複雑・ファジー小説

Re: 美貌にストーカーはつきもの ( No.1 )
日時: 2022/06/08 22:56
名前: かまめしきり (ID: p/lGLuZQ)

一話 願いに代償はつきもの


誰かが言った。皆は何を信じ、何を裏切り、何を愛すのか。この全てに当てはまるのは金だと。 
 
誰かが言った。迷うのなら両方選べば良いと。

誰かが言った。正義は必ず勝つと。

誰かが言った。上記の全ては妄言であり、くだらない嘘だと。

誰かが言った。こんなどうしようもない物語もあって良いのだと。






◆  ◆  






 俺はどこにでもいる普通の高校生。異変が起きたのは突然だった。
いままでの人生は普通に遊び普通に勉強をして普通に家庭崩壊して実家を出て一人暮らし。
普通にアルバイトをして普通に店から盗みまくった3000万円で普通の高校に入った。
そして普通にいじめられ普通に高校卒業して普通に店から盗んだことがバレて刑務所に行く...はずだった。



7月21日 14:37

「オイ、キモ豚」
「・・・」
「オイ、聞いてんのか?」

いつも通り無視を決め込む。

 こんなクズの話を聞くのは無駄だ。しかもこの前服を汚してきやがった奴に損害賠償を求めたからそんなに手荒な真似はできないだろう。

案の定それ以降は何もしてこなかった。彼は舌打ちをして踵を返した。

つまらない授業を聞き流して学校が終わればすぐ帰る支度をして帰路についた。
 高校卒業の資格がほしいだけだから、そんなに熱心に聞く必要もない。テストはカンニングすれば良いし、先生は俺がいじめられているのを知っているからか授業中、俺に質問するなんて事はなかった。

ここから約一キロの所にある自分のアパート。一キロしか無いのに、最近太ったからなのか遠く感じる。

さて家に帰ったら一発抜こうか。今日は待ちに待ったエロゲの発売日。正直な話かなり楽しみだ。

「そこの君ちょっとおじさん達の話を聞いてくれるかな?」

 近道をするために、あぜ道に入った瞬間のことだった。後ろから声がかかった。その声色は優しく振る舞おうと取り繕おうとする声だった。この声を俺は何度も聞いている。犯罪者の声だ。

 どうせカツアゲだろ。こういう時はちょっとビビらせときゃどっか行くからな。弱い奴から金を取ろうと言っている時点で自分が弱いと認めたようなものなのに。

周りの家に聞こえるか聞こえないかのギリギリの声量で答えた。

「うっせぇな。こっちは忙しいんだ...ッ」

振り返るとそこには警察手帳を突き出している一人の警官がいた。その後ろにも警官が二人。警官はニッコリと笑い、敵意がない事を主張してきた。

「...ッ」

 完全に油断した。急げ、家に逃げちまえばこっちのもんだ。
だが自分の家はここからおよそ1kmだ。俺の怠け散らかしたこの肉体じゃ逃げ切る事はできなかった。苦しいと心臓が叫び声を上げた。

「離せ!!!」

 今にも潰れてしまいそうな声を発した俺を警官三人という圧倒的人数差で蹂躙してきた。三人からの拘束に藻搔くしかなかった。


クソ!もっと『身軽な体』なら逃げ切れたのに。


「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソゴミがーーーーー!」

その時目の前が暗くなっていった。

それは死と程遠い、世界の暗転だった。

 目が覚めるとそこは本来いるべきはずの病院?刑務所?ではなかった。
周りには天使が羽ばたいており、目の前には神々しい神がいた。
正しく神だった。

正直な話、神が見えたとか信じたことはない。だが彼は神だった。神を見た者だからこそ分かる。そんな感覚だった。だから俺は神のことを神だと信じた。

「オイ、連れてこいって申したのはこいつじゃないぞ」

太く威厳のあるような声が耳の中に入ってきた。

神が誰かと喋っている。間違えてしまったらしい。彼は少しでた腹をこちらに向け、ドッシリと座っていた。

それにしても神様も間違える事があるんだな。

「すいません。次は気をつけます。」

天使は何度も何度も深々と頭を下げる。

上司と部下か...どこの世界も上下関係はあるものなのだな。

そんなことよりも聞かなければいけない事が山積みなのだ。
転生かな?そしたら俺勝ち組じゃん。イヤッッホォォォオオォオウ。クソみたいな人生でも報われる日が来るんだと、少し感動した。

