複雑・ファジー小説

Re: 朧月ー首魁者の乱ー【完】 ( No.23 )
日時: 2019/11/07 08:46
名前: エイ (ID: Xr//JkA7)

【最終章 朧月の下で】

バンダルは宮の庭園で白髭を伸ばして茶を飲んでいた。庭園の周囲には満面の薔薇があった。その隣には親衛隊長としせハヤヌの息子コガンがいた。そんなコガンに話しかけた。『まだ余を恨んでおるのか?』とのバンダルの質問にコガンは戸惑った様子でこう返した。『決してそのような事はございません。何故国王陛下をお恨みするなど…』『私はとても後悔しておる。何故自らの野心を抑えられなかったのか…国王に何故なったのか。国王にならなければ笑ってそなたの父と余は幸せに暮らせたやもしれぬ。』と言った次の瞬間バンダルは血を吐き座っていた椅子から転げ落ちた。バンダルは胸を必死に叩いていると気を失ってしまう__するとそこにバンダルの親衛隊長タソクが現れた。『大変です。飛鳥国がタルバルンに攻め入っております。』

船に乗り海を渡る戦艦。その戦艦の先頭には飛鳥国天皇の姿。天皇ら乗る戦艦の前にタソクが乗る戦艦がやって来た。天皇は慌ててこう言う『向かい撃て!』と。天皇らの戦艦は大砲をタルバルン国側戦艦に放った。するとタソクは縄を飛鳥側戦艦に結びつけ、引き寄せた。飛鳥側の戦艦は脆かったためタルバルン側戦艦の頑丈さによって崩れかれた。次の瞬間飛鳥側戦艦は縄を斬り、爆弾をタルバルン国側戦艦に投げ入れた。爆弾は瞬時に爆発してタルバルン側戦艦は沈んでいった。タルバルン側戦艦は全滅した。タルバルンは飛鳥から南に攻め入られ占領された。その後西と東も共に占領されついにタルバルンの北に位置する王宮が残った。東に寄せていた国庫も占領された為タルバルンは兵糧を全て失った。

宮から逃げるタルバルンの官吏たち。宮には誰一人居なくなり残されたのは今にも息絶えそうなバンダルとその看病するコガンだけ。コガンはバンダルの汗を拭いていた。するとバンダルは手を落とした。バンダルの鼻からは息が感じれなかった。

バンダルは約60年の生涯をこの日幕を閉じた。バンダルの死と共にタルバルンも滅亡し、その後飛鳥国と合併した。倭国と它国が合併する時は663年白村江の戦いの際だとされる。バンダルも663年に生涯に終止符を置いたのであろう。彼は''判高天皇''として朝鮮半島にある『三国史記』に''倭国の国王''と記されている。彼についてはほぼ記述がない。この物語はフィクションである。そこは了承してほしい。

バンダルは輝く光の方へ進んでいた。バンダルの目の前に手を伸ばすタイソブァクやクゥヌ、チチャンがいた。『これが人生か。人生とは苦しいものでもあるが美しく華麗な二文字。』夜空に華麗な朧月が見えた。それに照らされバンダルは進んだ。『桜の上に君臨する朧月__朧月がある夜は桜が散る__散り去る桜の花びら__その花びらは華麗だった。』
バンダルは歩みを止めた。足元に華麗な一枚の桜の花びらが。『一枚の花が全て変える事だってある。』