複雑・ファジー小説
- Re: 御魔の囁 ( No.7 )
- 日時: 2020/01/06 16:56
- 名前: エイ (ID: lBubOowT)
信長軍は滋賀の大津《おおつ》奈良の大和《やまと》京都の山城《やましろ、やまぎ》兵庫の摂津《せっつ》を順に平定し敵に回っていた岩成友通《いわなりともみち》を降伏させ三好の三勢《みろしのさんぜい》を京都から退けさせた。
永禄十一年(一五六八年)十月十八日
その後織田軍は足利義昭らと京に帰還し足利義昭は征夷大将軍の宣下を受けた。この乱事は''織田信長上洛''などと言われるが当時京の人々は信長が足利義昭を奉じ上洛してきたのではなく足利義昭が諸将らを率いて自ら上洛してきたのだと思い尾張や美濃を平定した実力者などと誰一人思わなかった。信長はこの時はまだ名が知れていなかった。信長は義昭からその後副将軍の地位を勧められるが断り何一つ恩恵を受けなかった…
『余の将軍就任を祝い宴会を開くぞ!信長公ら今回の功臣らを早く呼集せよ』義昭はそう言い出し各地にいる功臣らの元へ使者を遣わせ呼集した。光秀も立ち上がり信長の宿所である古津所《ふるつところ》に参上した。
『信長公。将軍様より信長公の呼集を命じられた為お迎えに上がりました。将軍様は将軍就任に尽力した信長公をもてなしたいという気持ちより宴を開かれました。どうか今回の宴にお上がり下さい。』
そう申す光秀に少々信長は渋い顔をした…
『三好勢は今は退いたがいつ京に再び進軍してくるか分からぬ宴をしているうちに数万の軍兵を集め進軍してくるやも知れぬのだ。''私は将軍様のお気持ちだけ受け取り三好勢を全滅させたら再びその将軍様の恩恵を受け取ります''…将軍様にはそう伝えなさい。』
『ですが………』
光秀はどうしても宴に来て欲しかったが信長の後ろに控えていた柴田勝家《しばたかついえ》や木下秀吉《きのしたひでよし》が強く睨んでくる為その二人の圧に押され光秀は下がって行った。
『申し訳ございません。信長公は三好勢の再進軍を心配し今回の宴会を遠慮なさいました。何回も信長公にいらっしゃるよう申したのですが、、、』
光秀は頭を下げ義昭に必死に謝った。
『大丈夫だ。そなたは下り宴会はお開きにせよ』
苛立ちを含んだ声音で光秀にそう伝達した…義昭は自らが将軍であるのに自分勝手な信長に少々苛立ちを感じる。
数日後…永禄十一年(一五六八年)十月二三日
『将軍様。以前、意味の分からぬ理由で宴会を欠席した織田信長を京都から追放して下さい。織田信長は将軍様の命令に背きました。このままでは将軍様の違う命令でも逆らいいずれは反発するようになるでしょう。』
将軍侍下《しょうぐんじげ》である横山命政《よこやまみょうぜい》は義昭に対して奸言した。信長は追放は免れたものの将軍就任第一等功臣の証である長師《おさ》の地位を失った。
『将軍様が私の地位を剥奪するなどあり得ぬことだ。宮のどこかに奸臣がいるに違いあるまい。』
信長は前々から心配になっていた。下々の者らに奉じられた将軍が''将軍地位に就いたのはだれのおかけだ''と奸臣に脅され悪い方向に向かわないか…その心配は見事的中したのだった…
十月二八日に信長は数千の兵を率いて巨大な横山命政の邸に攻め入る。
『我々が立てた将軍様だ!そんな将軍様を悪い方向に持っていく奸臣は武の力で倒さねばならぬ!この乱世…周辺を静謐となり平和にするには…武の力によって天の下に君臨しこの大日本を統治せねばならぬ!儂が統治すれば必ずしも周辺の武将も静謐となり平和が訪れるだろう!』
織田信長は横山命政を最初にし義明に奸言する臣下らを約百名倒したとされる織田信長は三好勢への警戒を緩めることなく勢を増力した。横山命政は足利義昭にも嫌われる程のずる賢い臣下であったとされる…
終