複雑・ファジー小説
- 黒き原初 ( No.19 )
- 日時: 2018/06/13 15:35
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
参章 魔眼の龍神
龍の討伐
緊急依頼が発令され、冒険者達が龍王のダンジョンへ向かう。約百名いる。馬車で移動し、今着いたところだった。ジョージもこれに参加していた。
「よし、これからドラゴンを討伐するぞ!気合いを入れて、引き締めて行こう!」
冒険者のリーダー格の男が冒険者達の士気を高める。おぉー!と大きな声があがり、ダンジョンへと突入する。
沢山のトラップを回避し、モンスターとも戦う。
「よし、このまま行けばボスの部屋だ!」
冒険者達は1人も負傷者を出さず、ボスの部屋へと向かう。
目の前に大きな扉がある。それを一気に開く。冒険者が流れ込む。
しかし、そこにはモンスターはいなかった。
「……なんだ?トラップか?」
その前に解除した筈だ。モンスターは誰かに倒されたのか?
「おいおい、余所見をするな。」
ジョージは背後を振り向く。そこには焼け焦げた死体が積み重なっていた。
「ひっ!」
残された冒険者は悲鳴をあげた。ジョージも恐ろしくて、足が震えた。
「人間は、つまらないよな。」
何処からか聞こえてくるのか、全く見当もつかない。しかし、近くにいることは確かだ。
「ほらほら、俺の事を探してみろ。その前に全滅するかもしれないが。」
声の主が近づいてくる。見えないのだが。
バサッ!と快音が響く。1人の冒険者が斬り付けられた。その後もそれが続く。ジョージは逃げようとしたが、目の前に迫っている恐怖に打ち勝てず、足を震わせている。
「はぁ、如何にもこうにもさっぱりしないな。」
声の主は飽きかけていた。ここまで弱いとは思わなかったのだ。最後の1人、ジョージを殺そうとしたその時。
「あらあら、つまんないわね。やっぱりしょぼい奴ばっかだったのよ。」
『蘇生しようと思いましたが……ここまで弱ければ必要無いですね。』
「ほらほら、そんな事言わないの。」
山羊と美女と少年が何処からか現れる。
《……ふーん、面白そうじゃねぇか。》
ブレスレットの中から巨大な何かが出てきた。声の主は驚いている。しかし、それもつかの間、ジョージを殺そうとする。
「『完全なる防御』」
少年が言い放つと壁ができたかのように、その攻撃を無効化した。
「ほら、出て来なさいよ。『無効化』」
美女は透明化を無効化した。
そこには、龍の鎧を纏う、男が立っていた。
「ふむ、なかなか面白そうだな。」
龍は微笑む。少年は顔の表情を一つも変えない。ただ、龍をジッと見つめて。そして少年は口を開く。
「ねぇ、賭けをしようよ。」
何を言うと思えば、賭けをしよう、と言う言葉が出てきた。少年は笑顔だった。
「俺達が勝ったら、君は仲間になる。もしも負けたら、君に全てを与えよう。」
上から目線に龍は腹が立ったようだ。顔が怖い。
「ほほう、少年よ、良い度胸だ。その話、引き入れてやろう。しかしこの俺が勝った場合は命をもらう。それで良いか?」
龍は少年が負けた場合の提案に不満だったようだ。少年は龍の提案に苦笑しながら頷く。
「君は仲間を呼んできても良いよ。ハンデ戦でも大丈夫だから。」
舐めきった態度に遂に龍が怒りを爆発させた。
「舐めるなよ、少年。いや、侵入者!」
命を賭けた戦いが始まった。
- 黒き原初 ( No.20 )
- 日時: 2018/06/14 18:57
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
龍神王
冒険者が出発するまで、あと一日。ノワール達はその前に龍王のダンジョンへ潜り込む。
「確かに龍王のダンジョンって言うだけあるわ。このままだと怪我人も多いんじゃないかしら。」
