複雑・ファジー小説

Re: 壬辰丁酉.第3章《日本来朝》 ( No.6 )
日時: 2019/12/09 19:32
名前: エイ (ID: Xr//JkA7)

1年前…1589年の朝鮮・漢陽

『王様。鄭汝立《チョン・ヨリプ》が謀反を起こしました。』

1589年(天正17年 宣祖22年)鄭汝立が反乱を起こす。彼は1546年に全羅北道全州府にて生まれる。両班家の子弟の出生である。小年時に李珥及び成渾の弟子となり、1567年に進士及第、1570年に文科及第、1583年に礼曹佐郞、翌年には修撰を歴任している。政治的には当初西人に属したが、後に東人に参加。更に師事していた李珥を非難したことより西人から強く批判された。またこうした行動は宣祖の不興を招き、その後は官を辞して帰郷、故郷にて学問研究と武装組織である大同契を結成して倭寇に対抗した。

西人派《ソインパ》の李恒徳《イ・ハンボク》が宣祖に息を切らしてそう通達した。

その通達にその場にいた李徳響《イ・ドッキョン》は李恒徳にこう怒鳴る。

『何を根拠に行っておるのだ都承旨《トスンジ、王からの伝達や王への報告を行う官庁の長官》。竹島《チュクソム、鄭汝立の号》が謀反を…起こすなど!決してあるものか!』

西人派の領袖である鄭徹《チョン・チョル》が惨状の刑場を立ち言った。

『逆賊の乱暴狼藉を一つ残さず明かさせるのだ!』

鄭徹は気味の悪い笑いをして拷問命令を下す__そこへその様子を不安気に思った李山海《イ・サネ》や柳成龍《リュ・ソンリョン》がやって来た。

『左判《チャパン、左議政チャイジョンの略語 目上の者が下位の者に対して言う用語。朝鮮の官位一品の三代議員》。拷問も程々にしなさい。兵士達も疲れるだろう。8刻【4時間】も続けて拷問するなど…』

鄭徹は李山海と柳成龍の耳元で静かに呟いた。

『領議政《ヨンイジョン、朝鮮朝廷最高位(王族や外戚を除く)であり朝鮮三代議員》大監《テガム、正一品以上の者に対して下位の者が敬う敬称》。ご心配なきように。兵士は交代で拷問させております。』

鄭徹は二人を睨み付けるかのような眼で見上げ二人の元を立ち去った。

そして柳成龍は鄭徹の去り姿を見て第六感で感じた。『左判から大変危険な威脈を感じます。注意すべきです。』その忠言に李山海も同様そう感じて頷いた。

  


      『明への道を開けるよう朝鮮に交渉せよ。』




豊臣秀吉の口からその言葉が出た瞬間短秒の間場が凍りついた。明との戦いがもうすぐ始期である事に豊臣秀吉の家臣らは勘付き誰一人として朝鮮への交渉を進んで行こうとする者はいなかった。

1589年 対馬《つしま》島主である宗義智《そうよしとし》と玄蘇《げんそ》そして柳川調信《やながわしげのぶ》が交渉人として朝鮮に来朝した。

宗義智は鳥獣を交渉人の相手役として登場した李徳響に渡した。李徳響は朝鮮には一切ない形の猟銃に驚いた。
『ハッハッハ。このような貴重な品を頂けるとは倭国の関白殿下に朝鮮は感謝しているとお伝えください。』
宗義智は李徳響にそう言われると唾を呑み汗を掻いた。

宗義智は倭交館【倭国との外交支館】で緊張を感じ喉を潤す為に温茶【外国に温かい感情を出すという意味合い】を飲み一息つき宗義智は言った。

『李徳響様。関白殿下は恐ろしい方です。関白殿下は明を始め英国や米国更には露国までを属国にしようと画策しております。「征明嚮導(せいみんきょうどう)」や「仮道入明(かどうにゅうみん)」へと条件を緩和し、李氏朝鮮に「仮道入明」を求めようとしています。征明嚮導は「明へ攻め入るときに先導を務めよ」という意味で、仮道入明は「明へ攻め入る際に道を貸せ」という意味です。この条件を朝鮮に飲まして帰らねば私の首が飛ぶ事でしょう。』

宣祖に宗義智の言葉がそのまま李徳響の口から伝わった。

『やはり思った通りだ。関白とやらは獣の国を立てる気だ。明を服属させる為に先導させると偽り兵勢まで要求してくるのだろう…その使臣に決して従ってはならぬぞ…』

宣祖は李徳響の言葉に震えに震えた。

豊臣秀吉《とよとみひでよし》現在は天下統一を遂げた華麗な英雄として知られているが400年前の豊臣秀吉は''極悪非道な国王''として知られていた。確実に事実上極悪非道な国王だが時代の流れによって現在に辿り着いた。何故今に辿り着いたのかは不明だがどちらも言えている。人によって考察は変わってくるだろう。天下一の英雄として考える者もいるだろうがもちろん極悪非道な国王として考える者もいるだろう。