PR
複雑・ファジー小説
- Re: 何回目かのサヨウナラ。 ( No.2 )
- 日時: 2019/06/01 15:21
- 名前: 白刃 さとり (ID: bb2N.JWt)
人通りの多い道にある甘味処に、二人の男女がいた。一見、恋仲に見えるが、漂う空気がそれを否定していた。無言で団子を食べている二人は何処と無く互いを意識しないようにしているようで、目を合わせる事も無かったし距離もずっと一定の距離だった。
男が口を開いた。
「おいしいですね。」
と。女は頷くだけで何も答えない。男も微笑んだままで、何も言わない。
「はい、大福だよ。すまないねぇ、遅くなっちまって。」
店の中年の女がそう言って、大福の入った皿を置いた。男が有難い、と微笑んだまま言った。女は軽く頭を下げると直ぐに定位置に戻って黙々と食べ始める。
「ちょいとお客さん、喧嘩でもしてんのかい?。」
店の女が男にそう言った。男は微笑むと、
「いえ。彼女とはいつもこうなので。」
と言った。女はその会話が聞こえていても、此方を気にするような素振りは見せないし、興味がないようだ。
店の女がいなくなると、女が口を開いた。
「また、人を殺すのか?。」
女の言った意味を男は理解していた。だが気づかぬふりして男は頷いた。
「それでないと生きれないので。」
男はそう言うと、笠を目深に被った。もう、顔からは作った笑みは消えており、笠の下で男は目を光らせた。
「そ。」
女はもう、それ以上言わなかった。伝わらないことを知っていたから。
PR