複雑・ファジー小説
- Re: 百鬼夜行の世界の果てに ( No.2 )
- 日時: 2021/09/13 12:53
- 名前: 雪見餅 ◆Jhc7o2e8z6 (ID: 0LEStScZ)
2話 月満ちる刻
「春兄様、今日のパーティー楽しかったですね。それに、月も綺麗です。」
「うん、今夜は満月だからね。後、絶対に俺から離れるなよ。」
「はい、月満ちる刻に鬼は力を増すとされていますからね。」
鬼は、人間を襲い喰う存在とされている。
満月の夜は特に力が増す為、満月に出歩くのは無謀と呼ばれている。
まぁ、今屋敷に帰っているから出歩いているんだけれども。
「こんばんは、西園寺家の御二人様。」
何処からか、自分達を呼ぶ声がした。
鬼かもしれないと思い、紫乃を守る素振りを見せる。
「私は、貴方達を襲うつもりでは御座いません。失礼、私は百鬼。この百鬼夜行の世界を管理する者にあります。」
百鬼夜行の世界を管理する者。
普通の鬼とは違い、人を襲わないし喰わない伝説級の鬼だ。
百鬼には、逆らわない方が良いと聞いた事がある。
「世界を管理する者が、俺達西園寺家に何か用でしょうか。」
「そうですねぇ。貴方達、既に大量の鬼に囲まれているのです。それを忠告しに参りました。」
「春兄様。鬼に囲まれているのは、もう既に絶体絶命としか言い様が無いのですが。」
「百鬼……。貴方が伝説級の鬼なら、この鬼達を全滅する事も出来るでしょう?どうか、紫乃の事をお守り下さい。俺はどうなろうと構いません。」
百鬼に対し、頭を下げる。
紫乃を守らなくては、という強い意思で百鬼に願い出てみる。
それに対し、百鬼がニコリと微笑んでいた。
「貴方、私に逆らわないだけの人間じゃない。利害関係を結ぼうだなんて、何年ぶりかしら。良いですわ、この百鬼と契約をしましょう。」
百鬼がくるりと指を回すと、光が降り注いだ。
お父様も、遠い昔に百鬼と契約を成したと聞いた事がある。
それが今、俺の身に起こっているのか。
すると百鬼のピンク色の瞳が、赤色に変わり、言葉を告げた。
「止まれ」
単純な言葉だったが、とても不思議な感覚で何処からか見られている様なそんな感覚が呼び起こされた。
そして、徐々に眠くなっていった。
「やりすぎ……でしたね。西園寺家まで、私が運ぶとしましょう。」
二人を連れて、百鬼が西園寺家まで行き、西園寺家全員が百鬼との契約に驚き、そして安堵の表情を浮かべた。
西園寺家は百鬼との契約を成した事がある唯一の家系なのだから。