複雑・ファジー小説

Re: チュリーロゼッタ、可愛い君は ( No.17 )
日時: 2018/08/30 19:16
名前: 流聖 (ID: Hh73DxLo)

博士は宇宙人Xを見た!

ーとある博士の手記ー

一体これをいくらかの人間が見るだろう。瞳に映ることはあり得るのだろうか。無名のしがない博士の手記など、誰の目にも留まらず朽ちていくだけかもしれない。それでもいい。私は残そう。ああ、黒く艶のある銃口が私に向けられている。ほんの少し力を加えるだけで私の命は簡単に壊されてしまう。今、私の命は恐ろしく安いのだ。

今まで勉学に励み、青春すら捨ててここに立っている。青春、送りたかったなあ。親孝行が出来ていないまま、母には先に旅立たれてしまった。すまない。こんな息子で。天国とは宇宙の果てにあるのだと聞いたことがある。私はそれを見に、そして少年時代に憧れた星々を見に、地球から旅立った。ニホンの宇宙船ヤマト号は素晴らしい。乗れて光栄だと思うよ。

宇宙船に乗って地球を旅立ってから三日目のことだった。突如として現れた目の前の存在の呼称を私は知らない。よって仮として宇宙人Xとさせてもらう。血のように赤く、リンゴのように甘酸っぱい、深紅に染まった服を着ていた。三角帽子に白い髭、大きく膨らんだ袋を担いだ男だった。話を聞くところによれば、男は地球に行く途中らしい。私は地球人だと言うと、大層喜んでくれた。少しの食べ物を分け与え、私は地球はここから六万㎞離れた青い星だよと教えた。

すると宇宙人Xはにっこりと笑ってありがとうと言ったんだ。そしたらこの様さ。いきなり銃口を向けられて拘束されている。宇宙人Xの指が動く。引き金が少し動いた。ああ、私はおそらく死んでしまう。この手記は遺書だ。誰か見つけてくれるといいのだが。私を殺した犯人は宇宙人Xだ。赤い服を着て三角帽子をかぶり、もじゃもじゃ髭を生やした男。子供に好かれそうな笑みとピエロのような道化の声。

まるで、まるで、そう。サンタさんだ。
今ここで私は命をかけて証明しよう。サンタさんはいると。ではさようなら。グッとモーニング、アース。