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Prologue 1

　これは、5年前に起きた、当時事件を担当していた警官による、未解決大量失踪事件に関する手記である。

『2016年4月2日。東京都渋谷区にて、アイドルグループ「WHiTe MiLky」のメンバー、高橋たかはし千鶴ちづるや、音楽ユニット「サイバーラビット」の、Unitron（本名 籾岡もみおか あやめ)、バラウサギ(本名 葛城かづらき ひなた)を始めとした、推定20名以上の男女が失踪』

『事件は、9歳の男子児童、黎針くろしん 冷れいの母、蒼華そうかさんの通報により発覚。彼女曰く、「さっきまでずっと近くにいたのに、ほんの少しだけ目を離しただけで、気付けばいなくなっていた」 その後、行方不明者である14歳の佐藤さとう 悠時はるときと直前まで同行していた、同じく14歳の少女、そして、16歳の笹森ささもり 真琴まことが所属していた部活のコーチからの通報が入る。』

『その後、渋谷のいたる箇所で、「人が目の前でいなくなるのを見た」という通報が入る。当時パトロール中だった部下も、恐らく3歳から4歳頃の女子幼児を発見し、保護しようとするも目の前で姿が消えたのを見たと言う』

『我々、警視庁における捜査第一課は直ちに事件の捜索を開始。しかし、捜査一課の圷あくつと佐藤さとうとは一切連絡が取れず。事件当日休暇だった彼らは、前日の会話から渋谷区にいた事が推定され、事件に関係している可能性がかなり高い』

『2016年5月2日。事件からちょうど一ヶ月。我々は事件に関する手がかりを一切掴む事が出来ていない。巷では「神隠し」と言われているらしいが、そんなバカな話がある訳が無い。必ずや事件の真相を追求し、行方不明者達を保護しなければならない』

『2016年12月25日。情けない事に、事件の進展は未だにゼロのままだ。冷君の母、蒼華さんが、今日は息子の誕生日だった、と半狂乱で警察署へ乗り込んできた。綺麗だった面影は既に無い。彼女の他にも、行方不明者のご家族の方々の怒りや嘆きの声が止まず、精神を病んで退職した部下や同僚も少なくない。これも私の力不足だ。ご家族の方々に本当に申し訳ない』

『2018年4月2日。事件からちょうど2年が経った今日、渋谷区にて行方不明者24名を発見し、大至急保護。圷と佐藤もやはりその中にいた。我々は彼らの健康状態を観察し、2年間の事情を聴取した。すると、驚くべき事に、全員健康状態は良好であり、その上、誘拐されてから2年間の事を何も覚えていなかった。自身が知らぬ間に2歳年を取っている事実に戸惑う彼らを見て、本当に神隠しかもしれないと思ってしまった』

『その後、連絡が取れるご家族の方々には連絡をし、彼らを解放。圷と佐藤は1週間ほど休暇を取ってもらい、その後職務に復帰してもらう事となった。蒼華さんは、冷君が帰ってこないショックで既に自殺してしまっていた。冷君を始めとした、身寄りのない少年らは、各々別の施設へと預けた。その中に１人、自身の名前すらも憶えていない女子児童がいた。事件当時、元部下が見たという3歳程の幼児で間違いないだろう。我々は、今後の人生に暖かな火を灯してほしいという願いを込め、イタリア語で薪という意味の「レグナ」と名付けた。どうか彼ら24人全員に平穏な生活がまた訪れますように』

　手記はここで終わっている。また、現在この手記がどこに存在するかは誰も知らない。