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複雑・ファジー小説
- Re: 闇玉Atlantis 【短編集】 ( No.1 )
- 日時: 2020/04/25 20:26
- 名前: 縁葉 (ID: qToThS8B)
#1【母であり、_____でもあり】
「ただいま。買い出しで遅くなっちゃった…。今からご飯作るから待っててね。」
彼女に向けて声を発しても、いつも通りぼんやりと窓を見つめていた。彼女は朝から晩までパジャマ姿であり、髪の毛はロングヘア。ハッキリ言って、だらしない。魂がいつ抜けても、私は数日間は気付かないくらいに。しかし、どんなに最悪な人間でも暖かく見守ってあげるのが家族。それが当たり前だと、私はずっと思っている。
私は台所に食材を並べると、軽く溜息を付いた。
「あの幸せな時間に戻りたい…。」
過去の記憶が蘇ってくる。
家族で笑い合っていた。そして、子供は親めがけて走っていき勢いよく抱きつく。幸せそうに見つめる両親。それは微笑ましい絵に描いたような家庭。時には優しく、時には厳しく。嬉しさを分かち合って、悲しさも分かち合う。高望みだけれども。_____そんな、幸せな家庭が昔にはあった。本当に。
「あれ…私。」
涙が出ていた。透明で、美しすぎるかもしれない。それが頬を伝って地面に落ちる。
やだ…シミになっちゃうかも。でも、苦しい気持ちが喉を熱くする。やっぱり体はウソをつかない。
「もとに戻ってよ…母さん。」
そこには、母となった娘と娘となった母がいた。
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●解説
料理を作ろうとしているのは娘であり、窓を見つめているのは母。何があったのか、母親は
“うつ”のようになってしまった。
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