複雑・ファジー小説
- Re: シルキー&フェイのアトリエ【オリキャラ募集中】 ( No.24 )
- 日時: 2020/04/12 23:50
- 名前: L ◆zWpDOhpQ2s (ID: 1JjPbNpp)
第一章 少年エミール
シルキーとフェイはユニサスと別れた後、霧の森を出てアンバーから汽車に乗り、領都「ミスト・フローライト」へと向かう。
ミスト・フローライトは、フローライト領の中心都市であり、規模は他領土よりも大きく大陸最大である。現領主「ウィスタリア・ミスト・フローライト」と領主やフローライト領を守護する騎士団などが領地を管理、巡回、擁護しており、一見平和に見える。
しかし近年はフローライト領の各地で地震が頻発し、その地震の影響で地面が割れ、そこから瘴気があふれ出ている。瘴気が噴出する地域を立ち入り禁止区域とし、一般人の一切の立ち入りを禁止、住居の立ち退きを強行して対応しているものの、徐々に住む場所が失われていき、行き場を失った者は難民として領都のスラム街に行きつく。
当然領主ウィスタリアはこれを問題視してはいるものの、予算や人材、食糧などが追いつかずにいる。
治安も年々悪くなっていき、弱きが虐げられている現状だ。
シルキーとフェイもその話はユニサスやジャクスから聞いており、何とかできないものかと考えてはいる。……今は何をしても「子供だから」と流されてしまうのだが。
汽車がミスト・フローライトへと着く。
活気があり、駅通りは人で埋め尽くされている。白く整った石畳で埋め尽くされている道、白い壁の見上げるほどの建物がずらりと並び、壮観だ。街の中から「安いよ」、「早くしないと売り切れるよ」と客寄せの声が響き、店も並んでいる。香ばしい香りが鼻を刺激して、シルキーの腹の虫が鳴き始めた。恥ずかしそうに顔を赤らめるが、首をブンブン振って気を紛らわせる。今は領主に用事があるのだ。シルキーとフェイは目の前を見る。
駅通りから真っ直ぐに見える、大きな白い壁の城……あれが領主がいる城だろう。
「ううん、いつ来ても活気があってにぎやかだよねぇ」
シルキーは人込みに圧倒されながらも、ワクワクした様子で小躍りすらしている。フェイも昂る面持ちで頷いた。
二人は街中を歩きながら城を目指し、話をする。
「そうだね。大陸でも最大級の街だって師匠言ってたな」
「それにこの街、壁も城も真っ白だよね!」
「先生が「白は「高潔」、「純粋」、「清楚」を意味する」って言ってたし、そういう感じなのかなぁ。領主様にはお会いしたことないけど、きっと清楚で気品ある人なんだろうな」
「なんでも、精霊の力を宿しているおかげで長生き〜とかなんとかって聞いたよ?」
「すごいね、精霊の力を宿してるって! 僕達じゃ精霊と会っても契約とかできなさそうだなぁ……」
フェイはため息交じりにそんなことを口にして、がっくりと肩を落とす。
精霊とは、万物に宿りマナを糧とする特殊な種族である。強大なマナを有しており、人間でいう魔法適性がなくても魔法術を放つことができる。マナを糧に生きているため、もちろんマナがないと生きていけないし、マナが減少し枯渇すると自我を失って暴走してしまう。さらに、マナの性質にも影響されやすく、瘴気に触れれば簡単に魔獣と化してしまうのだ。数も人間の数の4分の1にも満たず、さらに魔導具行使の影響で数も減っている。
精霊が減るという事は、マナが減り、大陸が衰退の一途を辿っている証拠だ。
ただ、人間と互いのマナと力を交換する契りを交わす……即ち契約すれば、精霊は周囲のマナに影響されることなく、人間と共存できるそうだ。
デメリットは、一度契約を交わせばどちらかが死ぬまで破棄することができない。
……という話をユニサスから聞いた。フェイはそれをシルキーに説明してやると、シルキーは素っ頓狂な顔でフェイを見つめる。
「と、とにかく! 精霊は特別なんだよ。長生きだし、強いし、マナそのものだって言っていい」
「だから魔導具を使うと数が減っちゃうんだね〜」
「……うん、いつも先生や師匠が口を酸っぱくして教えてくれてる内容なんだけどね」
「たはは」とシルキーは笑い飛ばして前を見ると、眼前には城が聳え立っていた。目的地についたのだ。
「よーし、さっさと領主様に謁見して、アトリエをもらおう!」
「そうだね。……うまくいくといいなぁ……」
シルキーは両腕を振り上げ、フェイは何か嫌な予感がして肩を落とす。
二人は門番に紹介状を見せ、中へと入っていった。