複雑・ファジー小説

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.2 )
日時: 2019/05/24 21:42
名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)


 「早乙女、朔です。」
 ぎこちなく自己紹介をしてくれた早乙女君は照れくさそうに目を反らした。
 「私は、小日向……って、さっきも言ったか……。私のことは楓って呼んでね。宜しく、早乙女君。」
 そう言って彼に微笑み掛けた。すると、早乙女君がぼそりと何かを呟いた。
 −覚えてねーのかよ−
 そう聞こえた気がした。確証は持てないが、そう感じた。
 「え?。」
 何て言ったの?、と訊こうとしたが、早乙女君はその隙も与えてくれず、
 「いや。お、俺も朔でいい。って。」
 と言った。
 何か、線を引いてしまった気がする。所詮貴方はクラスメイトだって。何か申し訳ない気持ちが込み上げてきた。彼に対する申し訳なさとなぜか自分に対しての申し訳なさ。

 「朔ってさ、私と何処かで………。」
 そう言い掛けたが、チャイムの音にかき消された。それが、言うな、伝えるなと訴えかけているようで私はおとなしく前を向いた。


 授業が終わってすぐ、女の子が朔に駆け寄った。
 私よりも長い髪の毛を赤いリボンで緩くとめている。この女の子もまた、整った顔立ちで、少しつり目な所が愛らしい女の子だった。制服も着こなしていて、灰色のカーディガンが良く似合っている。
 その女の子は朔となにやら話混んでいる。朔の彼女なのだろうか。ふと、女の子が私の方を振り返った。朔が止めに入ろうとする。女の子はそれをガン無視し私に問いかける。
 「ねぇ。小日向さん。私に、見覚えない?。」
 見覚えなど、ある筈も無かった。私は素直に首を振った。
 ズキリ、と頭が痛んだ。これはよくある前世のフラッシュバックだった。

 揺れる、赤いリボン。笑いかける顔。夫と佇み、手を振る姿。私ね幸せだよ、の声が何度もリピートされる。

 「小日向、さん?。」
 現実にギュンと戻り、目眩がした。目の前が歪んで見える。ようやく視界がはっきりとしてくるとそこには心配そうに私の顔を除き混む女の子と朔がいた。
 「あー。その、えーっと。」
 前の学校での事もあり、私は曖昧に答えた。女の子が椅子に腰をかける。
 ここは保健室のようだ。薄ピンクのカーテンが見える。私は倒れてしまったのだろう。
 「小日向さん。具合は大丈夫?。」
 保健室の先生らしき白衣の女の人がゆっくりと私の額を撫でる。私は頷いた。体が驚くほど軽く、気持ち悪さも無くなっていた。先生の手の程よい冷たさは汗をかいてグッショリになった体にとても気持ちがよかった。先生が微笑んだ。
 「もう、大丈夫そうね。一日中寝てたのよ。疲れたでしょう。今日はもう帰りなさい。」
 先生の優しい声が心地よかった。
 「あ。私たちが送ります。」
 女の子が先生を見た。いい考えね、そうしなさい。と先生がまた微笑んだ。
 「それじゃあ帰ろう。小日向さん。わたし、葛城 叶(かつらぎ かなえ)って言うの。好きに呼んでね。」
 宜しく、と笑った叶ちゃんはキラキラと光って見えた。

 なのに何故か心が痛む。


 何度目かの"友達関係"