複雑・ファジー小説
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.3 )
- 日時: 2019/06/08 10:48
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560
☆第1章 シニガミガッコウ 第2話
目深に黒いローブを被った俺とファミは、幽霊らに見送られながら屋敷をあとにした。
屋敷の外は森の中である。といっても、そこまでうっそうとしたところではない。十分ほど歩けば森の外に出られる。
涼しい森の中を抜けると、ぽかぽかとした春の陽気にさらされた。この黒いローブでは少し暑い。俺はファミをちらりと見る。俺はまだ下が半袖だからいいものの、ファミはしっかりと着込んでいたはずだと思いだし、心配したのだった。
鼻歌混じりに軽やかな歩みで進むファミは、白い髪をローブの中に隠し、赤い瞳を目深にかぶることでカバーしているものの、彼女が美少女だということは僅かに見える彼女の要素からわかる。
だがどうやら、暑いと感じてはいないようだ。
潔く諦めて歩を進めた。
森があるだけあってそこそこの田舎だったが、電車に揺られればたちまち景色は都会のそれになった。因みに、電車賃はファミが出してくれた。
人々がごったがえす大通りを堂々と黒いローブで歩く度胸はたいしたものである。聞けば、人間はたいして周囲に興味がないし、この黒いローブは影を薄くする効果があるそうで、今は透明人間に限りなく近い程度の存在感らしい。
俺はそれを聞いて、少し胸をなでおろす。
黒いローブ姿がダサいとかそういうことではなくーー。
『××くんが行方不明になって八日目です。警察は……』
時折雑音にまじって聞こえるニュースの中の自分の名前。
ぐ、とフードをかぶり直して口をかたく結んだ。
「はい」
ファミは唐突に俺に手を伸ばした。
「は」
俺が何か反応するより先に俺の片手をすくいあげ、軽く握った。
「都会では迷子になりやすいからねー弟子の安全を守るのも師匠の役目なんだよねー」
少しだけひんやりとした手に、その小さな後ろ姿に。
癒される。
ここにいていいんだよと、優しく言いきかされたように感じた。
いつもは師匠面なんてしないのに。
こんなときだけ。
師匠面するんだからなぁ。
「ほら、ついた」
大通りをカクンと曲がる。こんな道あったっけーなんて、思いながら。
すると、そこには。
おどろおどろしい文字で『死神の鎌専門店』という看板があがっている店の前についた。ガラリと変わった風景に内心ビクビクしながらも店を観察する。
外装はふるめかしく、紫色のペンキをぶちまけたような屋根はところどころはげていた。それなりに頑丈なつくりなのだろう店の前には蜘蛛の巣、ショーウィンドウには最新モデルらしいハイセンスな鎌。
「楽器を買うんじゃ……」
「楽器も買うんだよ」
しれっと言ってファミは店に入る。俺は躊躇いがちにあとに続いた。