複雑・ファジー小説

Re: 短い話だから、ショートストーリーと言います【短編集】 ( No.1 )
日時: 2020/05/15 09:39
名前: 真朱 (ID: Yv1mgiz3)

#1 「指切りげんまん____」




「由実、毎日しっかり勉強するって約束してくれる?」

「うん、約束するよ!指切りげんまんしよぉ。」

由実…“本野由実”。小学3年生の彼女は、色鉛筆を握りしめながら足をバタつかせていた。

今日。夏休み。
彼女の母親は、長休みの学力低下を目に付けて彼女に“勉強”をさせようとしていた。…つまり、教育ママである。

話を反らしてしまうが、『指切りげんまん』と言うものをご存知だろうか。『指切りげんまん____』から始まる、歌のようなものだ。子供の頃は、親と約束する時に歌った者もさぞ多いだろう。やり方はただ一つ。双方の指を絡ませ、お決まりの歌を歌う…それだけだ。だからか、今も多くの人々に親しまれている。

『指切りげんまん…嘘付いたら、針千本飲ます…指切った。』

この歌が、部屋全体に響いた。
わずか数秒。一瞬で約束は結ばれた。

翌日、彼女は約束を守り続けた。
毎朝30分。母親が買い与えた“計算ドリル”を鉛色の鉛筆で埋めていった、芸術のように。

時は流れて、8月10日。
その日はいつも通りではない____違和感があった。

彼女の机の上…そこには、今日の分の手がつけられていないページが、無造作に置かれていて殺風景なものと化していた。

その頃、彼女は『勉強』と言うものを忘れ、友人と共に『遊び』と言うものを手に入れていた。

________それから3時間程未来、彼女は母親に『針千本』飲まされる事になる。