複雑・ファジー小説
- Re: 何回目かの初めまして。 ( No.12 )
- 日時: 2019/06/25 23:46
- 名前: 白刃 さとり (ID: bb2N.JWt)
学校の昇降口。朔の部活(剣道部)のマネージャー(といっても顧問の轆轤と部員全員に頼まれて仕方なく大会までの短期間)で遅くまで活動していたせいか、下校時刻ギリギリとなってしまった。
幸い、夏の日の長い時期だからか暗くはない。夕暮れ時だ。最近、空を見上げる事が多いせいか今日の夕焼けはきれいに見える。頑張った後だからか分からないが、何かのご褒美のようにも感じた。
それで私は今、朔に送ってもらう(半強制敵にそうなった)為、職員室に鍵を返しに行った朔を待っている。
ふみゃあ、と可愛らしい鳴き声が聞こえた。それと共に、これまた可愛らしい茶トラの子猫が草むらから顔を出した。
「あ。ねこ。」
私はそっと手を伸ばした。子猫はぴくん、と震えた。しかし、逃げようとする様子はない。子猫は私に何かを訴えているみたいだった。その頬に触れそうになったとき、上から声が降ってきた。
「おい。楓?。帰るぞ。」
その朔の声で子猫は草むらに大急ぎで戻ってしまった。あーあ、と心の中で小さなため息を吐く。
「朔のせいで逃げられちゃったじゃない。」
私はそう言って立ち上がる。朔が呆れた笑みを浮かべた。子供扱いされている気分だ。
「ったく。心は子供なのな。情けねえ。」
んべ、と乱暴に出した舌は、彼も子供であると告げていた。
「そうゆうの嫌。」
上目遣いに睨み付けた。こうゆうのに朔は弱い。嫌ではないが、本当に子供扱いは慣れない。今まで、こんなことをしてくれた友達がいなかったから、だろうか。ついつい甘えてしまう自分もいた。
「わ、悪かった。」
苦笑いでそう対処した朔は大健闘だったとおもう。もしここで謝らなかったら、一週間は叶にいびられると分かっていたからだ。まあ、私が叶に言わなければいい話なのだが。
私たちは、二人して笑ってしまった。二人の笑い声が空へ響く。
そして、今日が朔の命日で、この物語の本当の始まりだ。