複雑・ファジー小説

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.11 )
日時: 2019/06/16 08:57
名前: 白刃 さとり (ID: bb2N.JWt)


 [10話の楓目線]


 その日は、目覚めの悪い朝だった。
 寝ている時にかいた汗が肌を伝う感覚や、張り付けた服のベトベト感が気持ち悪い。


 「悪夢………。」

 気付けばそう呟いていた。
 見ていた夢…いや悪夢は、最近はなかった予知夢だ。いつものように、所々しか覚えてはいなかったが、いつもよりとても長く、気の遠い悪夢のように感じた。

 夢の内容は、朔が殺されるものだった。
 一直線に私に飛びいるナイフ。私を庇ってナイフの餌食となった朔が死んだ。……通り魔だった。 

 笑顔を崩さずに登校をした。





 もう、教室の前。私は、平常心を保とうと、深呼吸をした。三回ほど。それでも涙がこぼれでそうで……。
 「大丈夫。私が守ればいいのよ。」

 呟いた言葉は、自分に言い聞かせたものだった。
 もう一度深呼吸をし、思いきって戸を開けた。おはよう、とクラスメイトに声を掛けながら朔の隣の席に近づく。当の本人は呑気なことに小さな寝息を発てて眠っていた。そんな姿に安心しながらも、いつ起こるか分からない朔の死に対しての不安は消えてなどいなかった。

 「朔。」

 さっきまで吐息の数しか動かなかった朔が顔を上げた。朔が生きている。また、涙が溢れそうになった。それを堪えて朔に向き合う。おはようの言葉さえも出なかった。
 「あんだよ。俺の顔に何か付いてんのか?。」
 応えない私に朔は心配したのか、もう一度私に問いかけた。
 「おい?。楓?。」
 朔が死に付いて何も言いたくなかった。
 もう、適当にいってしまおう。そう思い、何かを言った。内容は覚えていないが。
 朔は、盛大に溜め息を吐いた。
 「はぁ、じゃ無いわよ!。真面目にかんがえてるんだかんね!!。」
 つい、むきになってそう言ってしまった。
 「へいへい。怒った顔も可愛いですよー。楓チャン。」
 いつものように、憎まれ口を叩いてしまったが、心底いつものようすでいてくれて救われた。


 「楓は、十八年しか生きられないって嫌か?。」

 なんの話だろう。朔の友達が病気なのだろうか。
 いずれにせよ返さない理由はないので、自分だったら、と考えた。

 「んー。死にかたにもよるかな?。でも、誰かのためになるならそれでいいかも。」

 そう。誰かのためなら。



 「私、朔の為なら死んでもいいよ。」

 そう。君の為なら。