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複雑・ファジー小説
- Re: 何回目かのサヨウナラ。 ( No.3 )
- 日時: 2019/06/13 19:11
- 名前: Nahonn (ID: bb2N.JWt)
[叶目線]
私は、地べたに崩れるように倒れこんだ。そのまま、大きな体の男が持つ刀が降り下ろされるのを、呆然と見上げていた。
あの男は、私の家族を殺した憎い男、の筈だった。
あの日から数年が経った。それは驚くほど短く、嗤えるほど長く感じた。それもこれも全ては、この胸の高鳴りのせいだ。………私は男に淡い恋心を抱いているのだ。それを今まで認めずに、無視をし続けていた。そう、今までは。
この気持ちに決着をつけたい。そんな思いで、私は戦場に駆け出した。
彼が人を殺している姿を見れば、きっと嫌いになるだろう。絶望し、拒絶し、彼を責め、そして私の胸の奥に潜んでいた暗い思い出があの日の憎しみを呼び覚まし、彼を殺そうとするだろう。だから。
だから………?。
光を反射して白銀に輝く、刀を見て思った。
私は大馬鹿者だ、と。
好いている男を好きになりたくない為だけに命を投げ出した。でも、案外これでよかったのだ。
私は死ぬのが一番良かった。彼を普通に愛したかった。それが出来ないから、心を病めて苦しんでいるのだ。もうこれで、私は解放される。
そう思った矢先、目に飛び込んで来たのは、血飛沫をあげて倒れる大男と、酷く動揺している男……轆轤であった。
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