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複雑・ファジー小説
- Re: 不良品心情公開舞踏会 ( No.1 )
- 日時: 2021/05/09 10:45
- 名前: 独 ◆VMdQS8tgwI (ID: 2fSLq59j)
この世界は、荒れ果ててしまった。憲法、法律は最早意味を成していない。
"人間"は簡単に作れるように、殺せるように。
人工的に作られた人間は『fair』と言う。博覧会と言う意味合いの言葉は、彼等にぴったりであった。人間に玩ばれる為に作成されたのだから。
fairを並べて、本物の人間は気に入ったそれを買い取る。金さえあれば、なんでも――そう。なんでも。
「fairなんかに人権は無い。商品同様だ」
頭の固い大臣はいつの日か、それが口癖になってきた。
優しい人なんか、最初から存在しなかった。人に愛されたいが故に、親切だったから。
人間の本能も、なにもかも。本来は、赤黒く染まっていた。
とある研究所が出したレポートだ。
fairは痛みを感じない。fairは悲しみを知らない。
その二言で、レポートは終了した。
殺そうが、致命傷を与えようが、彼等は永遠に笑みを絶やす事ない。
だが、商品を作っているのだから、不良品は必ず出来上がってしまう。
痛みを感じ、悲しみを知っているfair。永遠の命を持ったfair。狂気に満ち溢れたfair。
これらを、不良品と言った。
物好きはこれを買い取ったが、数日もしない内に返却をしてきた。挙句の果ては、fairに殺されたと言う。
fairの命よりも、人間の命の方が明らかに大切。
「早く、迅速にッ! 不良品には目印をつけるのだ!」
そのような命令により、不良品のfairの中指は、いつしか宝石で出来ていた。
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