「あのーそれで俺はどうすればいいのでしょうか?」

その声色は優しく振る舞おうと取り繕おうとする声だった。

 少しわざとらしいとは思うが、少しでも善人ぶっとかないとな。いやーすまない、誠にすまない、これで勝ち組かと思うと前世の世界には申し訳なくなってくる。

だがその考えが叶わないと言われたのは次の言葉からだった。

「もういい、こやつの願いは...新しい肉体がほしいのか。面倒くさいからくれてやる。ホレ、もう帰って良いぞ。」
「は?ちょっと待てよ。オイ」

聞いてた話と違うぞ...いや、正確には違うくはないのだが。おいおい、失敗しておいてそれはないだろ。

そんなことを考えている俺を神様はまるでゴミを見るような顔をして見つめるのだった。

実際、神の前ではゴミだったかもしれない。

「じゃあねーー二度とくんな」

地面に穴が空き、暗闇に落ちていく感覚だけが残っていた。

7月21日 5:43

「はっ」

目を覚ますと自分の家のベットに横たわっていた。異世界にいなくて残念。

「チッ、キモい夢見ちまった。」


 あれ、やけに声が高いような...しかもなんか肩も重いしかなり痩せたような。
まいっか、とりあえず顔でも洗うか。

 今日も学校かと思うと家でギャルゲーを嗜みたくなる。そんな事を思いながら顔を洗うために洗面所に向かった。

「えっと...誰?」

洗面所に着くと見慣れない女がいた。その女もこちらを驚いた表情をしながら見ていた。

え…誰?驚きたくなるのはこっちなんだけど。

近づいてみる。女も近づいてきた。
近づいてきたので遠ざかる。女も離れた。
あまりに自分と同じ動きをしてくる。
あれ?これ鏡じゃね。え、ってことは...

「女になってるーーーー!!!!!!」

えっ?なんで?どゆこと?
昨日までは絶賛キモオタに豚骨スープをぶちまけて、海苔トッピングをした(顔もニキビだらけの小太りの逆サバ読まれみたいなかんじ)かのような容姿だったのに!

 考えていても仕方がない、ちょっと服を脱いでみるか。別にこれは決っっっして疚しい気持ちがあるわけではない。確認だ。

「おお!」

これは立派な乳房だ。これを見た男はきっとイチコロだろう。
これなら亀千人を千回天国に送れるぞ!

下は見る勇気はなかったが、きっと処◯だろう。まー俺童貞だし。

正直、処◯の見分け方とかわからんが。

気を紛らわせようと首を振ると、二つの果実が大きく揺れた。

 さてこれはどうしたものか。一旦欲望に身を任せても良いんではなかろうか?っと危ない。今は状況を整理しよう。

昨日(今日)の出来事は夢だったのかな?
警察に捕まってー神様に会ってー...ん?ってことは夢じゃないのか?
わからん。

「まー『夢だけど、夢じゃなかったー!』ってことでいいだろ。」(怒られろ)

ここでヤリチンなら迷わずするところだが私は違う。もう一度言おう私は童貞なのだ!
んー同人誌ならここで頼れる親友がきたり、学校に行ってめちゃくちゃモテたりするのだろう。無理だな。中身キモ豚だし、友達なんて生まれてこのかた出来たことなんて一度もありません。

いつの間にか大きなドロップスが頬についている。悲しみで涙が出てしまったようだ。

涙を拭おうとすると手に吸い付くような、もっちりとした肌だった。

顔はーーー可愛い?のか。
 二次元にしか興味ないから正直言って現実の顔面偏差値なんてわからないし...
まーブスって言われないくらいにはなったのかな。こんな格好じゃ身分証明なんて無理か。学校諦めるかーー。高かったのに。見たところ身長的にも胸的にも大学生でいけるかな。
 俺の場合は下手に病院にいけないからな。もし行ったら警察に通報されて即逮捕。捕まって即牢屋行きだろう。こんな事を言うのは虚しいが、むしろこの体のままの方が楽まである。
深く考えても仕方ない、スーパーに行って飯でも盗ってくるか。
今の俺?私?には思いもしなかった。これが世にも奇妙な物語のほんのちょっとだということを...


あとがき
至って普通のラブコメを書きたいと思ったので書きました。
な、何言っているんですか!至って普通ですよ!
主人公の外見は悪い意味で大人っぽい低身長デブです。
主人公の初期の性格は自分を元にしました。(だから何だよ。ってやつ)
誤字がないといいなー。