複雑・ファジー小説
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.4 )
- 日時: 2019/06/15 01:46
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560
☆第1章 シニガミガッコウ 第3話
古めかしい外装とは違い、中は新しいものばかりだった。店内の音楽は流行りの曲、ピカピカに磨かれた最新モデルらしい死神の鎌。店内の中央には3Dに浮かび上がるデジタルなマネキン。そっと触れてみたが感覚がないということは、電子データなのだろう。
店内に売られる鎌を持ち、流行ものの服と合わせたコーディネートを着用したマネキンが次々と浮かび上がっては消えていく。
「はーいいらっしゃぁい」
接客だろうがなんだろうが、スマホは手放さないらしい店長の声は柔らかいというよりは、ゆったりとのばす声。バサバサのつけまつげと、これでもかと巻かれた見事な金髪。萌え袖になっている袖の方に目をやれば、しっかりと塗られたネイルが目にはいる。下は目が痛くなる蛍光色のミニスカート。
「相変わらず派手な格好をしてるわね」
「誰かと思ったらファミりんじゃないのぉ。連絡してくれないからどこかで餓死したのかと心配してたのよぉ」
「そもそもあたしはスマホ持ってないからね。連絡しようにもできないわよ」
呆れたように、というよりは楽しんでいるようにみえる。これが二人の挨拶がわりのようなものなのかもしれない。店長さんもスマホの所持を勧めたりはせず、むしろこちらに興味を向けた。
「それよかファミりん。そこの坊やはなんなのぉ?」
ファミは軽く肩をすくめた。
「あたしの弟子。今日はこの子に死神の鎌を見立ててやってほしいの。金に糸目はつけない。知ってるでしょ?あたしの金遣いの荒さぐらい」
そういえば、弾けもしないのにグランドピアノがあるというのはおかしい。
かなり新しいものだったし、三日前にいきなり現れて「買った」と言われただけだった。ファミの金遣いが荒いのはなんとなく伝わってくる。
それにしては、ファッションに興味がないのか毎日オーバーオールである。
折角の美少女なのだから、この店長までとは言わなくとももう少し着飾ってもいいのではないだろうか。
「ふーん。オーケーよぉ。ファミりんが見込んだ子の鎌を見立てられるなんて光栄だわぁ」
冗談か本気かわからないような声色でそう言われ、どうしたらいいのかわからずに固まっていた俺を指差す。
「任せて。死神学校でも人気者間違いなしのイケた男の子にしてあげるぅ」
俺に拒否権なんてものは用意されておらず、二十歳かそこらの女性にあれこれ鎌を持たせられ、ぺちゃくちゃとお喋りにつきあわされることになった。その間、ファミは店から消えていて、また違う店に出かけているようだった。
……本当に、買い物が好きらしい。
「これねぇ」
満足げに店長は鎌を持った俺を眺めて呟いた。
俺が握っている鎌の名前はブレック。
緑みがかかった柄の比較的シンプルだが使いにくいモデルらしい。初心者にそれを勧めるのはどうかと思ったが帰ってきたファミに「似合っている」と笑顔で言われ、俺は迷いなくそれに決めた。