複雑・ファジー小説
- 1話 ( No.3 )
- 日時: 2020/12/04 21:29
- 名前: おでん猫 (ID: vzo8adFf)
「……?」
少女───ユネル・シクルットは柔らかい薄緑色の光の中で目覚めた。
(……えっ?あれから私……気を失って、それから……どうなったんだっけ?)
ユネルは、
(此処は何処?)と思い、辺りを見渡そうとするが、何も見えない。
それはまるで霧が視界を覆っているよう。
ただ、ユネルは何故か心が安らいでいるように感じていた。
どこかでこの感覚を感じたことがあるな────と思ったら、気づいた。
森だ。多くの鮮やかな草花が咲き誇り、互いに自分を強調し合っているような森ではなくて、地味でぼんやりとした印象の花が多く、素朴だけれど安らぐような、そんな優しい雰囲気を纏った森。それと感覚が似ていた。
どうして森と雰囲気が似ているのかな────なんてことを考えていると、誰かの声が聴こえた。
「キミ、大丈夫?」
その声はユネルが知っている声ではなかった。
聴き取れた限りで理解できたのは、「キミ、大丈夫?」と言っていたことと、自分よりも少し年上くらいの女の子の声、ということ。
「ううん……」
目を覚ますと、目の前には長くてさらさらしてそうなアッシュグレーの髪の少女が立っていた。頭には黒の小さいカチューシャ。リボン付きの可愛らしいブラウス。
「あ、あのっ……」
と口を開きかけたら、少女と薄緑色の光がユネルから遠ざかっていった。
パチン、とガラスでできた玉が割れるようなおとが頭の中で反響したと思ったら、周りはユネルが倒れた森の中だった。
小鳥が囀る音が聴こえる。
空は快晴で、まるで絵の具を『空』というキャンバスに一面塗りたくったかのよう。
「今のはなんだったの……?夢?」
ユネルは少しの間その場から動けなかった。
夢なのかを考えていて気づいたが、これからユネルは何をすればいいのか、ということにはっ、と気づいた。
そして、彼女は考えた結果────
森を抜けた先にある町に行くことに決めた。