雷子がトカゲのようなモンスターを倒しながら言う。ドラゴンと言うだけあって、なかなか手強いと思われる。しかし、この面子だと基準が分からなくなるが。
『死人も出ますね。蘇生をすれば良い事ですが。』
黒山羊もサラッと言う。確かに死んだら蘇生、そう言う方法もあるだろう。しかし蘇生出来ない場合も勿論ある。魂が食べられた場合や肉体が無い場合、即死効果での死亡は蘇生出来ない。ノワール達の場合はまた別だが。
「ここら辺のドラゴン達は一掃しよう。トラップも簡単なのに付け替えて。スライム辺りを放とうか。」
ノワールが指示を出す。それにメンバー達は頷き行動を始める。
冒険者は到着して、着々と攻略をして行く。半分以上はノワール達のお陰だが。
「あ、ボス部屋に入って行くわよ。」
雷子が言う。ノワール達はお楽しみとばかりにボス部屋だけ散策しなかった。
「入ってみようか。」
ボス部屋に入ると、冒険者達は誰もいないと言っている。しかし無効化の魔法を使えば分かる。透明化している声の主が。
「良い男ね。強そうだし。」
雷子は目を光らせる。女子らしいといえば女子らしい。いや、合コン狙いのアラサーかもしれない。
『ノワール様には及びませんね。』
黒山羊は鑑定したようで、完全に下に見ている。ノワールも鑑定を使う。
隻眼の龍神王
Lv.16952
種族 龍神
職業 龍神王
固有スキル
龍神王の威厳
自分よりもレベルの低いものを威圧させる。龍神王固有のスキル。
龍神の鎧
ゴットドラゴニックメイルと読む。防御力を何倍にも引き上げる。また、全属性耐性、状態異常無効化も付いている。龍神系統種族固有のスキル。
龍神王の息吹
青い炎を吐く。その威力は世界を焼き尽くすほど。龍神王固有のスキル。
龍神化
龍の姿と人の姿に変身出来る。龍の姿の方がステータスが高い。龍神王固有のスキル。
龍神王の咆哮
龍達を呼び出し、従えることが出来る。龍神王固有のスキル。
龍の神託
左眼の魔眼は鑑定の役割があり、人のステータスを見ることが出来る。鑑定の条件は無い。隻眼の龍神王固有のスキル。
スキル
鑑定 剣術 全属性魔法 拳術
装備
龍神王の鎧 レア度・星8
龍神王に与えられた最強装備。全ての状態異常攻撃を無効化する。
龍獄刀 レア度・星9
龍の鍛治師達が作り上げた最高の刀。龍神の爪如く切り裂く。
称号
地界へと堕ちた龍神
神への冒涜者
魔眼の龍神
隻眼の龍神王
迫害されし者
称号を見るからに過去に何かあったのだろう。しかし、Lv的には雷子よりも上だ。スキルに関してはノワールよりもある。固有スキルはやはりノワールの方が多いが。
「あらあら、子羊達が倒れていくわー。可哀想。」
雷子の気持ちがこもっていない棒読みに苦笑してしまう。やはり強い男にしか興味が無いようだ。
「あ、ジョージ君じゃない。ノワール様、どうする?」
確かに沢山の冒険者が死んだようだ。もうそろそろ出ても良いだろう。ノワール達は勢い良く行く。
龍神の姿を改めて近くで見るとイケメンだな、と思う。彼は刀を使っている。日本人かな?と思ってしまった。
「何故当たらない?」
龍神王はノワールの身体を刺す。しかし、彼のスキル『死霧』により物理ダメージが無効化される。
「ねぇ、そろそろ良いかな?まぁ、戦いだから多少の本気は出さないとね。」
ノワールはそう言うと、魔法を放つ。無詠唱での発動に龍神は驚いていたが、刀でそれを断ち切る。
「やっぱり見込んだ通りだ。」
ノワールは相変わらずの笑顔である。龍神はそれが気に食わない。
「何故笑っていられる?そもそも貴様は人間だろう?」
龍神はまだ人間だと決めつけているようだ。ノワールはふふっ、と笑った。
「君の魔眼で調べてなよ。発見出来るかもよ?」
龍神は驚いていた。鑑定のスキルは確かにステータスを見ることが出来るが、それは相手より強くなくてはならない。
「……くっ。」
龍神は歯を食いしばった。ノワールは思った通り、と思う。渋々龍神は自分の左眼をドラゴニックメイルから開ける。光った気がする。
