複雑・ファジー小説

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.14 )
日時: 2019/06/30 22:24
名前: 白刃 さとり (ID: DLaQsb6.)


 私は、ぼんやりと目を開けた。祖母の声が響く。
 「楓!。いい加減起きんと学校に遅れるよ!。」
 いつもの風景だ。しかし、決定的にいつもと違うのは、祖母の発した『今日が初めての登校でしょう』だった。

 「おばあちゃん。今、なんて?。」

 私は、首を傾げてそう言った。
 「あんた、まだ寝ぼけてんのかい?。」
 そう言って祖母は眉を潜めた。


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 「今日は、このクラスに転入生が来ています。……どうぞ、入ってください。」

 おかしい。

 「小日向さん?。」

 絶対におかしい。


 私は、先生に呼ばれて渋々歩き出す。教室の皆の視線が私に一直線に集まった。そこの中に朔がいる。まだ、朔の死も受け止めきれていない私にとって、これは苦痛以外の何でもなかった。

 「初めまして。こ、小日向楓です。宜しくお願………。」

 クラスメイトがざわめき始めた。
 そこで私は気づく。私の頬から一筋の涙が零れていたことに。

 私は先生に勧められるままに席に着いた。まだ涙が止まらない。

 「か、楓。」

 そんな私を心配してか、朔が私に声をかけた。しかし、彼からは、そこから一言も発しなかった。