複雑・ファジー小説

Re: 何回目かのサヨウナラ。 ( No.6 )
日時: 2019/06/27 21:29
名前: 白刃 さとり (ID: DLaQsb6.)


 暖かい秋の昼下がり。二人の男女が歩いていた。二人は笠を目深に被っていて、刀を布に隠していた。

 冷たい風が二人の間を通りすぎた。木の葉がざわめいた。まるで何かを訴えているようだ。しかし、この二人は気付かない。当たり前だ。気付くわけがない。なぜなら、未来の予知なんてことも出来ない少し変わった(?)人間だからだ。

 二人から見れば3回目の秋だ。いつもの甘味処の前。女の方が顔をあげた。甘味処の中年の女が声を掛ける。

 「あらまぁ。いつもの嬢ちゃんに兄ちゃんじゃないかい。」
 女が頭を軽く下げた。男は笑顔の仮面を直ぐ様用意すると、柔らかい声で女将に話掛けた。
 「はい。お久しぶりです。お元気でしたか?。」
 女将は頷く。女が男をみた。まるで、猫被んな、と言っているようだ。其に気付かない女将は満面の笑みで
 「あぁあぁ。お陰さまでね。元気だよ。」
と言った。女の顔に、知らず知らず笑みが浮かんできた。

 「叔母さん。だあれ?。」
 体の大きいふくよかな女将に隠れていた少女が出てきた。茶トラの子猫もいる。少女はまだ3歳位で、明るめの茶色の髪色だ。こてん、と首を傾げている。
 「あぁ。お店の常連さんだよ。」
 女将はそう答えた。少女はまたもや首を傾げた。
 「この子は?。」
 男……轆轤が少女をみた。女……叶が少女と目線を会わせようとしゃがんだ。少女が、少し後退りをする。
 「私、叶。……宜しく。」
 叶がそう言って、本の少しだけだが微笑んだ。
 「ほぉら、ありちゃん。ご挨拶は?。」
 ありちゃん、女将にそう呼ばれた少女は、恥ずかしそうにうつむくと、
 「亜…里彩……。宜…しく…ね。この子は、威琉鹿いるかって言うの。海の、威琉鹿。」
途切れ途切れだが、少女…亜里彩はそう言った。にゃぁん、と子猫が鳴いた。
 「妹の子でね。妹が亡くなってから引き取ったんだよ。」
 女将はそう言った。
 「そうですか。」
 轆轤は静かにそう言った。