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複雑・ファジー小説
- Re: 何回目かの初めまして。 ( No.5 )
- 日時: 2019/05/26 10:23
- 名前: 白刃 さとり (ID: 3nlxUYGs)
朔に触れられた頬がまだ熱を帯びている。それに朔のあの表情は、何を表していたのだろう。あれは明らかに違った。私ではなく、私の中にある何かに微笑み掛けていた。
「楓。どうしたの?。」
私はまた、現実から離れていたようだ。
「ううん。何でもないの。」
私は直ぐに笑顔を取り繕う。
そんな私を叶ちゃんはさびしそうに見つめていた。
私にはそんなことは知るよしも無かったのだが。
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[叶目線]
放課後、私は部活に行こうとした朔を引き留めた。教室から誰も居なくなった事を確認して、私は早速本題へ入った。バンッと朔の机を叩く。
「あんた。楓に何かしたんじゃ無いでしょうね?。」
そう、朔に問い掛けた。朔は首を振った。
「楓が思い出さないからって幾らなんでも好きな奴を傷つけるような真似はしねー。」
そんなことは私も知っている。誰よりも楓の事を考えているのは朔だ。だからこそ、"記憶"のない楓には辛い存在となるのだ。
「そうゆーことじゃないって。分かってるでしょ?。」
不器用な朔の事だ。頭では分かっていても、何処かで分かりたくないと否定し続けているのだろう。そこも、楓を想ってこその結果なのだと私もわかっている。
「嗚呼。」
その二単語に満たない言葉にどれだけの想いが詰まっているのだろう。
暫く、二人は黙っていた。
「あの楓は、私たちが知ってる楓じゃ無いのよ。」
私が続けて言おうとしたら、それを朔が遮るように
「轆轤のとこ、行かねぇのか?。」
と言って出ていってしまった。
でも、私には止める権利もない。
何度目かの"対立"
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