複雑・ファジー小説
- Re: BaN -A to Z- ( No.2 )
- 日時: 2021/08/08 02:24
- 名前: Cude (ID: Sua4a79.)
Prologue 2
以下の文章は2021年4月2日に、世界的SNS「I's」に現れたアカウント、「N」の投稿である。
『N:5年前に渋谷区で起きた、24人が失踪した事件。その真相を話します。簡潔に言えば、彼らは私が誘拐しました』
『N:理由は、一つ。治験に協力してもらいたかったから。私の母が作った薬品を、皆さんには投与させていただきました。少々副作用は大きかったですが、幸い死者は出ず、安心しました』
『N:母の作った薬は、本来生物が出し得ない、概念に背いた力を与えるものです。いわば、超能力の様なものと言って良いでしょう。両親は、分かりやすくする為に「NEO」と呼んでいました』
『N:本来ならば、治験の結果が出た後、更に被投与者を増やすつもりでした。しかし、唯一薬を作る事が出来る母がもういないので、結果として、私たちを含むと、26人しか、NEOの所有者は誕生しなかった事になります』
『N:私の両親は、NEO、及びその所有者を用いて何か計画を立てていたみたいです。まだ子供だった私は、どんな事に使うか教えて貰えなかったけれど。』
『N:しかし、折角2年間、私たちも含めた被験者の健康状態を維持して、遂に計画が始まるといった矢先に、その計画は未遂に終わります。何故なら私のNEOによって消されてしまったから。当時の私は精神も少し不安定で、NEOの扱い方にも慣れていませんでした』
『N:両親がいなくなってしまい、私たちは被験者の方々をどうしていいか分からなかったので、とりあえず彼らを解放させていただきました。それが、2018年4月2日の出来事です』
『N:その後、私はこの3年間を経て、一つの決断に辿り着きました』
『N:両親を自分の手で消してしまったのは事実だけれど、私は両親を心から尊敬していました。だから、そんな私の両親が最後に考えていた、『NEOに関する計画』は、例え両親が考えたものと内容が違っても、遂行しなければ。私や、被験者の皆さんに宿ったNEOの力を無駄にする事は、同時に両親が消えてしまった事も無駄にすると私は考えました。』
『N:ここからが本題です。私と、ゲームをしましょう。参加者は、当時の事件の当事者、つまりNEOの所有者の方々と、この国の為に働いている政府の皆さん。』
『N:期間は明日の0時丁度から2年間。それまでに、NEOの所有者の方々は私に傷を一つでもつけられたら勝ち。対して、日本政府の方々は、それよりも先に私を確保する事が出来たら勝ちです』
『N:勿論ゲームですから、報酬も用意しています。NEOの所有者の方々が勝てば両親が残した莫大な財産を、日本政府の皆さんが勝てば、母が残した、医療や発明の大きな進歩となる研究資料と、最高の軍事力として、私を自由に利用できる権利を譲渡します』
『N:しかし、勿論皆さんが得ばかりするようなゲームじゃ私にメリットがありません。私が勝った場合には、この地球から、日本を消します』
『N:これらの投稿が冗談じゃない事は被験者だった皆さんが良く分かる筈です。それでは、皆さんの健闘をお祈りしています』
以上の投稿及びNのアカウントの存在は一日にして瞬く間に拡散され、すぐに日本政府の目に届いた。政府は、誰かの悪戯だと考えたが、内容が内容である為、万が一に備えアカウントのアクセスログから個人を特定しようと試みた。しかし、何故かアクセス先が存在しない事となっており、特定は失敗に終わってしまった。
その上、翌日、警視庁内部にNEOの所有者が2人も存在する事が確認される。また、あれだけ騒がれていたNの投稿はアカウントごと削除されていた上に、昨日の投稿について言及する者は、ただの一人としていなかった。
これらの事態を踏まえ、日本政府は、新たに「NEO対策本部」を設立。
N及びその他NEO所有者の捜査が本格的に行われる事となった。