複雑・ファジー小説

Re: 御魔の囁 ( No.6 )
日時: 2019/12/27 18:32
名前: エイ (ID: lBubOowT)

永禄十一年(一五六八)九月

『丁子府右臣織田信長が上洛するからには!次期将軍である足利義昭公を必ず将軍職に就けねばならぬ!』

織田信長は刀を上に掲げて刀を京の宮に向けた。

『信長将軍!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!』

万歳百唱が信長立つ京への渡し場で行われた。既に一万五千の兵が岐阜城を出立した。余りの大軍に松永久秀らも驚いたのだろうか。信長軍に参戦したのだ更にそこに徳川家康や浅井長政が加わり約二万の兵が九月八日に愛知川の北岸に進出した。更に九月十日には総兵力五万五千を超える大軍である。

『尾張の織田信長が京に攻め入って参るぞ!』

 数日後…上洛戦の一番の山場であったと思われる六角氏《ろっかくし》との戦いで六角氏を薙ぎ払うかのように戦勝し京の民々らは尊卑を関係なくして更に騒然となる。

 民々らは織田信長が今日の人々に乱暴狼藉を働き虐殺を図るのではないかという不安が京には広がっていた。


  No.5《信長入京》


 そしてそんな噂が今日に広がっている間信長軍は破竹の勢いで入京を果たしある居酒屋で信長と義昭は二人で酒を交わしていた。

 『義昭公。どうぞご安心下さいませ。私が京に入京したからには必ず次期将軍の義昭を奉じ征夷大将軍に致しましょう。義昭公の御龍魂《ごりゅうこん、命》を狙う輩が私の目の前に現れましたら私の切り味のよい日本刀で討首してさしあげましょう。』

 信長のやる気溢れる姿を見て義昭は微笑むかの表情で信長を見つめた。信長はこの時、足利義昭を本気で守ろうと躍起になっていたとされる。配下の者たちには

『警備を怠ってはならぬ』『奉じた御天下様を失えばその配下は終わりである』『御天下様を狙う輩を斬らねば終わりである。』

 口を酸っぱくして配下の者たちには幾度となく言ってきたのだ。折角上洛しても主を失ってはとそう心配して来た。お蔭で軍律は確と守られ決して不祥事などが軍兵間である事はなかった。信長は義昭に尽くすだけ尽くしたが義昭は信長の評判や信長を慕う者達が大勢いる事に嫉妬を抱き後々疎むようになっていく。その結果信長の天下取りを邪魔する事になるのだ。

 信長は五万を率いて入京するが決して京の民々が信長軍に虐殺されたり乱暴狼藉を働かれる事は無いに等しかった。民々はもちろん公家《くげ》らも信長が朝廷や都を害そうとする意思はない事を知り安堵の息を吐く。そして信長の噂もすぐに広がった。

『先代将軍の足利義輝様を殺害した三好三人衆《みよしさんにんしゅう》を倒す為に上洛したのだ。決して政覆《せいぷ、謀反や乱戦を行う事》を図った訳ではないのやも知れぬ。』

『大変だ!足利義昭様の家来様の明智光秀様が自ら財産を全て米に変えて街市場で配っているそうだぞ。行ってみよう。』

『足利義昭様の所では義昭様側に付けば1両貰えるそうだ。早く行くぞ!』

民心は信長入京後すぐに信長側に向き義栄や三好三人衆は窮地に陥った。

明の銅銭通貨である永楽通宝が描かれた旗印を背中に背負った織田軍が京を整然として足を前にしていた。そのうちの何千人かは火縄銃を手にしていた。この火縄銃の量とは…これを集めるにはどれほどの財が必要なのだろうか…

 信長を見物にやって来た民々はいろんな事を呟いた。そして見物人の前に信長。自らが腰に刀を置き図太い眉毛、鼻下に長い黒髭、綺麗に纏めた丁髷、細い目をして口角を少し上げ笑みを見物人らに見せた。
 
 特徴的なその顔彩に見物人も少し驚いたようだ。輿に乗る足利義昭の隣で馬を跨る明智光秀の端正な顔立ちに女の見物人らはキャーキャー言った。しかしこの時明智光秀も歳はそれなりのものであった。明智光秀はこの時丁度四十歳である。明智光秀とこの時初対面だった将軍村永外英《むらながそとひで》の娘は光秀を容姿端麗と申したとされる。(お世辞ではない)見物人らは光秀に見惚れて呟いていた見物人らは一斉に静まり返った。