複雑・ファジー小説

Re: 異能ト懺悔 ( No.1 )
日時: 2022/01/22 12:24
名前: あ行(略) (ID: lmEZUI7z)


「なんで……!!!なんで助けたの!!」

枯れるような声で叫ぶ幸の目には薄らと涙が浮かんでいた

「なんでかしらね…体が勝手に動いてたのよ」

彼女は肩で息をしながら吐血した。彼女の目に映る幸は段々と薄れていく

「ああ…僕が…もっともっと強ければ…」

自分が死にたくなるほど嫌いになり、自己嫌悪に陥った。無力の自分が憎い。

「ねえ…約束して」

そんな幸を察したのか彼女は目をそっと閉じて、弱々しく幸の手を握った。幸は黙ったまま彼女の手を両手で握り返した。彼女の優しい温度はもう感じれず、冷たい手が僕の手を凍らせる

「私の人生の分まで生きて…幸せになって…」

血と汗でびっしょりとなった幸の背中は絶望感で更に重くなった。

「…僕の……幸せは!!!君と2人で笑い合って喧嘩して、時には泣き合って、そんな毎日が……1番の幸せなんだよ!!!」

感情的になった声は掠れていた。涙で視界がぼやけているけど、彼女の表情はしっかりと見えた。悲しいような幸せのようなそんな顔で僕に笑いかけて、そのまま手の力が抜けた

「幸……彼女がつけてくれた名前は…あまりにも僕には似合わないや…」

幸はそう呟くて、手で涙を拭った。彼女の名前が罪悪感で覆われた。

「じゃあ、貴方に似合う名前をつけてあげようかしら?」

急に話しかけられて幸は驚きながら振り返ると教会の神樹の少女がいた。綺麗な黒い髪を靡かせながら月を背に微笑んだ。

「君が全てなのか?この前言った言葉が今日のことなのか?」

「始まりは私よ。でも“これ”は貴方ね」

彼女は幸に近づきながら冷たくそう言った

「はは…バカみたいだ…」

絶望に満ちた瞳は月明かりに照らされても真っ暗なままだ。

「断罪人の名として、貴方の罪の名として____貴方の名前として、紅」

「紅…か。はは、今の”俺“にぴったりだな」

「説明はこの前したでしょう?もう要件をすんだわ」

彼女はボロボロになった扉を蹴り壊し、外に出た

「待てよ、俺はお前を永遠に許さない。例え首だけになっても食らいついてやる」

「へえ…面白い。私は八重。貴方は私が育てるわ。いらっしゃい、異能軍へ。歓迎してあげるわ。」

彼女はそう呟いて、どこかへと消えてしまった