彼は絶句した。ノワールのステータスを見た瞬間に。黒山羊と雷子も頷く。馬鹿げたステータスなのだから。
「どう?これで人間じゃ無いことぐらい分かってくれたと思うんだけど。」
ノワールは余裕の笑みを浮かべ、逆に龍神は足を一歩引く。
「偽装か、はたまた本当か、それを判断するのは俺だ。貴様には関係無い。」
ノワールはそれも良し、と返事をする。
「じゃあ、手加減しないでね?逆にそうしないと命も吹っ飛ぶよ?」
ノワールはそう言い放った瞬間に動く。その速さは誰にも見えない。龍神も身構える。
「『死霧』」
死霧になり、形を変える。それが蔓延する。即死無効化でも吸えば死ぬ。しかしそれだけでは済まない。ノワールは次に魔法を放つ。
「『極地獄』」
唱えると火山噴火地帯になっていた。溶岩やマグマなどが煮えたぎっている。
「これ吸ったらね、死霧もあるけど硫化水素って言う害悪な気体が出てくるわけだよ。龍にどんな臓器があるかは知らないけど人間だったら即死だよ。」
龍は未だに空気を吸っていない。神だからなのだろうか、何処かに酸素供給機能があるのかもしれない。
「さて、君からの反撃は?」
ノワールは龍を挑発する。龍は動かない。なんだ、と思った瞬間龍も動き出す。刀を振りかざした。それを身体を捻り避ける。その攻防が続く。しかし空気を吸えば即死、最悪の状況。ノワールが優位なのは変わりない。
「言葉を発さないの?まぁそれが1番かも。」
ノワールは余裕の表情で避けている。その尋常じゃ無い速さは雷子達に保護されたジョージがよく分かった。
「うん?」
ノワールが創り上げた世界が少しずつ変わっていっている。ノワールは死霧を自身に収縮させ、空中に浮かぶ。
「『氷獄』」
龍神は唱えると火山地帯だった世界がいきなり吹雪の世界へと変わる。
「上書き……。」
ノワールの魔法は上書きされた。普通ならあり得ない。しかし此処は彼のダンジョンだ。ノワールははぁ、と溜息を吐く。
「ゲホッゲホッ!」
龍神は息を長い時間止めていたせいか、酷い咳をする。
「……流石は龍神王、生命力だけはある。」
ノワールは龍神を睨みつけた。魔法を上書きされた事が悔しいのだ。
「……ふん。此処は俺のダンジョンだ。貴様にどうこうされる義理は無い。」
龍神もさっきの状況が気に食わなかったようだ。2人の目線が火花を散らす。
「一対一では貴様には勝てない。ならばハンデ戦とでも行こうか。」
龍神は次の瞬間、咆哮をした。鼓膜が千切れそうなぐらいの大きさで。
その咆哮が鳴り響くと竜が大量にやってくる。
「雑魚処理で削ろうって話ね。『夢想獣召喚』」
それに対抗しようとノワールは死蛇以来の夢想獣召喚を使用する。その間に竜達はノワールを囲み襲いかかる。
『ノワール様に刃向かおうとは、下劣な生命が!』
ノワールでは無い声がした。その途端、目眩がするくらいの光が放たれる。襲いかかってきた竜達が床に倒れる。
「竜達は任せたよ。」
ノワールの隣には黒に鎧に包まれた人型の何かが立っていた。
『御意!……さて、竜達よ。かかってこい!』
黒い騎士はノワールに対して素晴らしい返事をした後、竜達に挑発をした。
「さて、これで一対一だ。」
ノワールはまたもや笑みを浮かべる。龍神は刀を向ける。
「貴様は武器が使えないようだな。スキルでしか対抗できない、それが弱点だ。」
ノワールは確かに、と頷く。龍神はそんな反応をされるとは思っていなかったようで少し驚く。
「でもね、剣術なんて此処で覚えれば済む話だよ。」
ノワールは無限保管庫から剣を出す。それは何よりも黒く、何よりも禍々しい剣だった。
「『黒災禍』」
ノワールは剣の名をしっかりと言葉にする。
「君の刀よりもレアリティが上かな?」
黒災禍は星10である。そもそもレアリティも何も強さ的には関係無いのだが。
「さてと、今度はこっちから行かせてもらうよ!」
