複雑・ファジー小説

Memento mori ( No.2 )
日時: 2020/01/30 07:46
名前: おまさ (ID: mXej9PvR)

「・・・何とか守り通した、ってとこだな。・・・ったくよぉ、国のお偉いさんどもは一体何を考えておいでなのか知らねぇが、このまま公国勢力が強まればいつか陥ちるぜ、この国境。魔導士の後方支援がありゃあ、ちょっとばかし楽にはなりそうだが・・・・。・・・ん?あれはーー、」

「ーーー隊長、少年が一人、戦場に・・・」
「わーってるよ。ちょいと、話を聞いてみるかね」
「隊長!?間者の可能性も・・・あー、もう。自由過ぎるでしょあの人」





「ーーーーーよっ、ボウズ。どうしたんだよこんなとこで」
「ーーー。あ、あの・・・おか、おかあさんを、その・・・さがしに」

「・・・お前さんと母ちゃんは、この辺に住んでたのか?」
「う、ん・・・きょう、はたけのやさいをとりに、ここに・・・で、でも、もどってこなくて・・・すっごく、こころ、がいたくなって」

「ーーー、そうか。・・・・・ごめんな、ボウズ。畑荒らさせちまって。多分、あそこにあんのがボウズの畑だろ。公国の奴らに侵入られちまった」
「そうだけど・・・なんでおじさん、あやまるの・・・?あやまるのは、わるいひとだけだよ・・・?」

「まあ、そうとも限らんさ。ボウズの言い分には一理どころか百理ーー、確かに間違っちゃいないけどな」
「そう、かな?」
「おうよ。ただーー、」




「ーーーただ、何事にも必ず意味はある、って話だ」
「そう、なの?」
「ああ。周りはともかく、俺はそう思う」
「・・・。」



「例えば・・・随分と物騒な話になっちまうが、誰か人が殺されたとする」
「ころされちゃうの?」
「そうだ。でも、何かしら意味があると思う。もしかしたらそいつは、悪事に手を染めた奴かもしれない。もしくは、誰かを殺めた奴かもしれない。だったら、そいつは、少なくとも復讐の為には役に立った・・・なんて言い換えることもできる」
「うん」
「虐殺で、命を弄ばれ蹂躙される奴は、少なくともそいつを殺した奴のちっぽけな自尊心を満たす位には役に立つーーーなんて言い換えることもできる」
「うん」






「要は、どんなことでも意味を見失うな、っつーことだ」






「悪かったな。少し難しい話だったかもしれねーが、ともかく。独り言に付き合ってくれて、礼を言うよ」
「・・・おじさん、このあとどうするの・・・?」
「俺?まあ、なるようになるさ。ーーーそれより、ホレ」
「?」
「百合の花だ。折角だし母ちゃんに持ってってやれ」
「いい匂い・・・ありがとう」



「ああそれと、もし母ちゃんに会ったら、謝っておいてくれ」
「どうして?おじさん、いいひとだよ?」
「理由はいいよ。ーー頼む」
「うん・・・」








「おう。すまん、ちょっと話してた」
「・・・隊長、あの少年は?」
「あのボウズが間者?ーーそりゃねぇな。あの歳で、あんな器用に腹芸できる奴なんていねぇ」
「そうですか」
「でもまぁ、」





「ーーーー意味を見出ださなければ、きっと誰も生きられなかったのかもな」



隊長と呼ばれた男は、傍らに寝かせてある女性ーーその顔に被さっている白い布を捲った。
そして。




























「本当にそっくりだなーーボウズ」