複雑・ファジー小説
- Re: 将軍の銃口 ( No.3 )
- 日時: 2019/09/18 08:29
- 名前: 渾身 (ID: Xr//JkA7)
【朝鮮の王宮】
夜半より降り始めた雨が次第にその強さを増す。。。
そんな雨の中庭園を一人歩く悲しみに明け暮れた宣祖の姿があった。
その後ろにはホ・ギュンとハン内官(宣祖の内官)。二人は宣祖の姿を不安そうに見守る。宣祖は涙を流し、肩を落としていた__そんな姿はとても王とは言えぬ姿であった。
宣祖は空を見上げ、こう悟る。
(余は幼き頃から王位を夢見て生きてきた。。。しかしこれほどまでに大変な任務だとは思いもしなかった。先代の王もこれほど王位に心に負担をかけられて精神病を患ったのか…王位とはとても…恐ろしいものだ。。。)
涙を流し、心中そう悟る宣祖。
将軍の銃口〜英雄の戦い〜 第2話「謀反」
朝鮮が倭国からの出征を恐れていた時代。豊臣を恐れた朝鮮の臣下らは豊臣に取り入り、朝鮮と倭国の国交を結ぶ事を進言し、その反対派と対立した。朝鮮のリュ・ソンリョンはその戦を恐れ、1589年(天正17年・宣祖22年)柳川調信(倭国の使節団)と宗義智、玄蘇らと倭迎館で談を取った。朝鮮側は完全に豊臣が戦を起こそうと攻めてくる事を確信していた。
【倭迎館(倭国歓迎司館)】
『''征明響導''』と玄蘇が日本語にてリュ・ソンリョンに言う。
「征明響導だと?ハッハッハ。豊臣の関白はそのような事を言うのか?つまり、豊臣の関白は朝鮮に対して戦対意思だと言うか!」玄蘇含める日本の使節団らに怒鳴りつける。
『リュ・ソンリョン殿、誤解なさられるな。関白は決してそのような意思はない。』
「そのような事は信じられぬ。豊臣関白が''征明響導''を口にしたと言う訳は戦対意思である。そう朝鮮は認識する事とする。」と服を払い、館からリュ・ソンリョンが出ようとした時…
『''仮途入明''の交渉はどうだ?』
リュ・ソンリョンは玄蘇の言葉を聞いて立ち止まる。
「何だと?''仮途入明''?」とリュ・ソンリョンは驚いた顔で玄蘇を見る。
『関白は未だ戦対意思の確定の意思表示はしておられぬ。まだ朝鮮は安心していいぞ。だが一つこのまま戦争を起こさぬ方法がある。それは…光の海を王位に据える事だ。期限は2年。天正が20年になる時だ。』
と玄蘇らは取引をした。
「ああ。分かった。」とリュ・ソンリョンは頷いた。
(征明響導…征の心持つ者の中に響く心の内を導け 征…戦い)(戦対意思…戦いの意思を宣布する)
(仮途入明…保険をかける事。後にその事柄が変化する事を恐れて前もってその変化は未だ不明である事を伝える事。)
【倭国の関白邸の前】
(戦乱反対)の文字を手にした倭国民たちが関白邸の前に群がる。
『関白様!我々倭国の民たちは決して戦乱に乗じません!関白様。戦乱はお考え直しください。』
と一人の男が関白邸の前で訴える。
そんな倭国の民たちを包囲する秀吉と加藤清正率いる兵士たち。
『戦乱に反対する者たちを皆殺しにせよ!』と豊臣秀吉が刀を掲げて言う。
兵士たちは無惨にそんな倭国の民たちから血を流させる。関白邸の前には血の海があった__
西暦1589年 倭国の戦乱反対派が豊臣に殺され、反乱が倭国の各地で引き起こった。豊臣反軍がこの時より決起したとされる。この豊臣反軍は日本の朝鮮出兵の時にも出没したとされ、豊臣を何かと邪魔してきた。
【リュ・ソンリョンの屋敷】
リュ・ソンリョンは一呼吸置いて目を見開く。
(これで…よかったのだろうか…私が謀反を起こさねば国は戦乱に陥り、私が光海君様を王位に据えれば歴史に逆賊として刻まれる事になる。私は国を選ぶか名誉を選ぶか__究極の選択に迫られてしまった__)
と心中リュ・ソンリョンは複雑の気持ちだった。
そんなリュ・ソンリョンの元へホ・ギュンがやって来る。
「兵曹判書(ヒョンジョパンソ、役職)様。酒だけ飲んでおられたのですか?つまみも持ってきましたぞ。」
とホ・ギュンが笑いながらリュ・ソンリョンの元に座る。
「洪山(キョサン、ホ・ギュンの号)、来てくれたのか?」とリュ・ソンリョンがとても喜んだ声で。
「ハッハッハ。何をそれほどお悩みになっておられるのです!」とホ・ギュンはトクトクとリュ・ソンリョンの杯に酒を入れながら聞く。
「いいや、何でもない。そう言えば王様の体調が最近よくないとか。」と不安そうにホ・ギュンに質問する。
「少々王様は心の病を患われたのです。」とホ・ギュンが涙を目に溜めながら話す。
「ぜひ、そなたが王様の心を少しでも癒してやれ。王様の1番の癒しは洪山なのだから。私はこれから王様に不忠を犯すやもしれない。いいや、不忠ではなく大逆罪だな。神からは甘んじて死の罰も受けるつもりだ。」
と笑いながら言う。
「何をするつもりですか?」とホ・ギュンが聞く。
「そなたもいずれ知る事になるだろう。だが今は知ってはならない。」
終