ノワールが斬り付けに行く。初心者とは思えないほどの速さだ。当たりはしなかったものの、当たれば即死級なのは間違いない。
ノワールは手応えがあったようで、攻撃する度に精度が上がっていく。そして遂に龍神の鎧に攻撃が当たる。
「くっ!」
その衝動は鎧の上からでもしっかりと伝わった。鎧は黒災禍に触れたところから少しずつ溶けていく。龍神は鎧を脱ぎ捨てる。
露わになった腕には強固な鱗などがあり、勇ましいとはこの事だ。
「うん。やっぱり君強いよ。黒災禍の速度でも鱗までは届かなかったし。」
満足気な表情をするノワールに今度は怒るのでは無く、恐れを抱く。此処まで冷静沈着でいられるか、と。
「さて、此処からは降伏もよしとしよう。君に死んでもらっちゃあ困る。」
ノワールの笑みは獰猛になった。まるで獲物を見つけたかのように。
「……貴様の名前はなんと言う。」
龍神がノワールに対して聞く。ノワールは龍神の目を見る。そして、
「ノワール=ディユ・ブランだよ。」
赤い隻眼が彼を捉えた。
- 黒き原初 ( No.21 )
- 日時: 2018/06/14 19:02
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
黒龍の誕生
赤い隻眼が龍神王を捉えた。彼は硬直する。その隙にノワールは龍神王を壁に叩けつけ、顔スレスレのところで壁に勢い良く剣を突き刺す。ノワールと龍神王の距離は息がかかるほど近い。
「どうする?逃げられるかな?」
龍神王にノワールは問いかける。彼は目を合わせないようにしている。
「降伏は、したくないんだよね。そうだな……黒災禍、よろしく。」
『分かりました。彼の血を少し頂くことにします。』
黒災禍が喋る。生きている剣、という単語を龍神王は聞いたことはあったが見たことは無かった。
ノワールは壁に刺さっている黒災禍を抜き、彼の心臓に容赦無く突き刺す。
「グァ!」
龍神王はその重量に耐え切れるはずもなく、悲鳴をあげた。ノワールはそれを平然と見ている。
「ねぇ、痛い?」
ノワールは狂気な笑みを浮かべて話しかける。龍神王はそれどころではないがノワールの威圧に負け、頷く。
「そっか、じゃあ二つの方法を提案してあげよう。黒災禍は殺しはしないが痛みを与え続ける。救われたいのであれば、黒の原初と共に生きるか、此処で死ぬか、どっちが良い?」
ノワールに二択を迫られる。龍神王は此処で死んでも良いと思った。敗北するぐらいなら、と。しかしこのままでは自分が守り続けていた龍の楽園は滅んでしまう。王として、それだけは嫌だった。
「……貴様の仲間になったらどうなる。」
龍神王が疑問を投げかける。ノワールは待ってましたとばかりに、にっこり笑顔で言った。
「この世界を存分に楽しむ。そして、黒の原初の仲間としてこの次元の龍神王になって秩序を維持する、とかかな?」
ノワールは言葉が上手くまとまらなかったようで苦笑しながら言う。
「……俺はこのダンジョンを守れるか。」
龍神王はそんな事を小さな声で呟いたがノワールは聞き逃さなかった。
「確実に君は強くなる。この黒の原初が保障しよう。」
龍神王はノワールの言葉を信用しようと思った。自分よりも強い存在に出会え、自分をより高め合うことができる、と。
「ならば……貴様と共に生きよう。」
龍神王は少し考えた後、結論を出す。ノワールは待ってましたとばかりに笑った。さっきまでの狂気な笑みとは違う。
ノワールは黒災禍を彼の身体から抜き、龍神王を全回復させる。
『見事でしたね。ノワール様がまた美しく、気高くなりました。』
何処からか黒山羊が登場する。雷子もジョージも出てきた。
「私の後輩一号ね!」
後輩が出来たことにより、雷子はこき使うつもりだろう。正直言えばレベル的には龍神王の方が上なのだが。
「雷子、こき使っちゃダメだよ。後、冒険者さん達を蘇生しておいてね。記憶を抜いて。」
