『あの時、みんなを仲直りさせていたら、私はもう一度みんなと笑い逢えたのかな』って。だから—」


「『みんなを仲直りさせて運命を変えたい』ってことだろ」


「そうです。私の依頼、聞いていただけますか?初めての友達に忘れ去られていくのは嫌なんです!」


「うーん…あ、いいこと思いついたわ。あんたの頼み、聞いてやるよ。『どんな未来でも受け止めるって覚悟があるのなら』な」


「私は、どんな結果になろうともそれを受け止める覚悟はあります。1度限りのチャンスを逃したら諦めるだけです。逃した私がわるいのですから」


「分かった。んじゃあんたを過去に送ってやるよ。それと—」

依頼者のワカさんと話していたマスターは私の方へと振り返り、こう言った。

「付き添いとアシスタントとしてこいつを連れて行け」


「…えっ?」

私はいきなり、難題を突きつけられたような気分になった—


......................................................











「え、そんなことでいいの?あの子がいいって言ってくれるなら心強いし、私は別に構わないけど…」


「フェイ、行 く よ な ?」


「ふぁ、ふぁい!」

なんだかマスターから異様な圧を感じる…。思わず変な返事をしてしまったが、行かないと言うよりはきっと遥かにマシだと思った。


「んじゃ、決定だな。そんじゃ、2人を過去に送るからそこに立って」

そう言うとマスターは魔法陣の様なものが書かれた床を指さした。


「あ、あの、マスター」


「ん、何?」


「私はいつ帰れるんでしょう?」


「依頼者の依頼をクリアしたら。大体後悔する事件が起こる一週間前くらいに送るから、向こうに大体2週間くらい滞在することになるんじゃないかな」


「あ、はい…頑張ります」

2週間もマスターのいない場所で過ごすことは出来るんだろうか?私は今から不安である。
でも、仕方がない。やるしかない。そう思った私は魔法陣の上に立った。


「そんじゃあ、いい旅を—」


マスターがそういった後、部屋に眩い光が満ち溢れた—


......................................................

















「さて、2人とも行ったか。まぁ、何かあったらすぐに向かえばいいし。さて、あの子もいなくなったことだし、調べものの続きでもするかな」


そう言うとハウルは書物庫の方へと向かうのだった—

Re: 運命を変えたその先は。 ( No.3 )
日時: 2018/05/31 01:25
名前: ピオーネ (ID: O/vit.nk)



【Ⅰ】『これから解決しなければならない問題を気にもとめず雪は降る』前編















Pluviôse Brocoli duodi.
Temps nuageux plus tard la neige.




















目の前の眩い光が消え、チカチカする目をゆっくり開けると、そこには中世のような可愛らしい街並みが広がっていた。

横に向くと、ワカさんと目が合ったので挨拶をしておいた。


「あ…。ワカさん、改めてよろしくお願いします」


「こ、こちらこそよろしくお願いします。そう言えば、あなたのお名前は?」


「私はフェイニスです。マスターからはフェイって呼ばれることが多いです」


「そう。じゃあフェイちゃんって呼んでいいかな?」


「あ、大丈夫ですよ」

ほぼ初対面のままマスターに半強制的に同行させられたのだ。とても気まずい空気が流れている。


「こ、この国でいう星くず祭、通称『Star Dust Festival』はプリュイヴォーズの時に丸々1ヶ月かけて開かれるビッグイベントなんだ!その時は学校も休みだし仕事も週2日とかになるんだって!」


「へぇー…。そうなんですか」

こんな国もあったのか。私はまだまだ世界を知らないと感じた。


「ところで…今日は何日の何曜日なんでしょう?私はここの国の暦が全くわからないので…」


「今日はBrocoliだよ。んで、曜日は2曜日。他の国で言うと2月の12日かな」


「なんか不思議な暦ですね…。というかよく分かりますね」


「一応1ヶ月暮らしてた身ですから!因みにこの暦は昔起きた大きな革命が起こった時に制定されたんだって!」


「へぇ、この国の独自の歴史から生まれた暦だったんですね」


「うん、そうみたい…それと、一応同い年くらいの女子同士だし、お互い気楽に呼びタメにしようよ。なんかぎこちない感じがする」


「そ、そうですね…」


「あ、また敬語使った。もー…今からフェイちゃん敬語禁止!」


「えぇ…まぁ、分かりまし…じゃなかった。分かった!」


敬語禁止令なんて…。まぁ、マスターじゃないしたまには…。

「うんうん!その方がいいよ!それじゃあ、本題である私の友達に会いに行こっか」



......................................................








「紹介するね!私の友達のフェイだよ!」

彼女の友達に会うことは出来たのだが、開始数秒でこの有様である。友達って、出会ってまだ10分も経ってないですよ。お客様。


「あ、フェイニスです。みんなからはよくフェイって呼ばれてます」

うっかり敬語を使ってしまった。何かワカさんの方から視線とオーラを感じるような…。うん、気のせいだろう。


「ふーん。お前、フェイって言うのか。俺はアルダ!よろしくな!」


「私はロコです!フェイちゃん、よろしくね!」


「僕はベストリー。フェイニスさん、よろしくね」


「アタシはティアラよ!よろしくね、フェイ!」


「アタシはマベリアっス。フェイさん、よろしくお願いするっス」


「皆さん、よろしくお願いします!」

なんだかまたワカさんの方から視線とオーラを感じたが、軽く流して置くことにした。
私から敬語を付けるくせはまだ取れないようです—