複雑・ファジー小説
- Re: 御魔の囁ー ( No.2 )
- 日時: 2019/12/20 18:00
- 名前: エイ (ID: lBubOowT)
ーー私はどうすれば良いのだ__朝倉家からも破門され全てを失ってしまった。どうすれば良いだろうか。越前国の市場をそうひたすら考え二人は歩いた。そして…二人は京都の南部にある山城国へ参った。
ー京都 中京区ー 永禄九年(一五六六)五月十八日
松永久秀《まつながひさひで》は大層頭を抱えていた。彼は傀儡の将軍を擁立しようとしていた。しかし現在の将軍である足利義輝《あしかがよしてる》は直接統治に固執する者である為邪魔である。
『謀叛を決起しよう。そなたらと共に…』松永久秀が話しかけているのは三好政権《みよしせいけん》を牛耳る畿内の三好長逸《みよしながやす》と三好政勝《みよしまさかつ》と岩成友通《いわなりともみち》である。
No.2《光秀と信長の出会い》
夜が明け松永久秀の長男・松永久通《まつながひさみち》と三好長逸ら三人が清水寺参詣を名目に集めた一万余りの軍勢を率いて二条御所に押し入り訴訟ありと偽り取り次ぎを求め御所へ侵入した…
『将軍!将軍に訴訟したき事がございます。取り次ぎ願う。』義輝の配下の武士が久通の通達を受け御所へ入ろうとした隙にその他の武士に攻撃を仕掛けて御所前を掌握、そして久通らと一万の兵士は御所の門を通り御所下へ行った。
通達へ行った兵士が久通らにやられる兵士らの痛声を耳にし義輝寝所へ走り寄って来た。
『将軍。松永久通らの謀叛であります。裏門からお逃げ下さい。敵の軍勢は一万であります。』
横になっていた義輝は静かに起き上がり日本長柄武具である薙刀《なぎなた》を手にし配下の武士に言った。
『逃げたくば逃げればいい。私は決して逃げることなどない。私が世から去り連中の悪行を世に知らしめる事が出来る機会である。そうだ。確か…今日の午後に明智秀安の息子らがこの御所に参ると言っておったな。彼らを弟の義昭《よしあき》に仲介するのだ…』
そして外から久通の声が聞こえた。『足利義輝!出てこい!』 そして義輝は薙刀を手に寝所から飛び出した。
『足利義輝はここにおる。いざ、勝負じゃ!』義輝は敵軍の槍に突かれ地面に伏してしまう__するとその瞬間敵軍に一斉に襲いかけられ殺害された__その際に在京していた山科言継の『言継卿記』によれば義輝は自害した可能性もある。
仏門でお経を唱える覚慶《かくけい、義昭の法名、後の足利義昭》の後ろから明智光秀と秀満が寄って来たのだ。
『千歳丸【仏門に入る前の義昭の幼名】様であられますか?私は明智光秀と申します。』その様に申す光秀に覚慶は振り向き言った。
『そうだが兄上が仰っておられた明智秀安殿の息子とその甥であるか?』そう聞かれた故光秀は頷いた。
庭園にて二人は茶を飲んだ。義輝が久通によって殺された一件を光秀より聞かされた。
『千歳丸様。将軍の葬式に出席くださいませ。』しかし義昭はその葬式に乗り気ではない。自らを仏門に入れたのは他でもない兄なのだから。義昭がいた仏門は平安時代から知られる過酷な試練でいっぱいの仏門であった。しかし何とか光秀は義昭を説得し''義秋''に改名し葬式に出席した。
勿論子がいなかった義輝が亡くなった後は義昭が将軍職に就くのは約束されてるしかし朝廷の雰囲気では20年以上前に将軍候補として上がった足利義栄が再び上がったのだ。大臣らは松永久秀らの圧力により仕方なく義栄を擁立しようとしたに違いない。しかし義栄には違う問題もあった…義栄は病弱であった。義栄は背中に腫物を患っていたのだ。この様な問題がありつつも久秀は黙認した。
ー義輝の葬式ー
そこには信長も出席していた。当時の信長は桶狭間の戦いを終戦した直後であった。(桶狭間の戦いは1560年終戦)信長は以前から義昭と茶を飲む関係であった。
『信長殿久方ぶりですな。十年ぶりですか?信長殿が今川家と戦うと聞いた時は誠に心臓が止まるかと思いましたよ。』
『ハッハッハ。心配して下さったのですか?ありがたいですのう。ところで右の者は誰ですか?』信長は光秀に目を当て義昭にそう尋ねた。
『明智光秀と申します。明智城城主の親戚です。』その言葉を聞き信長は大層不審に思った様だ。それもそうだ十年前に明智城は斎藤義龍によって陥没したのだ…生きているはずがなかろう…信長は疑いの目を向けつつも信長は聞き流すことにした。
そして将軍候補と足利家が集まる将軍就任式で将軍武士が任命の書を読む。
『永禄十一年二月八日、将軍就任式を始める。亡き前将軍の意見と大臣らの意見の下次の将軍を決めたいと思う。亡き前将軍は病により急死なされた為意見を得られませんでした。大臣らの意見としては義栄様に98票、義秋様に1票、そして義句様に17票であります。そして占い師によると義栄様は優しい性格を持っている為長寿なさり民を思う善政を敷く事が出来るでしょう。しかし義秋様は優しい性格をお持ちになられていますが身内の配下に裏切られる事となり長寿は出来ますが将軍職に就いても追放される事となるでしょう。よって義栄様に将軍職が渡される事となります。』
それを聞いた瞬間、静かに彼が立ち上がった瞬間__松永久秀は足利義昭の肩に手を置き武官を呼びこう伝達した。
『興福寺を開けるのだ。義昭公を興福寺に幽閉するのだ!』
終