ノワールが指示をするとアイアイさー、と返事が戻ってきた。適当だなぁ、と苦笑してしまう。まぁ、雷子はこんな性格だがやる時はやってくれる。
「ノワール、様。」
龍神王が様呼びをしてきた。結構無理をしているように見える。顔が怖い。
「良いよ、無理しないで。呼び捨てでいいから、ね?」
様呼びをされるのにはまだ抵抗がある。龍神王として生きてきたのだから、プライドもあるのだろう。
「いや、しかし……。」
「はい、ノワールって言ってみて!」
負けたからと言って引きずらないで欲しいのだ。彼は威厳溢れている人物であってほしい。
「ノ、ノワール。」
渋々言ってくれた。ノワールはよし!と鼻息を荒くしていた。嬉しかったのだろう。
「えっと、名前って無いんだよね。うーん、黒山羊、頼む!」
ノワールのネーミングセンスはナンセンスなので、黒山羊に頼む。黒山羊は快く受け入れてくれた。
『ノワール様の家臣として相応しい名前を考えてなければいけませんね。』
何故に俺基準なんだ、とノワールは思った。
『ドラーク、は如何でしょう?オランダ語で龍、と言う意味です。』
何故に君はオランダ語まで知っているんだ、とノワールは率直に思う。帰国子女なのかもしれない。
「分かった。」
龍神王に了承してもらえた。
「よし、ならば眷属化しなきゃね。」
ドラークの手をノワールは取る。そして、
「我が黒の原初、漆黒なる次元の名の下にドラークを龍神王とす。」
ノワールは詠唱をし終わると、彼のステータスを鑑定する。
ドラーク
Lv.16925
種族 黒龍神
職業 次元の黒龍神王
固有スキル
龍神王の威厳 龍神の鎧 龍神王の息吹 龍神化 龍神王の咆哮 龍の神託
黒き龍神王の破壊
破壊魔法が使えるようになる。黒龍神固有のスキル。
黒龍神の再生
蘇生の上位互換。怪我した部位を直ぐに再生出来る。
漆黒なる加護
スキル
鑑定 剣術 全属性魔法 拳術 眷属
装備
龍獄刀
称号
地界へと堕ちた龍神
神への冒涜者
魔眼の龍神
隻眼の龍神王
迫害されし者
黒き次元の龍神王
「なんか、やっぱりチートだよね。みんな。」
自分の仲間にはチートしかいないんじゃ無いだろうか。雷子は一番のチートはあんたよ!とツッコまれたが。
『では、ドラーク殿、よろしくお願いします。』
「ドラークちゃんね。分かったわ。」
「えっと改めまして宜しく。」
三人がドラークに宜しく、と言った。
「あぁ、宜しく。」
龍神王の笑顔を初めて見ることが出来た。
冒険者を蘇生させ、龍を倒したかのように見せかけ、ダンジョンの外に出す。ノワール達はダンジョンから出ようとした。するとノワールが召喚した夢想獣を雷子が指差す。
「にしても、そこの黒鎧って誰なのよ?」
黒騎士は一瞬ポカンとしていたがすぐに、
『は!私はノワール様にお仕えしております、黒騎士です!皆様、よろしくお願いします!』
ピシッとした姿勢を黒騎士がする。黒騎士はノワールが剣術を教えてもらおうと思った時に生み出したのだ。所謂、魔法剣士である。そこら辺の冒険者より圧倒的に強い。
「ふーん、ギルド登録しなきゃね。」
雷子は少し面倒だと思った。
ダンジョンから出て、街へ入る。門番にまた驚かれてしまった。体格の良いイケメンと全身黒の鎧を纏った人物が増えているのだから。
「えー、税金をお願いします。」
相変わらずの言葉だった。銀貨を払い、中へと入る。
ギルドに向かう。緊急依頼が終わり、賑わっていた。ノワール達はカウンターへ向かう。
「冒険者登録をお願い。」
受付嬢はまた?と驚いた顔をしていたが紙を持ってきてもらい、無事にパーティー登録まで終わった。
「ここの酒場で飲みましょう?」
雷子はご褒美にお酒、と言わんばかりだった。ドラークもお腹が空いているらしい。血を流した戦いだったからな、とノワールは思った。
席を取り、雷子は魔法道具の杯を出してお酒を飲み始める。黒山羊はメニューを頼んでいた。
「ねぇ、お酒って飲めるの?」
雷子が酔っ払いながら聞いてきた。話を聞いていたノワールとドラークは頷く。
「なら、飲み比べしましょうよ。」
はぁ、とノワールは溜息を吐く。ドラークは別に平気だ、と言う。
「あ、店員さん。酒の瓶、100本持ってきて。度数高いの。金貨1枚でいいかな?」
ノワールは店員に金貨を渡して、お酒を頼む。店員ははい、と返事をした後カウンターの奥へと入っていった。
お酒が来た後、周りには冒険者達が集まっていた。賭けをしているようだ。
「俺はあの体格のいいやつに銀貨5枚賭けるぜ。」
「いや、あの美女かも知れねぇぜ?」
そんな言葉が飛び交っている。しかしながら誰もノワールに入れようとはしない。
『では、飲み比べ、始め!』
黒山羊の合図によって、飲み比べが始まる。雷子もドラークも勢い良く飲んでいた。誰もノワールには注目しなかったが、黒山羊だけは見ていた。
「うーん、味的にはそこそこだね。」
ノワールは味の評価をした後、酒瓶を丸飲みしていた。
「はい、次。」
その後も酒瓶丸々飲み、いつのまにか60本平らげる。酒瓶が尽きるとノワールは2000、と言った。黒山羊は金貨を20枚払う。
「うーん、飽きるよね。はい次。」
雷子は酔い、ドラークは飲み過ぎで満腹になったようだが、ノワールはまだまだと言っていた。そもそもノワールには酔う、という定義はないし、満腹になる為には世界を100個ぐらい喰らわないといけないことになる。
「ご馳走さま。」
出てきた肉も食べながらも物足りない顔をしていた。しかし、これ以上お金をかける必要も無い。賭博をしていた冒険者達は賭けが失敗した為、黒山羊にお金を回収されていた。
ギルドを出て、宿屋に向かう。ドラーク分の部屋を取り、自分達の部屋へ向かおうとする。
「ねぇ、ドラーク。ちょっと来て。」
ノワールはドラークを自分の部屋に招き入れた。
部屋に入り、ドラークは椅子に、ノワールはベッドに腰掛ける。
「えっと鎧を溶かしてごめんね。」
黒災禍は触れたものすべてを溶かすことができる。星8の鎧を溶かしてしまったことを申し訳なく思っていた。
「いや、仕方のないことだ。ノワールの所為では無い。」
ドラークはフォローしてくれた。しかし、それでは装備が無い状態だ。ローブを羽織っているが、そこまでの防御力は無い。
「ドラークってさ、日本人顔なんだよね。」
イケメンなのには変わりないが、和風の顔をしている。
「だからさ、着物ってどうかな?」
無限保管庫から着物を出す。黒と青の着物である。体格のいい、と言っても細マッチョなのだが、そんなドラークに似合うはずだ。
「そうだね、着替えられる?」
変身魔法を使えば楽だが、頭の中でイメージできなければ変身は出来ない。
「このようなものは東の国に存在していた。」
え、マジで?とノワールは口に出した。日本のような国があるのかもしれない。今度、行ってみよう。
「多分、着替えられると思う。」
ドラークは着物を持ち、変身魔法を使う。きっちりと着こなせていた。着物に着替えたドラークはまさに武士そのものだ。ノワールは童顔なのでどうしても幼く見えてしまうため、使う機会が無かったのだが、良かった。
「うんうん、似合うよ!」
ドラークは褒められて嬉しかったのか少し顔を赤くしていた。
「後は、眼帯あげる。」
ドラークは鎧で魔眼を隠していたが、その鎧は無くなり、ローブで隠していても怪しまれるだろう。その為にノワールは黒い眼帯を作ったのだ。
「似合い過ぎて羨ましい。」
ノワールの口からは本音が出てきた。ドラークは正直困惑していたが、褒め言葉だと思って受け止めたようだ。
「装備としての性能も抜群だから、安心して。刀も二刀流な感じでもう一本あげるよ。」
仲間になったからには大盤振る舞いをするとノワールは決めていたのだ。魔法道具を沢山作っておいて良かったと思っている。
これがドラークが仲間になった日だった。